ページ

2010/12/14

sengoku38、自宅のPCのデータを全て消去。 検察幹部「何度も初期化するなど執拗にデータを消した疑いがある」

2010年12月14日21時51分 産経新聞
尖閣ビデオ流出 説明あいまい、年明けに刑事処分へ

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突映像が動画サイトに流出した事件で、神戸海上保安部(神戸市)の海上保安官(43)が流出を認めてから1カ月余り。警視庁と東京地検による保安官への任意聴取が続いている。保安官の説明は今もあいまいで、動画サイトの登録名「sengoku38」の意味さえ明かさないという。流出後の不自然で矛盾した行動も多く、保安官の「心の深奥」はうかがいしれない。



 ■矛盾する行動

 捜査関係者によると、保安官は10月中旬、巡視艇内の共用パソコンからUSBメモリー(外部記憶媒体)に映像を保存。自宅のパソコンで映像を分割し、11月4日午後に神戸市内のインターネットカフェから動画サイト「ユーチューブ」に投稿したとされる。

 投稿後、保安官は自宅のパソコンのデータをすべて消去した。捜査当局はパソコンを押収し、特殊な装置で復元を試みたができなかった。パソコンを購入時の状態に戻す「初期化」をしてデータを消去しても、この装置で復元できることが多いため、「何度も初期化するなど執拗(しつよう)にデータを消した疑いがある」と検察幹部の一人はみる。

 保安官はデータ消去に及んだ理由ついて「(流出させたことが)ばれたくなかった」と話した。

 ところが、保安官は捜査当局が投稿場所を特定していない段階で民放テレビの取材に応じ、流出を告白していた。「国民の誰もが見る権利がある」と動機なども語っていた。取材に応じた理由について「逮捕されると言いたいことが言えなくなると思った」と東京地検などに説明している。

 隠蔽工作とマスコミへの自白-。矛盾した行動に、当時の心情の揺れが見え隠れする。



 ■まだ見えぬ全容

 「国民に知らせたいという動機であれば、もっと自分の言葉で説明するはず。だが『覚えていない』と言って正直に話していない部分が多すぎる。真意が分からない」。ある捜査関係者は首をかしげる。

 自宅の家宅捜索では、政治問題をテーマにしたマンガが見つかっただけ。哲学書などの思想的な書物はなく、「深い考えがあって流出に及んだとは思えない」(捜査関係者)。一般の関心が高い「sengoku38」についても説明を拒み続けている。

 一方、捜査当局が巡視艇内の共用パソコンを解析した結果、複数の外部記憶媒体に映像を保存した痕跡があることが判明。保安官は複数の外部記憶媒体に保存したことを認めた。

 投稿用に使ったUSBメモリーについては「壊して捨てた」としているが、それ以外の外部記憶媒体がSDカードだ。保安官は動画サイトに投稿する数日前、このSDカードを封筒に入れて米CNNテレビ東京支局に郵送していた。

 ただ、SDカードの中身について何の説明も付けなかったため、不審に思われて捨てられた。筆跡からの特定を恐れたためとみられるが、封筒のあて名は書かれていたといい、「まったく不自然な行動だ」と捜査幹部は指摘する。



 ■処分は越年

 東京地検は警視庁からの書類送検を受け、起訴か不起訴かの刑事処分を決めるが、処分時期は年明けになりそうだ。

 保安官の行為は国家公務員法(守秘義務)違反に該当するのか。同法100条では「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と規定しているが、海保職員であれば比較的容易に映像を入手できる環境だったため、秘密性は低いとみられる。検察幹部は「現段階では起訴は難しいが、慎重に検討している」としている。