金総書記、6カ国会合に積極姿勢 非核化は拒否 米国務副長官ら訪中へ
2010/12/14 21:03
【北京=佐藤賢】北朝鮮の韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃で緊迫する朝鮮半島の緊張緩和策を巡り、中国外務省は14日、北朝鮮の金正日総書記が日米韓中ロとの6カ国高官の緊急会合に「積極的な態度を示した」こと明らかにした。だが日米韓が開催条件とする「核放棄への具体的行動」には応じず溝が鮮明になる中、米国はスタインバーグ国務副長官らを15日から中国など関係国に派遣。対話再開の条件を探る外交戦が本格化する。
金総書記の態度は中国外務省の姜瑜副報道局長が14日の記者会見で明らかにした。金総書記は8~9日に訪朝した中国の戴秉国・国務委員(副首相級)に語ったという。双方は北朝鮮側と、核問題を巡る6カ国協議のプロセスを推進し、朝鮮半島の非核化を目指す方針で一致。各国との関係正常化や北東アジア地域の恒久的な平和実現に努力することも確認した。
■日米韓に警戒感
中朝関係筋によると、一方で北朝鮮側は砲撃を非難する日米韓への批判も展開した。同時に、日米韓が迫る「非核化への具体的取り組み」を拒否する考えも伝えた。
中国が唱える「6カ国会合」は核問題を巡る6カ国協議と同じ枠組みで、開催すれば核問題の進展がないままに北朝鮮に対話の道を開くことになると警戒するのが日米韓の立場。北朝鮮との隔たりも踏まえ、米国は北朝鮮への一層の影響力行使を中国側に求める構えだ。
スタインバーグ副長官率いる米政府代表団は15日に北京入りし、17日まで滞在して対応を協議する。代表団のうちキャンベル次官補(東アジア・太平洋担当)とソン・キム6カ国協議担当特使は16日にソウルを訪問し、同次官補は17日に日本に入る。中国との協議結果を踏まえ、日米韓で対応を擦り合わせる。
ウラン濃縮の問題でも対立は深まる気配が出ている。韓国紙の朝鮮日報は米韓当局が北朝鮮の濃縮施設について、先に開示した北西部寧辺(ニョンビョン)の他にも3、4カ所に秘密施設を隠していると判断していると報道。濃縮活動が想定以上に進んでいる事態に、日米韓は懸念を強めている。
■中国は米朝対話期待
中国は自らの外交努力を強調しながらも「北朝鮮への影響力には限界がある」(政府関係者)とし、逆に米国に北朝鮮との対話を促す方針。リチャードソン米ニューメキシコ州知事が16日から20日まで私人の立場で訪朝する予定をにらみ、姜副局長は「米朝間で接触と対話を強化することを支持する」と語った。米朝が非公式のパイプで解決の糸口を探る展開を期待している。
責任を押しつけ合う格好となっている米中の構図の背景には、両国のジレンマもある。対立色が深まれば来年1月の胡錦濤国家主席の公式訪米への友好ムードづくりにも影を落としかねない。だが、北東アジアの勢力圏争いも絡む北朝鮮問題で譲歩はしにくい――。軍事演習で抑止力を誇示する米国と、6カ国協議の再稼働で主導権を握りたい中国が着地点を探り合う展開になっている。