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2011/03/17

福島第一原発、原子炉の冷却などに不可欠なデータが把握できず。 中性子計測装置が電源喪失でダウン。圧力計と水位計も多くが故障。

東日本大震災:計器類ダウン 福島「暗闇」の対応
 東京電力福島第1原発では、非常用発電機が津波で浸水してすべての電源が失われたため、東電は中央制御室に仮設バッテリーを持ち込んで対応している。原子炉の状態を直接監視できる中性子計測装置が電源喪失でダウン。間接的に監視できる圧力計と水位計も多くが故障したとみられる。原子炉の冷却などに不可欠なデータが把握できず、「暗闇」の中で現状把握に苦慮している。

 「信頼性は分かりませんが」。12日に水素爆発で原子炉建屋(たてや)の上部外壁が吹き飛んだ1号機。報道陣に囲まれ、原子炉圧力容器内を冷やす冷却水の水位を尋ねられた東電の担当者は、こう言って水位計の値を読み上げた。計器異常は、東電を苦しめた。



 地震発生時に運転中だったのは1~3号機で、核燃料の冷却にはとりわけ注意が必要だ。しかし1号機で14日、格納容器の圧力計が故障。2号機と3号機では14~15日、格納容器を減圧する圧力抑制プールの圧力計が故障した。現在、1~3号機の原子炉内に消防ポンプ車で注水しているが、水位上昇のきざしが見られない。圧力容器から水漏れしている可能性や、内部の圧力が高すぎて外部から水を入れられない可能性に加え「水位計が正しい値を示していない可能性がある」(経済産業省原子力安全・保安院)という。

 1~4号機の使用済み核燃料プールでは、水を冷やすための海水ポンプが使えず、水温計も16日までにすべて故障して水温が監視できなくなった。保安院によると3、4号機の核燃料プールは沸騰している。16日、3号機に対して計画されたヘリからの水投下は、放射線量が高いことから見送られた。

 加えて、計器を監視する中央制御室の放射線量が高すぎるため、運転員が常駐できない状態になっている。室内の放射能測定値を伝送するシステムも機能しないため、運転員は線量計を携帯し、定期的に直接機器を読み取りに行かざるを得ない。一番原始的な、目視による原子炉点検も不可能な状態だ。東電は「バッテリーの出力が弱く、しっかり計器をコントロールできていない。現在動いている計器も、値にどれほど信頼性があるか分からない」と言う。

 吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉工学)は「放射線量の値が高い状況では、計器を修理することもできない。対処しなければならない原子炉が複数あり、人も資材も足りない上、それぞれ必要な対処法が違う。結局、信じた策を打つしかない」と話している。【酒造唯、高野聡、大場あい】

毎日新聞 2011年3月16日 22時28分(最終更新 3月17日 0時46分)