1月14日 21時2分
民間の有識者で作る、東京電力福島第一原子力発電所の調査委員会が、事故当時の政府の対応を検証するため、14日、菅前総理大臣からヒアリングを行いました。原発事故を巡っては、政府や国会の調査委員会も検証を進めていますが、菅前総理大臣がヒアリングを受けるのは今回が初めてです。
ヒアリングを行ったのは、科学技術振興機構前理事長の北澤宏一氏や、元検事総長の但木敬一氏など有識者6人が委員を務める、民間事故調=「福島原発事故独立検証委員会」です。ヒアリングは14日午後、都内で非公開で行われ、官邸内部の当時の状況などについて、ワーキンググループの弁護士や研究者らが、菅前総理大臣に直接ただしたということです。
関係者によりますと、菅前総理大臣は「政治を含めいろんなレベルで、原発の“安全神話”にとらわれていたことは否定できないと思う。民間事故調をはじめ、さまざまな角度から調査してもらうのは意義のあることだ」などと述べたということです。原発事故を巡っては、政府や国会の調査委員会も検証を進めていますが、菅前総理大臣がヒアリングを受けるのは今回が初めてです。
民間事故調は、このほか、枝野経済産業大臣、海江田元経済産業大臣、細野原発事故担当大臣ら、事故対応の中心を担った政治家や政府関係者からもヒアリングを実施しているということで、報告書は来月末に公表する方針です。
政府の事故調査・検証委員会は、先月、中間報告を公表しましたが、政府の危機管理の本格的な検証は、ことし夏に公表される予定の最終報告まで先送りされており、民間事故調の報告書の内容が注目されます。
民間事故調の委員長を務める北澤宏一氏は、「これまでのヒアリングで、政治家たちが組織上の問題や制度上の問題を感じながら危機対応に当たってきた様子が分かってきた。また同じようなことが繰り返されないよう、検証を進めたい」と話しています。
政府の事故調査・検証委員会の中間報告では、当時の閣僚からのヒアリングが進んでいないことから、事故直後の政府の判断や指示については詳しく検証されておらず、課題として残されています。民間事故調が重点を置いているのは、この点についての検証で、総理大臣官邸が関係機関や東京電力との間でどのように情報共有を行っていたのかを中心に、当時の閣僚らからヒアリングを行ってきたということです。
報告書には、菅前総理大臣みずからが、震災の翌朝、ヘリコプターで福島第一原発に視察に向かった際の状況や、放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」のデータの公表が遅れた経緯、政府がどのような情報や判断に基づいて記者会見などで情報発信していたかについても盛り込まれる見通しです。
2011年12月27日11時54分 読売新聞
事故調、政治家に遠慮?菅氏ら対応巡り残る謎
事故調は、東電関係者や官僚など456人からヒアリングを行い、中間報告をまとめた。
ただ、菅前首相ら政治家のヒアリングが後回しになったことで、事故対応を巡る政府の意思決定の経緯については、未解明の点が多く残っている。
例えば、放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」の情報が活用されなかった問題は、4月中旬、文部科学省などが官邸と協議し、一部の試算は混乱を招くおそれがあるため公表を控えることになったことが判明した。だが、官邸の関与の詳細については明らかにならず、調査を継続するとしている。
政治家のヒアリングについて、事故調は「周辺の事実関係を詰めてから」とするが、時間の経過とともに記憶が薄らぐことは避けられない。また、1人あたりのヒアリング回数は最低限にとどめるといい、「政治家に遠慮していると受け止められても仕方がない」と語る事故調関係者もいる。