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2013/09/23

NRCグレゴリー・ヤツコ前委員長が東京都内で講演 「原発事故は防げない」

汚染水問題で政府の対応を批判

9月23日 21時6分



おととし、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きたとき、NRC=アメリカ原子力規制委員会の委員長を務めていたグレゴリー・ヤツコ氏が23日、東京都内で講演し、福島第一原発の汚染水の問題について「なぜもっと早く政府が関与しなかったのか不思議でならない」と述べ、日本政府のこれまでの対応を批判しました。

グレゴリー・ヤツコ氏は、アメリカ原子力規制委員会の委員長を去年7月まで3年余り務めた物理学者で、福島第一原発の事故のあと、その対応を巡る日米両国間の協力や、アメリカの原発の安全対策の見直しを進めてきました。


「なぜもっと早く政府が関与しなかったのか」
23日、東京・千代田区の会場で「アメリカから見た原発事故」と題して講演したヤツコ氏は、福島第一原発でタンクから汚染水が漏れ出した問題について「東京電力に対応能力がないという懸念を国際的にますます高めた。規模や関心の大きさから、なぜもっと早く政府が関与しなかったのか不思議でならない。日本国内では、ほかの原発の再稼働にばかり関心が集まり、福島第一原発の汚染水の対応が忘れられていたようだが、国際的には、まだまだ対応を続けなければならないという意識があり、アメリカを含め、それがさらに深まった」と述べ、日本政府のこれまでの対応を批判しました。

そのうえで「課題は今も続いていて、あしたとか来月などという期間では無くならない。何年、何十年、あるいは、福島第一原発が完全に廃炉になるまで続く。漁業者だけでなく、住民や経済に与えている影響は大変、甚大で、日本の原子力への国際的な信頼が揺らいでいる」と述べ、汚染水の問題は重大だという認識を示しました。


「原発事故は起こるもの」
ヤツコ氏は日本がこれから原発とどう向き合っていけばよいかについて「原子力の関係者の間では『原発は安全で事故は起こらない』という考え方もあったが、『原発事故は起こるものだ』という基本的な事実を認めないとオープンな議論はできない。事故は防げないという前提で、重大で過酷な事態にならないようにするには、どうすればいいかを考えるべきだ」と述べ、これまでの発想を変えるべきだと指摘しました。

そのうえで「住民を誰1人避難させてはいけないし、周辺や海を汚染してはいけないという今回の事故の教訓を踏まえた新しい安全基準を打ち出すべきだ。また、福島第一原発の汚染水の管理や核燃料の運び出し、それに、建屋や地域の除染、住民の帰還などについて、市民が政府に説明を求めたり、対話や議論をしたりするなどの行動が必要だ」と述べ、一般市民の積極的な関与も求めました。


「100年後には“脱原発”も」
講演会の会場には100人近くが集まり、質問や意見が述べられました。

それに答えるなかで、ヤツコ氏は「核分裂のエネルギーで発電する原発は、費用が高いし、壊滅的な事故のリスクを負っているので、100年後には原発が無くなってほしいという思いは共有したい。しかし、そこにどうやって到達するかが難しい。日本は島国でエネルギー源が少ないが、人的資源と技術や知識などを活用して、よりよい発電方法を開発し、世界をリードしてほしい」と述べ、深刻な原発事故を経験した日本による次世代のエネルギーの開発に期待も示しました。








脱原発に踏み込んだヤツコ前NRC委員長

田中龍作2013年09月23日 20:17

 米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ前委員長が来日、きょう都内で講演した。
 ヤツコ氏は福島原発事故を受け、規制を強化しようとして原子力規制委員会内で孤立、昨年5月委員長を辞任した。(wikipedia等より)

 原発を売りつけた国の苛酷事故を目のあたりにし、自説を曲げなかったヤツコ氏の話は示唆に富んでいた。( 太字がヤツコ氏の発言)

 驚いたのはヤツコ氏が脱原発に大きく踏み込んだ発言をしたことだ―

 「日本に来る度に人々のスピリットとテクノロジーに驚かされる。次世代のエネルギーや新たな送電システムを作ることができると思う。そうすれば高価な施設を必要とする原子力を使わなくてもよくなるだろう。苛酷事故を起こすような技術(原子力)を使わずに済むようになるだろう」。

 原発安全神話は日本だけに限らずスリーマイル事故を経験した米国にもあった。従属国の日本も神話にかぶれていった―

 「原子力業界は『全ての原子力発電所は安全だ、事故は起こらない』と言い、事故が起こると改善をしようとする」。「事故が起こると大騒ぎになるが、事故は起こるものだという理解を持って始めなくてはならない。将来のある時点で事故は起こるものだ」。



 日本ではチェルノブイリ事故ばかりがクローズアップされ、スリーマイルの教訓が学ばれなかったようだ―

 「スリーマイル島原発事故では、避難計画が非常に脆弱だという事が分かった。(にもかかわらず)福島原発は(スリーマイルの)重要な教訓を学ばなかった。避難は非常に混乱を極め、事前に十分な計画がなかった」。
 
 「福島原発事故を受けて新しく打ち出すべき安全基準とは、避難者が一人でも出てはならない、ということだ。発電所設備の外を汚染してはならない」。

 この他、ヤツコ前NRC委員長は「市民が議会や行政に働きかけて行くことも大事だ」と強調した。

 質疑応答で筆者は「日本政府が汚染水問題を過小評価していることをどう考えるか?」と質問した。前NRC委員長は次のように答えた―

 「東京電力には対応する能力がないのではないかという懸念をますます高めたのではないか。なぜ政府がもっと早くから関与しなかったのか?再稼動の方にばかり関心を払いすぎていた」。

 『前』NRC委員長となったゆえ大胆な発言ができるのかもしれないが、日本の原子力規制委員会の田中俊一委員長は退任後、福島の事故について何と語るだろうか。

 ヤツコ氏は明日(24日)、日本外国特派員協会(FCCJ)で講演と記者会見を行う。