北朝鮮をめぐるロシアのシャトル外交
ロシアは緊迫化する朝鮮半島情勢の調整に向けたシャトル外交を活発化させている。12月13日に予定されている朴宜春(パク・ウィチュン)北朝鮮外相とのモスクワでの会談もその一つだ。
6日にワシントンで行われたアメリカ、日本、韓国の3カ国外相会談で、6カ国協議の即時再開という中国の提案が拒否されて以降、ロシアはパートナー国との調整を活発化させている。日米韓の3カ国は、北朝鮮政府が敵対的な政策を放棄しない限り、ロシアと中国を含めた協議再開には応じられないとしている。
それに続いて、韓国政府は軍に対して、北朝鮮のいかなる挑発行為に対しても即座に発砲するよう命令を出している。アメリカも、「同盟国が自衛のための行動をとる権利」を支持した。北朝鮮政府はそのような状況を、宣戦布告とみなしており、局地戦争および全面戦争に対して準備が整っていることを声明している。
そのように情勢が緊迫化する中で、9日には日本外務省の斎木昭隆・アジア太平洋州局長が調整のためモスクワを訪問した。また北朝鮮の朴宜春外相に続き、韓国の魏聖洛(ウィ・ソンラク)朝鮮半島平和交渉本部長もロシアを訪問する予定だ。
同時にロシア外務省のグリゴリー・ログヴィノフ特別大使が、ワシントンで協議を行うことになっている。ログヴィノフ特別大使は、「ロシアの声」とのインタビューのなかで、現在重要なのは、地域における緊張緩和であると述べている。
―状況は深刻であり、地域の緊張が高まっている。現在重要なのは、緊張を緩和することだ。どの国も、状況を悪化させるような行動を慎まなければならない。それは言葉のやり取りから、政治軍事的行動まですべての側面においてだ。
また6カ国協議再開のための環境を整えていく必要がある。いまのところ、具体的なタイムスケジュールをあげることはできないが、重要なことは、どの国も問題解決のためには政治外交的な方策を取る必要があるということを認識していることだ。
ロシアは、北朝鮮とも韓国とも対等で善隣的な関係を築いている。南北両朝鮮の関係調整のために、ロシアは自らの政治的影響力を生かしていることになるだろう。朝鮮半島での軍事的、また心理的緊張が高まる中で、北朝鮮政府は、アメリカおよび韓国からの圧力を和らげることができるのはロシアだと考えているようだ。
また北朝鮮だけでなく、韓国においても、ロシアが安全保障問題において認識を共有することが望ましいと考えられている。ロシアにとって朝鮮半島での軍事衝突は許容できるものではない。
11月23日に起こった南北朝鮮の衝突以来、ロシアは中国と共に慎重な立場を取っている。そのことが、北朝鮮および韓国のそれぞれの代表とのモスクワでの会談が建設的なものとなるための重要な要素となっている。朝鮮半島を巡る緊張緩和、および6カ国協議再開の道筋をつけることが、優先課題となるだろう。