東京電力福島第1原発2号機で起きた温度異常で、東電は16日、温度計の故障が原因とする報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出したと発表した。
実際の原子炉は低い温度で安定しており、今後は冷温停止状態を、残りの正常な温度計や格納容器の気体分析などで総合的に判断するとしている。
保安院は原子炉の温度を監視するための代替手段について検討を求めたが、報告書では新たな温度計を短期間で圧力容器に設置するのは困難とした。松本純一原子力・立地本部長代理は「1~2年程度の開発期間が必要」と述べた。
2012/02/16 11:42 【共同通信】
東電:2号機の圧力容器中にセンサーを設置へ-温度上昇は計器故障
2月16日(ブルームバーグ):東京電力の松本純一原子力・立地本部長代理は16日午前の記者会見で、福島第一原子力発電所2号機原子炉の温度が異常な高温を示したことについて、模擬実験の結果、温度計が故障したとみられるとの報告を経済産業省原子力安全・保安院に提出したことを明らかにした。今後の対策としては圧力容器中にセンサーを設置する方針を示した。
松本氏は模擬実験で、高温多湿の中で計器の部品の絶縁が低下し、断線気味になったことが確かめられたと説明した。端子台も海水などで腐食し電位差が上昇したとみている。
松本氏は他の温度計についても、高温多湿の環境にさらされており、温度を監視する代替手段を検討していると述べた。具体的には圧力、格納容器中へのアクセスルートを調査し容器中にセンサーを設置すると語った。同氏は「ただ、1-2年の開発期間が必要」と付け加えた。
東電は保安院の評価を得た上で、温度上昇を前提に注水量を増やしている「運転上の逸脱状態」が解消された段階で、注水量を徐々に減らしていく方針。
更新日時: 2012/02/16 11:26 JST
温度計故障と断定 国に報告
2月16日 12時12分
東京電力福島第一原子力発電所2号機で原子炉の一部の温度計の値が上昇している問題で、東京電力は、この温度計が故障していると断定し、今後は、ほかの温度計の値や、放射性物質の濃度などから冷温停止状態にあるかを総合的に判断するという評価結果をまとめ、国の原子力安全・保安院に報告しました。
この問題で東京電力は、原子炉の温度計の1つが高い値を示した原因などについて詳しい解析や実験を行い、評価結果をまとめました。
それによりますと、まず、問題の温度計だけが高い値を示す可能性を解析したところ、温度計の近くに溶けた核燃料の60%以上が集まっていないとこうした温度にならないことから、このケースは考えにくいという結論になりました。
また、問題の温度計の電気抵抗が通常より高くなっていることが分かっていることから、同じような状況を作って実験したところ、温度が上昇する傾向を示したということで、東京電力は、これらの結果から、問題の温度計を故障と断定しました。
故障した温度計は、保安規定で冷温停止状態を維持できているかどうか判断する指標の1つとなっていて、東京電力は、この温度計を監視対象から外すとともに、今後は、ほかの温度計や格納容器の放射性物質の濃度などを総合的に検討し、冷温停止状態にあるかを判断するとしています。
さらに、長期的にはより信頼性の高い方法で、原子炉の温度を把握するために原子炉につながる配管に温度計を入れる方法などを検討するとしています。
東京電力は、原子力安全・保安院が報告を妥当と判断した場合、原子炉への注水量を温度計の値が上昇する前の量に減らすことにしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120216/t10013060351000.html
2012/2/16 8:50
先が思いやられる原子炉温度計の故障―福島第1原発
東京電力は14日、同社の福島第1原発2号機で温度計の1つが上昇していることについて、故障にほぼ間違いないと発表した。
この温度計で示されている温度は上昇を続けているが、今回の発表で、破損した原子炉が再び制御不能になったのでないことが明らかになり、安堵感が広がった。
しかし、温度計の故障によって、原発の事故処理における東電の力がいかに心許ないものかが改めて浮き彫りにされた格好だ。
問題の温度計は第2原子炉の溶け落ちた核燃料の温度を計測する6つの温度計の1つ。この温度計は今月になって異常な動きを示すようになり、福島原発の状況を観察する人々から注視されてきた。第2号機は昨年3月の事故で炉心溶融が起きたと考えられている原子炉の一つだ。
東電は昨年12月、全ての原子炉の温度が100度を大きく下回る水準に低下したことを発表、放射性物質の放出や再臨界の恐れがなくなったと宣言した。しかし今月1日に約50度だった2号機の温度計の1つが5日後に約70度を超える温度を示した。
その後、原子炉の圧力容器への注水量を増やすなど冷却措置と、再臨界を防ぐホウ酸水の注入が実施されたものの、東電は12日、温度計が90度近くまで上昇していると発表した。
そして、14日までにこの温度計が250度前後を示した。一方、同じ高さにある他の二つの温度計は安定して30度前後を示していた。そのため、東電は問題の温度計と他の2つの温度計で数値に差異があることと、水蒸気や放射能レベルの増加など核反応を示す兆候がないことを理由に、温度計につながる回線がどこかで切れたのではないかと判断した。
ただ、第2号機の温度計故障で難しい問題が表面化したのも事実だ。原発事故の発端となった東日本大震災はもとより、それに続いた炉心溶融と爆発など、福島第1原発の設備が悪条件下にあったことを考えれば、機器が故障しても不思議でない。
原子炉の多くでは放射能レベルが依然として高いため、設備機器の交換は言うまでもなく、点検さえほとんど不可能な状態だ。問題の温度計は放射線量の極めて高い第2号機の格納容器内という、まさにそうした状態に置かれている。
東電によると、この種の温度計は通常、定期検査で13カ月ごとに点検および調整が実施されるという。しかし、福島第1原発では、原子炉建屋の漏えいをふさぐのに6年、溶け落ちた燃料の除去作業を始めるのが10年後になると専門家が予想している。そのような点検と調整は不可能だ。
そして、その間に第2号機やその他の破損した原子炉でさらに故障が生じたらどうなるのだろうか。原発の安全性や安定性を判断する上で東電が依存している他の機器が故障したら深刻な状況になるのではないか。
東電は、故障した温度計近辺に設置された30の温度計全てから測定した数値を基に2号機の温度を把握することが出来ると考えている。さらに、原子炉内部の状況を把握する他の方法の検討に全力を尽くしているという。
記者: Phred Dvorak