東京電力福島第1原発では、3月の事故発生から「冷温停止状態」の宣言までに、延べ66万人の作業員が現場に入った。第1原発ではこれまでに5人が死亡、第2原発でも1人が亡くなっている。
第1原発では津波で東電社員2人が死亡したほか、復旧作業中に3人が急死した。東電は心筋梗塞などが原因と発表し、被ばくとの関係を否定している。
東電によると、第1原発で働く同社や下請け企業の作業員の中で、外部被ばくと内部被ばくを合わせた累積被ばく線量が、発がんリスクを上昇させると言われる100ミリシーベルトを超えた人は10月末時点で計169人いた。うち200ミリシーベルトを超えた作業員は9人に上り、最も多い人は約678ミリシーベルトに達しているという。(2011/12/16-20:50)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011121600937
'11/12/16
福島第1原発、曲折の末“安定”到達 汚染水流出、冠水断念…
東京電力福島第1原発事故は3月11日の発生から約9カ月で原子炉の冷温停止状態にこぎ着けた。放射性物質を含む大量の汚染水流出、原子炉格納容器を水で満たし圧力容器ごと冷却する「冠水」の断念など次々と難題が浮上し、当初の想定とは違った形だが、一定の安定状態になった。
全電源喪失で冷却機能が失われた中、原子炉内や使用済み燃料プールの核燃料をいかに冷やすかが焦点だった。消防車を使って原子炉に水を入れ、淡水が足りなくなると海水も注入。だが、その後の解析で燃料は1号機で早期に溶け、2、3号機も数日以内に溶けていたと判明する。
原子炉建屋の水素爆発や格納容器からの漏えいで大量の放射性物質が大気中に放出された。
冷却を進める中、3月24日、3号機タービン建屋地下にたまった汚染水が見つかった。その後、建屋地下や立て坑などで次々と確認され、4月2日には海への流出も発覚。保管場所の確保に追われた。東電は4日、高濃度汚染水の移送先確保のため、比較的低濃度の汚染水約1万トンを海へ放出、批判を浴びた。
事故の深刻度を示す国際評価尺度は12日、チェルノブイリ原発事故と同じ最悪のレベル7となった。
こうした中、東電は17日、事故収束へ向けた工程表を公表し、燃料の冷却や放射性物質の放出抑制を目標に挙げた。具体的方法として盛り込んだのは、格納容器を水で満たす「冠水」。しかし、容器の損傷のためか、大量に注水しても水位が確保できないことが5月に判明し、断念に追い込まれた。2号機では格納容器の破損箇所をふさぐ計画も立ち消えになった。
5月、東電は改定した工程表で冠水に代わり「循環注水冷却」を打ち出した。原子炉から漏れてたまっている水は約12万トンと推定。この汚染水から放射性物質を取り除き、原子炉冷却に再利用する計画だ。
汚染水浄化のためのシステムは、日米とフランスの企業の協力で6月に完成。複数の設備をホースでつなぎ、総延長は4キロに及ぶ。当初は水漏れなどのトラブルで停止が相次ぎ稼働率は低迷したが、原子炉の安定に向けた態勢は整ったとして、政府と東電は7月、工程表の「ステップ2」に移行した。
8月からは、東芝などが開発したシステムが追加され、水処理が軌道に乗った。注水量を増加させることなどによって、9月には1~3号機すべてで圧力容器底部の温度が100度を下回った。
使用済み燃料プールを効果的に冷やす装置は、8月に1~4号機全てで稼働した。放射性物質の放出も原子炉冷却とともに少なくなり、1号機には原子炉建屋を覆うカバーが完成。汚染水が海へ流れ出るのを防ぐための「遮水壁」も10月に着工するなど、ステップ2完了への作業が進んだ。
11月には放射性物質キセノンが検出された。最終的に自発核分裂によると断定したが、一時、臨界を疑う騒ぎになった。また東電の解析で、溶けた燃料は格納容器底のコンクリートを侵食し、外殻に当たる鋼鉄の板まで37センチまで迫っていたことが判明。しかし政府と東電は、燃料の冷却はできていると判断した。