2012年2月1日午前7時45分
原発の運転期間を原則40年に制限する原子炉等規制法改正案が31日、閣議決定された。福井県内には13基の商業炉があるが、厳格に運用されれば2020年に8基が「寿命」を迎えているだけに、福井県が大きな影響を受けるのは必至。一方で、20年を超えない範囲で1回に限り延長を認めるとの例外規定も盛り込んでおり、立地自治体には基準の明確化を求める声や、国のエネルギー政策見直し全体の中で議論すべきだとの指摘もある。(政治部取材班)
県内原発は、日本原電敦賀1号機、関西電力美浜1号機が運転開始から41年たち、美浜2号機も今年7月に40年となる。この3基を含め計8基が30年を超えている。
県はこれまで高経年化(老朽化)対策の強化を繰り返し国に求めており、石塚博英安全環境部長は「40年で一区切りする考えは県の要請とある程度の方向性は合っているように思われる」と一定の評価をした。
運転を40年に制限すれば、県内では2015年の段階では5基、20年には8基が廃炉となっており、合計出力でみると現在の約53%に当たる602万キロワットが失われる計算。20年の時点で稼働している原発は敦賀2号機、大飯3、4号機、高浜3、4号機の5基、30年には2基だけとなっている。政府の狙い通り、自動的に原発依存度が下がる形だ。
ただ、「40年」に必ずしも科学的根拠があるわけではなく、例外として延長を認める場合の基準づくりもこれから。石塚部長は「40年で区切る根拠や運転延長を認める基準を明示すべきだ」と話し、既に40年を超えた県内の2基の取り扱いも早く明らかにするよう国に注文した。
一方、将来の電源構成をどうするかの議論がまとまらないうちに運転期限だけが先行する点では「原子力政策がどうなるか決まっていない段階で、40年とか60年とか出ることに、全国の立地地域は不信感を持っている」(河瀬一治敦賀市長)との意見もある。
電力事業者は国会での議論など今後の国の動向を見守る構えだ。この日記者会見した関電の八木誠社長は、規制は合理的であるべきだとした上で「基準に合うか自信を持って確認できれば、運転延長の手続きを取っていく」と言明。古い原発を多数抱えるだけに「仮に延長申請するにしても手続きや技術的な対応が必要。移行期間を設けてほしい」とも述べた。
細野豪志原発事故担当相は「厳格な規制を課すので、40年を超える運転は極めて例外的なケースに限られる」としているが、原発設置反対小浜市民の会の中嶌哲演さんは形骸化する可能性が高いと指摘。「20年延長も可能という抜け穴をつくるなんて論外。“原子力ムラ”の人たちがほくそ笑んでいる閣議決定ではないか」と批判した。
県内の立地市町には、古い原発の運転延長よりリプレース=Wワードファイル=を望む声もあるが、野田政権は「新増設は困難」との立場。今夏をめどに示されるエネルギー政策見直しの中身によっては県内の原発政策は大転換を迫られる。