県産稲わらから基準を超える放射性セシウムが検出された問題が、21日あった県議会の大震災対策調査特別委員会や産業経済常任委員会で取り上げられた。議員からは、稲わら問題への対応の不十分さや、放射能汚染に対する姿勢を県に問う意見が相次いだ。
県議全員が加わる特別委員会で、袋正委員(改革みやぎ)は「東京電力に早急に抗議するべきだ。(県基幹種雄牛の)『茂洋』を中心に盛り上がっている時期の事故に、生産者は大変憤慨している」と、畜産業界の怒りをぶつけた。
産業経済委員会では、熊谷義彦委員(社民党県議団)が、県の行政指導の不十分さを追及した。
牧草から放射性セシウムが検出された5月、使用自粛を求めた県の文書を挙げ「『牧草等』とあるが、稲わらという言葉は一切なかった。結果として畜産農家は稲わらを食べさせてしまった」と、県の姿勢を批判した。
千葉宇京農林水産部長は「粗飼料という概念に牧草も稲わらも入っていたが、明確に示した資料はなかった。残念だし、忸怩(じくじ)たる思いがある」と述べた。
政府に肉牛の全頭検査などを求める意見も多く出された。中島源陽委員(自民党・県民会議)は「『宮城の牛肉は全て検査済み、暫定基準値を下回っている。だから安全だ』と言える態勢を作り、最大限アピールすることが必要だ」と強調した。
文部科学省と県が20日に公表した県北の放射線量マップに関連し、横田有史委員(共産党県議団)は「これまで5回も県北の放射線量測定を行うよう要請してきた。ようやく昨日になって発表された」と対応の遅さを指摘した。小泉保環境生活部長は「いろいろ分析し、整理した結果だ」と答弁した。
2011年07月22日金曜日
平成23年7月22日
甘い想定、汚染を拡大-稲わら問題、誤算続きの農水省
放射性セシウムを含む稲わらを肉牛に与えていた問題で、汚染された稲わらの供給先が各地に拡大している。農林水産省は原発事故の発生後、放射性物質に汚染された恐れのある餌を使わないよう農家に要請したものの、当初稲わらは大丈夫だとして対象から除いた上、要請自体もきちんと伝わっていなかったことが背景にある。甘い想定や誤算続きの対応が汚染拡大につながった格好だ。
「農水省としての措置そのものが不徹底ではなかったか、真摯(しんし)に受け止めないといけない」。鹿野道彦農水相は21日の参院予算委員会で、改めて反省の弁を述べた。
農水省は3月19日、東北や関東などの16都県に対し、農家が家畜の餌の管理を徹底するよう通知。しかし、対象は「乾牧草」としており、「稲わら」の言葉はなかった。
稲わらは通常、秋の収穫後にロール状にして屋内に保管されるため、3月まで外に放置しておくはずがないと判断したからだ。農水省は「原発事故後にロールにされて出荷されたのは想定外だった」(幹部)と説明する。
さらに、汚染された稲わらを与えた畜産農家からは「通知自体を知らなかった」との声が相次いでおり、周知徹底に向けた農水省の努力が不十分だったことは否めない。ただ、自治体側も「通知をそのまま関係団体にファクスしただけ」(福島県)といった対応にとどまっており、国と自治体の連携不足が事態悪化につながった側面もある。
稲わら管理通知 農家に浸透せず
2011.7.18 23:51
高濃度の放射性セシウムを含む稲わらが相次いで見つかる中、3月の原発事故後に農林水産省から出された「屋内で保管された飼料を使う」などの適正な飼育管理に関する通知を「知らなかった」とする畜産農家が続出している。農水省の通知やチェックの在り方が改めて問われそうだ。
農水省の通知は3月19日、「事故発生前に刈り取った飼料を使う」などの内容で、東北関東の各都県に出され、各都県の家畜保健衛生所や農協などの業界団体を通じて畜産農家に周知されることになっていた。
ところが、福島県によると、18日までに問題が発覚した農家14軒のうち、13軒の農家が通知を知らなかったという。当初、「知っていた」と回答した農家もあったが、飼育関係者全員が把握していなかった。
通知は県や農協ら関係団体が技術情報紙など書面で農家に配布。内容が徹底されているかの立ち入り調査などはなかった。農水省幹部は「震災の混乱の中で周知が徹底されていなかった」と肩を落とす。
農水省は15日に福島第1原発周辺の11都県に対し、農家へ聞き取り調査や指導をするよう通知。しかし18日には11都県以外の新潟県長岡市の農家で宮城県産の稲わらから暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたため、調査範囲をさらに広げる方針を固めた。
稲わらは県内だけでなく近隣県などにも流通する。農水省は「さらに見つかる可能性もある」として、周知と調査を急いでいる。