2011年 3月 25日 10:49 JST
【東京】福島第1原子力発電所からの放射能レベルは、政府が避難を指示した半径20キロの圏外でも乳児向けの制限を超えている可能性がある。
政府系の原子力安全技術センターは23日遅く、同原発周辺の放射線量の推計積算値(12~23日)を発表した。基準を超えた地域の大半は半径20キロの避難圏の中にあった。しかし、政府が乳児向けの基準としている100ミリシーベルトを超える地域は20キロ圏外にもみられ、同原発の北東や南約40キロにまで広がっている。
一方、米国は先週、独自の推計に基づき自国民に対して半径50マイル(約80キロ)圏から避難するよう指示。日本の当局が避難対象を半径20キロ、屋内退避を20~30キロと決めた根拠を説明するよう求める圧力が高まった。
日本、米国、その他の国の監督当局が扱う原発の危険性に関するデータや推計は大きく異なる。新潟大学の工藤久昭教授は、狭い範囲でも放射線量が大きく違うことがあると述べた。風向きや放射性物質の種類の違いなど、さまざまな要因が関係しているという。
政府関係者は、原子力安全技術センターの推計について、1日中屋外にいるというありそうにないシナリオに基づいていると強調し、もっとも厳しい基準に従っても避難や屋内退避の地域を広げる必要はないとしている。屋内では通常、放射線量は4分の1から10分の1に減るという。
ただし、シミュレーションは入手できる限られたデータに基づいていると付け加えた。福島第1原発自体の放射能レベルもその一つ。この数字は、東電が原発のどこで測定をするかによっても大きく異なる。
米国が今週、周辺地域の放射線量が日本の当局の数字より高いことを示唆するデータを発表したことから、日本政府は厳しい立場に追い込まれた。当局者は詳細を見る必要があるとしてこのデータに関するコメントを控えており、避難地域は変えていない。
枝野幸男官房長官は24日の会見で、屋内退避圏の住民について、食料など生活必需品の安定供給が難しいことから、別の措置を考えていると語った。ただ、現在の避難地域は変えなかった。危険が広がったという間違ったメッセージを発しないよう政府は注意しなくてはならないという。
東京都の金町浄水場(葛飾区)の水で23日に1キロ当たり210ベクレル(厚生労働省が定めた乳児向け飲用規制値は100ベクレル)の放射性ヨウ素131が見つかった問題では、米大使館は24日、3歳未満の子供にはボトル入りの水しか飲ませないよう自国民に勧告した。都は1歳未満を対象にしている。
記者: Juro Osawa
http://jp.wsj.com/US/node_209156