日本原燃は3日、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場で1月下旬~2月上旬に予定していた最終準備段階の「ガラス固化試験」を延期すると発表した。
試験で使う溶融炉で、溶かしたガラスが流れにくくなる不具合が生じたためで、試験開始は3月上旬以降となる見通し。10月の工場完成を目指す原燃は「目標は変えないが、厳しくなった」と説明した。
予定していたのは、使用済み燃料からウランやプルトニウムを抽出する過程で生じる高レベル放射性廃液を、溶かしたガラスと混ぜて金属製容器内で固める工程の確認試験。原燃は、準備として、溶融炉にガラスだけを入れ、容器に注ぎ込む作業を1月24日から進めていた。しかし、ガラスが容器に流れ込む速度が遅くなる不具合があり、調べたところ、ガラスの中に固形物が確認された。原燃は、〈1〉炉内のレンガの破片〈2〉炉の加熱装置に付着したサビのようなもの〈3〉ガラスが結晶化したもの――のいずれかが、溶融炉から容器につながるノズルに詰まったとみて、試験開始を延期し、ドリルで除去する作業を始めることにしたとしている。
(2012年2月3日19時37分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120203-OYT1T00959.htm
ガラス固化試験延期 ノズル詰まり原因か
日本原燃は3日、使用済み核燃料再処理工場(六ヶ所村)での「ガラス固化試験」の延期を決めた。試験の準備作業で不具合が生じたためだ。「試験にすら入れない再処理は実現性が乏しい」と反核燃料サイクル派は批判を強めており、核燃サイクルを継続するかどうかの議論にも影響を与えそうだ。
ガラスの流下速度が遅くなる不具合は準備作業開始の数時間後に生じた。原燃は棒でかくはんする作業を計5日間行ったが、速度は戻らなかった。ガラス固化試験も炉内の温度が安定しなかったことで失敗を繰り返しているが、今回の準備作業では温度管理に問題は見つかっていないという。
かくはん用の棒を溶融炉から容器につながるノズルに通そうとしたが、何かに引っかかったことや、溶融炉に設置されたモニターで固形物のようなものも確認されたことから、原燃は固形物がノズルに詰まってガラスの流れを悪くしたと推測している。
茨城県東海村の研究施設の同型炉で実験した際にもガラスの流れが遅くなるトラブルが生じたが、棒でかくはんすることで回復した。今回はかくはんで事態が改善しないため、ダイヤモンド製のドリルでノズル内の固形物を除去する作業に踏み切ることになった。
原燃は3日から溶融炉の冷却を開始。温度が下がればドリルでの作業に取りかかる。ノズルが開通すれば、除去した固形物を分析した上で溶融炉を熱上げし、ガラスが円滑に流下するかを再確認する。一連の作業に1か月程度かかるため、試験再開は3月上旬以降となる見込みだ。
核燃サイクル継続の可否などを原子力委員会の「新大綱策定会議」が議論をする中で試験延期が決まったことに、サイクル反対派は勢いづく。沢口進・核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会共同代表は「議論の最中にこのような事態に陥った。再処理は無理だという議論に傾く可能性が高い。この辺で撤退するのが常識だ」と語気を強める。
一方、県幹部は「昨年12月に三村知事が県内原子力施設の緊急安全対策を了承する前に、原燃に施設の安全性を念押しした経緯があるのだが」と当惑気味だ。六ヶ所村の戸田衛副村長は「試験準備段階で大きく騒ぐべきではない。現段階では今後の推移を見守るしかない」と述べるにとどめた。
(2012年2月4日 読売新聞)
再処理工場再開延期 存廃議論に影響も
2012年02月04日
日本原燃が3日、六ケ所再処理工場のトラブルを受け、試験運転の再開時期を「早くても3月上旬」と1カ月遅らせたことで、核燃料サイクルの存廃議論に影響する可能性が出てきた。国の会議で、「六ケ所工場は不良債権」(金子勝慶応大教授)などと語ってきた脱サイクル派が勢いづくのは必至だ。
問題が起きたのは、高レベル放射性廃液とガラスを溶融炉で混ぜて固める「ガラス固化」の工程。1月下旬から2月上旬にガラス固化試験に入る予定だったが、試験前の動作確認で、炉からガラスがうまく出てこない「流下不調」というトラブルが起きていた。
原燃は当初、炉内に取り付けた棒で注ぎ口付近をつつき流下不調を解消し、トラブルの原因解明を待たずに試験に突入する考えだった。しかし、3日の会見では、原因解明を優先する方針に転換し、「急がば回れ」「今後の操業を見据えて有益な知見になる」と前向きにとらえた。
原燃によると、炉からガラスを抜き出す時に通る、長さ30~40センチ、直径3センチ程度のノズル部分に異物が詰まったとみられるという。異物は(1)炉内を覆うれんがの剥離(はく・り)片(2)炉内温度を上げるための装置表面の金属の酸化皮膜(3)結晶化したガラス――のいずれかの可能性が高いが、まだわかっていない。
試験運転を5、6カ月で終え、今年10月に工場完成とする予定は、元々「かなり厳しい」(川井吉彦社長)状態だったが、この日の変更でさらに困難な情勢になった。中の物質を取り出すため、冷却に10日~2週間、試験再開に向け、再び機器を加熱するのも2週間かかる。
国の原子力委員会新大綱策定会議では、再処理工場について、反原発派の委員らから「技術的に確立しているのか」「失敗公共事業の典型」「本当に動くのか確信が持てない」との発言が相次ぐ。推進側は「もうすぐ完成する」としてきたが、今後も同じ論調では対抗できそうにない。
原燃は今回の工程変更でも10月の工場完成予定を変えなかった。原燃の中堅社員は「10月完成はもう無理だが、今は『完成時期を遅らせます』と言えるタイミングじゃない。言ったとたんに脱原発派にほれみたことか、と言われてしまう」と心配した。
2012/01/30
六ケ所村の再処理工場不調 日本原燃、再開準備が難航
日本原燃の川井吉彦社長は30日の定例記者会見で、高レベル放射性廃液のガラス固化体製造試験に向け準備作業を再開したばかりの、建設中の使用済み燃料再処理工場(青森県六ケ所村)について、炉が不調で作業が難航していることを明らかにした。同社が原因を調べている。
炉は使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出す工程で出た放射性廃液とガラス原料を溶かし合わせ、ノズルを通して貯蔵容器に入れる構造。
原燃によると、今月24日から試験の前段階として廃液に見立てたガラスビーズを炉に入れノズルから流下させているが、流れ落ちる速度が次第に遅くなる現象が出ているという。
2012/01/30 12:35 【共同通信】
六ケ所村:相次ぐトラブル 目標時期18回も延期
再処理工場では使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出し、再び原発の燃料として使うことを目指す。93年に着工し当初は97年の完工を目指した。しかし、溶融炉内でガラス溶液の流下を促す金属棒が折れたり、高レベル廃液で作業員が被ばくするなどのトラブルが相次ぎ目標時期は18回も延期した。
日本はウランが乏しく、国の原子力政策大綱でサイクル政策の推進を明記。だが、東京電力福島第1原発事故に加え、再処理した燃料を効率的に利用する高速増殖原型炉「もんじゅ」もめどが立たない。原子力委員会はサイクル政策の見直しを本格化させている。一方、国内の原発には約1万4000トンの使用済み核燃料があり、再処理が進まないと行き場を失う。【関東晋慈】
毎日新聞 2012年1月30日 21時28分(最終更新 1月31日 1時18分)
六ケ所村:溶融炉に不具合 核燃料再処理工場
2012年1月30日 21時7分 更新:1月31日 1時16分
青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で、高レベル放射性廃液とガラスを混ぜて溶かす溶融炉に不具合が生じ、稼働試験の準備作業が中断していることが30日分かった。日本原燃の川井吉彦社長が同日の定例記者会見で明らかにした。試験は相次ぐトラブルで08年12月に中断。種々の対策を講じ、今月24日に試験再開に向けた炉の確認作業に着手したばかりだった。原因不明で復旧のめどは立っていない。国の核燃料サイクル政策見直しの動きに影響しかねない事態となっている。
川井社長によると、4年前にトラブルが起きた「A系」とは別の試験使用歴のない「B系」の溶融炉を使用。24日に放射性物質を含まない試験用の「模擬廃液」とガラスを混ぜたビーズを炉で溶かし処分容器に流下させる作業を始めたところ、流下速度が徐々に遅くなり、そのままでは炉の出口をふさぐ恐れが生じた。このため、作業を3回中断して炉にかくはん棒を入れ、回復を試みたが、不具合は解消していない。流下するガラスに含まれるはずのない数ミリ大の黒い異物が混入していることも判明。いずれも原因は分からない。
川井社長は「しばらく回復作業を続け、回復と原因究明に慎重に当たりたい」と説明。一方で、2月上旬に予定する試験再開や今年10月の工場完工の計画は「目標を変えることなく努力したい」とし、現時点で炉を止めて検証する考えはないことを強調した。核燃料サイクル見直し論への影響には「無理せず、慎重に作業を進めることが必要で、議論を進める上でもご理解いただきたい」と述べた。
08年のトラブルの反省から、同社は茨城県で実物同様の試験炉で実験を繰り返し、炉内の温度計増設など装置や運転方法の改善に腐心。福島第1原発事故後の安全対策を11年12月、三村申吾青森県知事が了承したことを受け、満を持して試験に臨んだ。一方で、川井社長は同10月、再処理工場を現時点で閉鎖した場合、これまでの建設費約2.2兆円に加えて解体などに約1.4兆円もの費用がかかるとの試算結果を公表し、埋設処分と比較して「サイクル事業は環境保全の面からも必要」と述べてきた。【山本佳孝】
◇核燃料サイクル
原発で使われた使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す再処理をして、再び原発の燃料として使う流れ。再処理後に使えず高い放射能を帯びたものは、ガラスと混ぜて固め、高レベル廃棄物として地中に処分する。処分先は決まっていない。再処理工場で取り出されたプルトニウムとウランを、原発より効率的に発電する高速増殖炉への活用計画も進められている。