2010年11月24日
北朝鮮の核開発に絡み、米国の研究者が訪朝の際、ウラン濃縮施設を確認し、濃縮に使う遠心分離器は「六ケ所村をモデルにした」と北朝鮮側が語ったとされる問題で、同村でウラン濃縮工場を運営する日本原燃は「そうした事実は一切、承知していない」と困惑している。ウラン濃縮の技術情報は非公開なうえ、北朝鮮の関係者が同工場を訪れたこともないという。
この問題は、訪朝した米国研究者が20日付で報告書をホームページに掲載、日本の新聞各紙も22日付朝刊で一斉に報じた。それによると、部品は国産だが、遠心分離器はオランダの施設とともに六ケ所村がモデルという。
同村の工場は1994年に操業を開始。天然ウランを遠心分離器にかけ、中に含まれる可燃ウランの割合を原発に使える程度にまで高めている。しかし、原燃の広報担当者は「ウラン濃縮技術は核兵器の開発につながるため、国同士で情報を共有しない」と説明する。遠心分離器の寸法や回転数などの情報も、研究成果であっても学術論文に掲載することすらないという。
外国人の工場見学も、外交ルートを通じて要望を受けた場合を除いてごくまれ。しかも、北朝鮮のように核不拡散条約(NPT)に非加盟の国の人々は立ち入りが禁じられているという。(西川迅)
2010年11月23日(火)
「六ケ所がモデル」に原燃困惑
北朝鮮による低濃縮ウラン製造問題で、北朝鮮側が、問題を公表した米学者に「六ケ所村(の核施設)などの遠心分離機をモデルにした」と話したことに対し、同村のウラン濃縮工場を運営する日本原燃は22日、「事実については一切承知していない」とコメントした。核不拡散の観点から機密性が極めて高いウラン濃縮工場。原燃関係者は「情報が漏れるはずはない。何をモデルにしたのか」と困惑の表情。一方、北朝鮮の遠心機の特徴から「日本の技術ではなく、北朝鮮側の発言に信ぴょう性がない」と指摘する識者もいる。
原燃のウラン濃縮工場は1992年3月に操業開始。遠心機による濃縮方法が用いられ、最盛期で生産ラインが7系統、濃縮能力は年間1050トンSWU(分離作業単位)あった。しかし、老朽化などが進み、現在は1系統のみが稼働している。このため、原燃は今後10年程度かけてすべての遠心機を新型に更新、生産能力を年間1500トンSWUに引き上げる方針だ。
ウラン濃縮工場は、核不拡散条約に基づいた運用がなされ、遠心機の数すら公表しないなど機密性が高い。村内には国際原子力機関(IAEA)の職員も常駐し、抜き打ちで検査を行う。ある原燃関係者は「北朝鮮のモデルにされたのなら、機器そのものなのか、設計なのか。いずれにしろ、事業者レベルの話ではない。もし事実なら、政府間の問題だ」と首をかしげる。
一方、原子力委員会の鈴木達治郎委員長代理は本紙取材に、米学者が、北朝鮮の遠心機の大きさを直径20センチ、高さ約1.8メートルと説明している点に触れ「説明をそのまま受け止めれば、かなり古い技術。日本のものではなく、北朝鮮の発言に信ぴょう性は感じられない」と強調する。
さらに、鈴木委員長代理は「北朝鮮は民生用の開発ということを強調したいために、民生用で最新技術を用いている日本とオランダの施設を引き合いに出したのではないか」と話した。