政府の東日本大震災復興対策本部(本部長・野田佳彦首相)は23日、首相官邸で会合を開き、復興施策の司令塔となる復興庁の設置日を2月10日とすることを決定した。野田佳彦首相は会合で、「2月10日に復興庁開庁となった。これからワンストップで被災地の要望を受けて迅速に取り組む」と述べ、復興庁を中心に震災からの復興に全力を挙げる考えを強調した。
会合ではまた、東京電力福島第1原発事故による原子力災害を受けた「福島復興再生特別措置法案(仮称)」の概要が報告された。同法案は福島の復興と再生を国の責務と明記。復興特区の税優遇策をさらに拡充することなどが柱で、2月上旬の国会提出を確認した。
復興庁の本庁は東京に置き、被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の県庁所在市である盛岡、仙台、福島各市に出先機関「復興局」を配置。3県の太平洋沿岸部には復興局の下部組織として支所をそれぞれ2カ所設ける。設置場所は、岩手県宮古市、同釜石市、宮城県気仙沼市、同石巻市、福島県南相馬市、同いわき市。また、青森県八戸市、茨城県水戸市に事務所を開設する。(2012/01/23-20:03)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2012012300591
復興庁、縦割りの船出 2月10日発足、屋上屋の懸念
2012/1/23 22:20
政府は23日の東日本大震災復興対策本部(本部長・野田佳彦首相)で、復興事業を統括する「復興庁」を来月10日に発足する日程を決めた。東京に本庁を置き、被災地に3つの復興局と支所、事務所を設置。震災1年を前に復興支援の大枠は整う。だが権限を持つ本庁が被災地にないまま縦割り行政が持ち込まれる。被災県、自治体の現場からは「政策調整に屋上屋を架す事態になりかねない」との懸念の声が早くも出ている。
「ワンストップできめ細かく被災地の要望を受け、迅速に復興へ取り組む」。首相は会合で強調。平野達男復興担当相も記者会見で(1)住宅再建と高台移転(2)がれき広域処理(3)雇用確保(4)被災者の孤立防止と心のケア(5)原発事故避難者の帰還支援――を重要課題に挙げた。
復興庁発足と同時に置く初代復興相には平野氏が就き、副大臣2人も増員する。だが担当副大臣が現地に常駐するのかさえ定まらない。
復興庁は自治体からの要望を一元的に受け付け、縦割り行政を超えて復興事業を統括するのが眼目。各省が実施する復興事業の予算は復興庁が一括計上し、各省に配分する。事業の進捗状況もチェックし、各省に指示を出す。
だが被災自治体からは「現場に本庁がない以上、従来と何が違うのか。縦割り行政も同じで、被災地の首長は結局、東京に陳情に行くだろう」(宮城県沿岸部の自治体担当者)との声が聞かれる。
例えば、政府の復興支援の目玉である約1.8兆円の復興交付金。国土交通省や農林水産省などが管轄する40事業が対象だが、市町村の担当者は「結局、個々の事業が交付金の対象になるかは出先ではなく、それぞれの省に確認しないといけない」とため息をつく。
東京に一度、情報を上げて検討しないと何も判断できないのに、権限がないまま中央省庁から来る人員が中途半端に膨らむ。省庁ごとの縦割り行政が局と本庁の両側で行われ、政策調整が二重構造になる懸念さえある。
震災以来、国の意思決定の遅さを痛感してきた宮城県の村井嘉浩知事も手厳しい。「屋上屋を架すのではなく、我々の要請に対してワンストップで対応してほしい」と早くも注文をつける。
同日の復興対策本部では、東京電力福島第1原発事故を受け、国の責任で福島県を再生する方針を明記した「福島復興再生特別措置法案」の概要も確認。「地域ブランド」の登録料・出願料の減免や避難解除される区域で企業が事業を再開する場合、被災者を雇用すれば5年間、人件費の2割を上限に法人税を免除するなどの特例措置を盛り込む。2月上旬に国会に提出する。