2012/1/14 7:07
【NQNニューヨーク=滝口朋史】米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は13日、最上位である「トリプルA」のフランスを含むユーロ圏9カ国の国債格付けを引き下げたと発表した。フランスは「ダブルAプラス」へ1段階引き下げた。ユーロ圏全体の資金調達環境の悪化などが財政に悪影響を与える可能性があることなどが背景。一方、最上位のドイツを含む7カ国については格付けを据え置いた。
財政に不安を抱えるイタリア国債は「トリプルBプラス」、スペインは「シングルA」とそれぞれ2段階格下げされた。欧州連合(EU)などから金融支援を受けているポルトガルも2段階格下げされ、「ダブルB」と「投機的」とされる水準になった。
最上位のトリプルAの格付けを持つ6カ国のうちフランス以外で格下げされたのはオーストリアで、フランスと同じ「ダブルAプラス」へと1段階引き下げられた。フィンランド、ルクセンブルク、オランダはトリプルAを維持した。
S&Pは昨年12月5日にギリシャとキプロスを除く15カ国を新たに格下げ方向で見直すと発表。12月の発表前から格下げ方向で見直していたキプロスは13日、「ダブルBプラス」と「トリプルB」から2段階格下げされ、「投機的」とされる水準になった。
スロベニアは「シングルAプラス」、スロバキアは「シングルA」、マルタは「シングルAマイナス」とそれぞれ1段階の格下げ。ベルギーは「ダブルA」、エストニアは「ダブルAマイナス」、EUなどの支援下にあるアイルランドは「トリプルBプラス」と見直し前の格付け水準を維持した。
欧州危機対策、9か国格下げで崩壊の瀬戸際
(2012年1月15日01時38分 読売新聞)
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がフランスなど9か国の国債格付けを引き下げたことで、ユーロ圏の危機対応能力が低下するのは避けられない。
欧州連合(EU)の危機対策は崩壊の瀬戸際にある。
◆独仏が危機感◆
ユーロ圏の一斉格下げが報じられた13日夕から夜にかけ、圏内の2大経済国であるドイツとフランスの財務相は相次いで火消しに動いた。
「これは破滅ではない。格下げ後もなお高格付けだ」(バロワン仏財務相)
「格付け会社の判断を過大評価すべきではない」(ショイブレ独財務相)
市場に冷静な対応を呼びかけたのは、今回の格下げに対し、両国が危機感を強めているからだ。
ユーロ圏の緊急支援制度「欧州金融安定基金(EFSF)」は、ドイツやオランダなど最上級の「トリプルA」格を持つ計6か国の信用を裏付けとしており、支援能力が大幅に低下しかねない。現在の実質的な支援能力4400億ユーロ(約43兆円)は、6か国のEFSFへの政府保証にほぼ相当し、フランスとオーストリアが脱落したことで、支援能力は2700億ユーロ程度に減る恐れがある。
新興国から資金を集めるなどして、EFSFの支援能力を1兆ユーロに高める計画についても、一斉格下げを受けて資金が集まりにくくなりそうだ。
(2012年1月15日01時38分 読売新聞)
S&P、仏などユーロ圏9カ国一斉格下げ:識者はこうみる
2012年 01月 14日 12:36 JST
[ロンドン/ニューヨーク 13日 ロイター] スタンダード&プアーズ(S&P)は13日、ユーロ圏9カ国の格付けを引き下げ、フランスやオーストリアが最上級の「トリプルA」格付けを失った。一方、ドイツはトリプルAを維持した。
フランス、オーストリア、マルタ、スロバキア、スロベニアの5カ国が1段階の引き下げとなり、ポルトガル、イタリア、スペイン、キプロスの4カ国は2段階の引き下げとなった。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●織り込み済み、一段の格下げや金利上昇を想定
<バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのシニア為替ストラテジスト、マイケル・ウルフォーク氏>
格下げは朝方から予想されていたことで、これまでのところ大きな反応は見られていない。格下げは市場で完全に織り込まれていたと考える。
欧州は今後も困難な状況が続く見通しで、ユーロ圏が将来的に政治的に統合されるのか、それとも経済的な統合にとどまるのかを含め、欧州首脳が決定を行う上で政治的支持が得られたと確信するまで、さらなる格下げや金利上昇の動きが予想される。
仮に経済統合となれば、ユーロ圏にとどまるための基準が設けられるだろう。市場ではギリシャが年末までにユーロ圏離脱を余儀なくされるとの見方が強まっている。
格下げされた国々と格下げされなかった国々とで命運が分かれたことは興味深い。これは「2つの速度の欧州」が存在していることを示唆しているとみられ、危機が進むにつれ、そうした動きが一段と顕著になるのではないか。
●仏格下げは適切、市場に大きな反応ない
<リュテシア・キャピタルのトップ、ファブリス・セマン氏>
S&Pの措置は正しい。フランスは30年間の無責任な財政運営のつけを払わされている。フランスの政治家は右派も左派も歳出削減が不十分だった。
市場は織り込み済みだ。大きな反応はないだろう。ただ、独仏国債のスプレッドはテクニカル要因の影響を受ける可能性がある。
●次はギリシャ債務交渉が大きな焦点に
<ウェルズ・ファーゴの為替戦略責任者、ニック・ベンネンブルック氏>
来週の市場では、ギリシャの債務交換交渉が非常に大きな焦点になるだろう。ニュースを見る限り、まだ流動的なようだ。
ユーロは一段と下落する可能性がある。すでに大幅に値下がりしているが、1ユーロ=1.25ドル近くまで下げるとみている。
欧州が効果的な防火壁をつくるのはますます難しくなるだろう。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE80D00X20120114?sp=true