2012/3/9 20:38
東日本大震災に対処する会議の議事録がなかった問題で、政府は9日、福島第1原子力発電所の事故を受けた原子力災害対策本部などの議事概要を公表した。当時の閣僚らは「米スリーマイル事故が3つ重なった」「統率がとれていない」などと発言。情報不足から意見がかみ合わず、政府の意思決定は混迷。突然の大地震と原発事故の前に国の備えが機能不全に陥った様子がうかがえる。不十分な連絡体制は復旧を急ぐ現場と、政府・東京電力本店が再三衝突する形で表れた。
震災当日の昨年3月11日夜に開いた原子力災害対策本部の初会合で、松本龍防災担当相(当時)は「官邸に情報が入っていない」と発言。1号機の水素爆発後の同13日には、海江田万里経済産業相(同)が「深刻な破損はない旨報告を受けている」と述べた。
同14日には菅直人首相(同)が「避難範囲は20キロメートルで十分」との見方を説明したが、玄葉光一郎国家戦略相(同)が「違う意見もある」と反論。同戦略相は同17日にも「これは戦争だ。3つのスリーマイル事故が重なったようなものだ」と語った。同15日は片山善博総務相(同)が「消防活動への要請も断片的かつ子供っぽい」「統率がとれていない」と悲鳴を上げた。
昨年7月19日、平野達男復興担当相(同)は「除染をしても簡単には戻れない高線量の地域」に言及。「福島県双葉町などは帰還できないことを覚悟している」と述べた。
政府・東電統合対策本部の議事概要では、現場との衝突も描かれている。同11月2日には、核分裂が続く再臨界の可能性を発表した東電本店に対し、吉田昌郎所長(同)が「作業員がおびえる」と主張。再臨界は起きていないとの立場から「(会見できちんと説明しないなら)明日の作業を全てストップさせる」と述べた。
累積100ミリシーベルト超の放射線を浴びた作業員は5年間作業できないとの見解を厚生労働省が示したとする報道を受け、同4月29日の会議で吉田所長は「人を割けなくなり、収束シナリオが厳しくなる」と指摘。同5月に予定していた厚労相の視察を「本部が認めても発電所長としては拒否する」と反発した。
炉心溶融の恐れ、震災当日に指摘 政府対策本部 福島第1原発
2012/3/9 11:11
政府は9日、東京電力福島第1原子力発電所の事故対応にあたった原子力災害対策本部の議事概要を公表した。議事録が未作成だったため、出席者らの発言メモなどを集めた。東日本大震災当日の昨年3月11日夜の第1回会議で「(冷却停止が)8時間を超え炉心の温度が上がるようなことになると、炉心溶融(メルトダウン)に至る可能性もある」と報告されていたことが分かった。発言者は確認できないが、事故直後から炉心溶融を念頭にした対応を迫られていた。
公表したのは3月11日夜から12月26日までの23回分。出席者は首相と関係閣僚、班目春樹原子力安全委員長ら。事務局員のメモなどをもとに、主な発言の概要をまとめた。ただ、18回目までは録音が残っておらず、当時の会議の様子がどこまで忠実に反映されているかはわからない。
11日午後7時3~22分の第1回会議では、放射性物質の漏洩は確認されていないとして「直ちに特別の行動は不要」と報告。ただ、海江田万里経済産業相(当時)が「10キロメートル範囲の人を、どこかの時点で避難させる必要があるかもしれない」と言及、「日本で初めてのことで波紋も呼ぶ」としていた。
北沢俊美防衛相(同)は「発電機は何機あればいいのか」と質問し、ルース駐日米大使や米軍から支援の申し出があったことを報告した。また、松本龍防災担当相(同)が「官邸に情報が入っていない」と不満を述べるなど、当時の官邸の混乱ぶりがうかがえる。
12日の第3回会議では、菅直人首相(同)から「1号機などから住民には健康被害を及ぼすことはない微量な放射能が流出している」と説明。玄葉光一郎国家戦略担当相(同)が「メルトダウンの可能性がある。避難地域は10キロメートルでいいのか。考え直す必要はないのか」と発言していた。
1号機の水素爆発後に開いた12日午後10時の第4回会議では、菅首相(同)が「チェルノブイリ型はありえるのか。スリーマイルのようなメルトダウンがありえるのか」と過去の事故例を挙げて危機感を示した。