1万人反日デモが暴徒化=制御不能に、武装警察投入-大使館前、大通りを占拠・北京
【北京時事】日本政府による沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化後、初めての週末となった15日午前、北京の日本大使館前には1万人の若者らが国有化に反対して大規模な抗議行動を行った。若者らは暴徒化し、デモ隊は大使館前の大通りを占拠。大使館に向けてペットボトルやごみを投げ続け、気勢を上げた。
大使館への乱入を試みる若者らを阻止しようと当局は1000人以上の武装警察を投入。若者と武装警察は激しいもみ合いになった。反日デモは制御不能の状態となった。大使館前にはバリケードが張られ、当局は実力行使に乗り出した。
北京では2005年4月、1万人規模の反日デモが起きたことがあるが、これほどの大規模デモは異例。共産党大会を10月に控え、社会安定を最優先する胡錦濤指導部にとって大きな打撃となった。尖閣国有化問題で悪化する日中関係がさらに緊迫化するのは必至だ。
日本大使館前での反日デモは国有化決定以降、5日連続。この日は午前9時(日本時間同10時)前から、若者らによる反日デモが始まり、最初は数十人ずつが整然と入れ替わり、「釣魚島は中国のものだ」「日本軍国主義を打倒しろ」「小日本は中国のものだ」などと叫んだが、30分ほどしてデモ隊は大使館前の大通りを占拠。大使館に向けてペットボトルなどを投げ続け、当局のコントロールが利かなくなった。若者が大使館前の木によじ登り、日の丸に火を付けると、デモ隊から大きな歓声が上がった。
公安当局は1000人以上の警官を配置し、警戒に当たった。しかし若者らデモ隊の怒りは予想以上に激しく、武装警察も投入して大使館前に高さ2メートル以上のバリケードを築き、若者らの乱入を阻止。ただ暴徒化する若者らを鎮圧することはなく、過激行為も黙認した。(2012/09/15-13:28)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012091500131
反日デモ隊、日本大使館突入図る…武装警官と衝突
日本への激しい抗議デモが行われた北京の日本大使館前では15日午前、何かが燃やされているのか、きな臭いにおいが漂い、武装警察官とデモ参加者の怒号が飛び交うなど、騒然とした空気に包まれた。
デモ開始当初は、いくつかのグループが当局の指示通り、大使館前で順番にスローガンを叫ぶなど抑制的な雰囲気だった。だが、参加者の数は膨らみ続け、当局も、次々と人員を投入したが、人数で上回るデモ参加者は当局が設置したバリケードを乗り越えるなどし、武装警察官が殴打される場面もあった。武装警察官は拡声機で、「愛国的行動は理解するが、理性的な抗議こそが党と政府に対する支持となる」と懸命にデモ参加者に呼びかけていた。
中国では、貧富の格差拡大や官僚による腐敗の横行などへの不満が高まっている。反日デモも、日本への抗議に名を借りて日ごろの不満をぶつける場となっているという指摘もある。(北京 大木聖馬)
(2012年9月15日13時21分 読売新聞)
反日デモ:日本大使館に数千人、一部暴徒化
毎日新聞 2012年09月15日 11時23分(最終更新 09月15日 13時16分)
【北京・工藤哲、上海・隅俊之】日本政府が沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)を国有化してから最初の週末となる15日、北京の日本大使館前では国有化に抗議する数千人の反日デモ隊が集まり、一部が暴徒化し、警官隊と激しく衝突した。
「釣魚島を返せ」、「日本打倒」。数千人の群衆の気勢にあおられるように、デモ隊の一部が叫びながら、大使館正門前を防護する警官隊を突破し、大使館に侵入しようと何度も試みる。バリケードが破られ、幾重にも列を作り正門を守る警官隊が暴徒に押し返される。
尖閣が国有化された11日から5日連続で、参加者は日ごとに増えている。この日、北京の日本大使館前では午前9時(日本時間同10時)ごろから、デモ隊が断続的に抗議行動を展開。同10時過ぎには数千人に膨れあがり、大使館前の片側3車線の幅約50メートルほどの道路は、瞬く間に、プラカードや中国国旗を持った群衆に埋め尽くされた。時折、中国国歌の大合唱が現場に響き渡る。
当初は整然としていた抗議活動は、群衆の熱気にあおられるように一部参加者が過激化。大使館内に次々とペットボトルや木片を投げつける。
日本メディアを含む海外メディアは、デモ隊と数メートルの距離を空け、警官隊に守られた地点で取材するように公安当局に指示された。そのメディアの取材エリアまで、ペットボトルが投げ込まれ、身の危険も感じる。取材エリアを抜け出し、デモ参加者に話しかけようとしても、殺気立って近づくこともできない。防御する警官隊の顔も緊張でこわ張っている。
北京の日本大使館のほか、上海の日本総領事館現場周辺には早朝から、多くの警官が配置され、デモ隊の動きを警戒していた。
上海の日本総領事館前でも数百人が「釣魚島を返せ」などと叫んだほか、学生が多い松江区中心部では約300人がデモ行進した。
北京の日本大使館に数千人、投石も 中国反日デモ
2012/9/15 11:20 (2012/9/15 12:09更新)
【北京=島田学】中国では15日午前、日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化したことに反発するデモが北京、上海、重慶など各地で相次いだ。反日デモが一斉に起こるのは8月26日以来。北京の日本大使館前には数千人のデモ隊が押しかけ、投石するなど暴徒化している。2005年や10年の反日デモを上回る規模になる可能性があり、日中関係が政経両面でさらに緊迫するのは避けられそうにない。
15日のデモは、中国政府がデモを一部容認する姿勢を示したことや、中国メディアが尖閣を巡る日本批判を連日繰り返していることから、参加者が大胆になっている。
大使館前でのデモは11日の尖閣の国有化以降、5日連続だが、規模は最大となった。参加者は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国のもの」「日本人は出て行け」などと叫び、石やガラス瓶を投げ込んでいる。公安当局は大使館前の道路を封鎖したが、デモ隊は建物前のバリケードを一部突破。押し戻そうとする武装警察ともみ合いになっている。
内陸部の重慶市では、見物人を含めて3000人規模のデモが発生。四川省成都では、日系コンビニエンスストアの複数の店舗で15日朝までに、展示棚を倒されたり、レジを壊されたりするなどの被害が出ている。
湖南省長沙でも、3000人規模のデモ隊が暴徒化したとの情報がある。上海市では中心部の日本総領事館前でデモが起こったが、公安当局が厳しく警備しており、大きな混乱はない。
15日は江蘇省南京、同省蘇州、陝西省西安、雲南省昆明など少なくとも約20都市で、インターネット上で反日デモが呼びかけられている。大使館が在留邦人に不要不急の外出を控えるよう呼びかけ、現地の日本人社会の緊張感は高まっている。
中国では毎年、満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日に当たる9月18日前後は反日感情が高まる時期だ。ネット上では、16日や18日にも各地で反日デモに参加するよう呼びかける書き込みが相次いでいる。
中国当局も「釣魚島は日本が中国への侵略戦争を通じて盗み取ったものだ」(楽玉成外務次官補)と強調。共産党の次期指導部発足を今秋に控え、尖閣問題や反日感情を国威発揚に利用する動きを見せ始めていた。
一方で、当局はデモの矛先が共産党一党支配への批判に転じることは強く警戒している。デモが「許容限度を超えた行動」に至ったと判断すれば、抑え込みに動くとみられる。