2012年1月21日 15:34
福島第一原子力発電所事故の計画的避難区域にある福島・浪江町の砕石場の石が各地の工事に使われていた問題で、福島市の新築住宅でも石が使われていた可能性があるとして、県などが20日に再調査した。その結果、室内などで周辺よりも高い放射線量が確認されたという。
県などによると、問題の石が使われた新築住宅では、住宅周辺の空間線量が一時間当たり0.5マイクロシーベルトに対し、室内では床から1メートルの高さで最も高い場所一時間当たり0.83マイクロシーベルトだった。また、床下のコンクリート部分でも最高で一時間当たり1.95マイクロシーベルトと、周辺よりも線量が高かった。
県は今後、国と対応を検討する他、問題の石を使った可能性のある家について全て線量を調べるという。
汚染石 約50か所の住宅で使用
1月21日 18時53分
計画的避難区域にある砕石場の石を使ったマンションの室内で高い放射線量が測定された問題で、同じ砕石場から出荷された石を使って原発事故のあとに工事が行われた一戸建てや集合住宅が、少なくともおよそ50か所に上ることが関係者への取材で分かりました。国や県は、早急に各住宅の放射線量の調査を進めたいとしています。
この問題は、原発事故による計画的避難区域にある福島県浪江町の砕石場で採れた石が二本松市の新築マンションのコンクリートに使われ、室内で高い放射線量が測定されたものです。
福島県と国のこれまでの調査で、この砕石場から出荷された石は県内の建設会社など少なくとも200社余りに流通し、原発事故のあと、およそ1000か所の工事に使用されたことが分かっています。
多くは道路や護岸の補修工事とみられていますが、この石が一般の住宅の工事に使われたケースがこれまでの調査で県内で少なくとも49か所に上ることが関係者への取材で分かりました。
一戸建ての住宅38か所と、マンションや団地などの集合住宅の11か所で新築工事や補修工事が行われており、このうち福島市の一戸建て住宅の室内では、1時間当たりの放射線量が最大で0.85マイクロシーベルトと屋外に比べて高い数値が計測されていたことがすでに明らかになっています。
国や県では、今のところ健康に問題のあるケースは確認していないとしていますが、住宅で使われた石の、砕石場からの詳しい出荷時期の確認を進めるとともに、各住宅の放射線量の調査を急ぐことにしています。
砕石場で採れた石への対応は
1月21日 18時53分
計画的避難区域にある砕石場の石を使ったマンションの室内で高い放射線量が測定された問題を巡っては、原発事故から10か月たった今も、砕石場で採れた石を出荷する場合の放射性物質に関する安全基準が国から示されておらず、福島県内では、早急に基準を定めるよう求める声が挙がっています。
安全基準の必要性に気付くきっかけは原発事故後の去年5月にありました。
当時、震災からの復旧工事を進めていた福島県は、国に対して砕石場で採れる石など7種類の建設資材について放射線量の数値がどれくらいであれば出荷できるのか安全基準を示すよう文書で要望していました。基準がないと復旧工事が滞りかねないことから要望したものでしたが、国からはセメントなど一部を除いては「検討を進めている」という回答にとどまり、基準は示されませんでした。
さらに、今回問題となった福島県二本松市のマンションの室内で高い放射線量が測定された際も国の対応は後手に回りました。
先月28日ごろ、砕石場を所管する経済産業省には、二本松市と別の省庁から「建物に使用されているコンクリートの材料が原因ではないか」という報告がもたらされましたが、経済産業省は「その可能性は低い」として、今月10日まで詳しい調査を始めていませんでした。
こうした国の対応によって、福島県内の砕石業者など建設資材を扱う業者には大きな影響が出ています。県内の建設資材の安全性に対する不安の声が広がっているため、資材を扱う業者が放射線量を独自に測定する動きが相次いでいるのです。郡山市にある県の施設には建設資材の放射線量の測定の依頼が急激に増加し問題が明らかになって2日間で今月の検査の予約がすべて埋まってしまったということです。
さらに砕石会社などで作る業界団体「福島県採石業協会」は、国に対し、出荷の際の検査方法や基準を設けるよう求めていく方針を決めました。こうした地元の声に対し、枝野経済産業大臣は、基準について検討する考えをすでに示していますが、住民の健康に関わる問題だけに国には早急な対応が求められています。
福島の汚染石材問題 対応後手に回り、流通防げず
福島県浪江町の採石場の石材を使った二本松市のマンションで高い放射線量が測定された問題で、石材の流通を防げなかった背景には国と県の対応の甘さがあった。国は石材の放射性物質の安全基準を設けず、県は独自に線量を測る対策を怠った。発覚後、行政は慌てて流通経路や採石場の調査に乗り出したが、対応は後手に回っている。(佐藤夏樹)
「行政の怠慢、原発による放射能汚染への憤りを感じる」。20日、郡山市であった県採石業協会の臨時会合で、宗像忠人会長は怒りをあらわにした。協会は石材の放射性物質に安全基準のないことが問題の根本として、基準設定を国に申し入れることを決めた。
県によると、原発事故後、セメントの材料になる県内の汚水処理施設の汚泥から、高濃度のセシウムが検出された。建築資材の放射性物質の基準はなく、県は昨年5月、公共工事に使う建築資材に放射性物質の基準を設けるよう、政府の原子力災害現地対策本部に要望書を提出した。
政府から明確な回答はなかった。県は再三問い合わせたが「ちょっと難しい」という返事しかなかったという。県職員は「基準次第では復旧工事に使う資材が足りなくなることを恐れ、国は二の足を踏んだのではないか」とみる。内閣府は「計画的避難区域の指定前に販売された石材は基準設定の優先順位が低いと判断し、後回しにした」と対応不備を認めている。
県にも手だてはあった。だが「石材は水洗いしているから、線量は高くならないという先入観があった」(技術管理課)と、独自に線量調査をするなどの対策は講じなかった。
問題発覚後、国と県は石材の流通経路を調べ始めたが、販売から約9カ月がたち、調査は難航。「東日本大震災後の復旧工事で注文が殺到し、販売記録を残さなかった」という業者もいて、販売先をたどるのを困難にしている。
放射能汚染の石材を販売した「双葉砕石工業」(福島県富岡町)の猪狩満社長(50)は「もっと早く調査して高線量だと分かっていれば、浪江の採石場は操業を止めていた。行政の対応は遅すぎる」と話す。
[汚染石材問題] 昨年12月、二本松市の新築マンションの室内から毎時1マイクロシーベルトを超す放射線量が検出された。福島第1原発事故で計画的避難区域に指定された福島県浪江町の採石場で採取され、放射性物質に汚染された石材を材料とするコンクリートが基礎部分など使われたことが原因とされる。石材の出荷は区域指定前で違法ではない。石材は県内の建設会社など19社に販売され、県内を中心に1000カ所以上の工事現場で使われたとみられ、流通範囲は拡大している。石材を用いた福島市の住宅などでも高線量が計測された。
2012年01月22日日曜日