2012年01月17日
●県、子育て不安解消策
原発事故による子どもへの健康影響に対する不安解消のため、県は新年度から、乳児を抱える母親の母乳検査や屋内の遊び場整備など、子育て世代向けの新たな支援事業を始める。
16日に開かれた県議会政調会で、県保健福祉部が明らかにした。
母乳検査は、4月に発足予定の原子力安全庁(仮称)の来年度予算案に計上された事業費5億6千万円を財源として活用する。県内で年間約1万8千人の新生児のうち、母乳で子育てする約1万人の母親が対象となる見通しで、5万円前後の検査費は原則として全額を補助する方針。希望者が採取した母乳を民間の検査機関で分析する方法を検討している。
また、来年度から助産師などが、妊産婦からの放射線についての電話相談に応じる専門の窓口も設置する。屋外での活動を控える子どもたちの体力低下を防ぐため、市町村が設置する屋内の遊び場などの施設整備への助成も充実させる。
福島原発事故:1万人の母乳を検査 政府と県が実施へ
政府と福島県は来年度、同県の新生児の母親のうち希望者を対象に、母乳の放射性物質の検査を実施することを決めた。福島第1原発事故の影響が母乳を通じて子供に及ぶことを懸念する母親の不安解消を目指す。環境省の外局として4月に発足する予定の原子力安全庁(仮称)の12年度予算案に、事業費5億6000万円を計上し、県の県民健康管理基金に組み込んで活用する。
同県内の新生児は年約1万8000人で、一時的にでも母乳を与える母親は約1万人程度とみられる。母親が自ら採取した母乳を検査機関に送って調べる方法などが検討されており、1人約5万円の費用は全額補助する方針。
福島県は、不安をあおることがないよう、医療関係者や市町村の意見を聞きながら、慎重に実施方法を検討している。また、県外避難して出産・育児しているケースの調査・補助方式についても検討する。
母乳の放射性物質を巡っては、厚生労働省の研究班が昨年5~6月に福島、宮城、茨城、千葉など8県の母親108人を調査。このうち福島県の母親21人中7人から放射性セシウムを検出したが、最大で1キロ当たり13.1ベクレルで「健康への影響はない」とした。母乳には暫定規制値は定められていないが、4月から実施される予定の新基準値は、牛乳について「子供の摂取量が多い」として一般食品より厳しい同50ベクレルとしている。【乾達、藤野基文】
毎日新聞 2012年1月12日 21時30分(最終更新 1月12日 21時38分)