福島汚染水:各国から厳しい指摘 IAEA説明会
毎日新聞 2013年09月17日 11時06分(最終更新 09月17日 12時01分)
国際原子力機関(IAEA)総会の関連行事として16日夕、ウィーンで開催された日本政府主催の福島第1原発汚染水漏れ問題に関する説明会で、各国の専門家から抜本対策の遅れや規制当局のあり方などを問う厳しい指摘が相次いだ。第一義的な責任は東京電力にあると繰り返す日本側の説明からは「政府が責任をもって取り組む」(山本一太科学技術担当相)との意気込みが伝わらず、責任の所在のあいまいさを印象付けた。【ウィーン樋口直樹】
説明会には、原子力政策を推進する経済産業省と、同省から独立した原子力規制委員会、廃炉に関する研究開発を行う国際廃炉研究開発機構などの担当者が出席。汚染水漏れの現状と、凍土壁の設置や浄化装置の増設などによる政府主導の解決策について、会場を埋めた100人以上の専門家らに説明した。
だが、会場からの質問は今後の対策よりもむしろ、汚染水漏れの深刻化を招いた責任を問うものだった。スロベニアの規制当局者は「汚染水問題は原発事故直後から予想できた。なぜ2年以上もたった今まで持続的な解決策を見いだせなかったのか」と、厳しい口調で切り出した。
これに対し、廃炉機構の担当者は、汚染水の漏えい部分の発見と修理に手間取っている▽原子炉建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げて海に放出する計画が漁業関係者らの反対で困難になっている−−と説明。
経産省の担当者が「法的な責任は東京電力にあり、我々はサポーターの立場。東電には資金もアイデアもなく、2年間も良くない状況が続いてしまった」と釈明すると、会場から「責任転嫁ではないか」との失笑が漏れた。
一方、原子力規制委員会のあり方にも疑問の声が上がった。2007年に調査団を率いて訪日した仏原発安全当局者は「規制委員会の技術顧問が、問題解決を図るため東京電力にアドバイスするのは、原子力安全の責任分担をあいまいにするものだ」として強い懸念を表明。規制委員会側は「規制当局は電力事業者と一線を画すべきだが、福島第1原発事故に限り、問題の拡大を防ぐために行っている」と説明した。
汚染水対策、IAEA総会で報告 各国から疑問噴出
2013年09月17日17時49分
【ウィーン=喜田尚】16日にウィーンで開会した国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、日本政府は、放射能汚染水漏れなど東京電力福島第一原発の現状を説明する独自の報告会を開いた。詳細な情報を提供して各国専門家の理解を得る狙いだったが、会場からは政府の取り組みについて様々な疑問の声が上がった。
報告会には経済産業省、環境省、原子力規制委員会のほか、電力会社と原子炉メーカー、研究機関で作る「国際廃炉研究開発機構」からもパネリストが出席。スライドを使いながら約1時間、汚染水漏れの詳細な状況や対策について説明し、除染作業や廃炉についても各機関の取り組みを紹介した。
しかし、立場が異なるはずのパネリストが並んだこともあって、各国代表団の専門家から「日本が原子力規制委員会を設立したのはよかったが、(電力会社、政府、規制当局の間に)まだ立場に混同があるのでは」との疑問の声が出た。
スロベニアの規制当局関係者は「汚染水がたまる問題は(事故の)当初からあったことだ。なぜ2年間も解決策が探られてこなかったのか」と指摘した。
また、汚染水対策などで政府が前面に立つとの説明に、「責任をとるのは誰なのか」との質問も出た。日本側は「廃炉も除染も賠償も、一義的な責任は東京電力。しかし、財政的にも難しい状況にあり、同社が作業をできるように政府が支援していく」などと説明に追われた。
一方、総会に出席した山本一太科学技術担当相は、記者会見で「状況はコントロールできている」と強調した。「福島第一原発の港湾の外では海水の放射線量は世界保健機関(WHO)の飲料水のガイドライン以下」であることを根拠とした。東電の山下和彦フェローが「コントロールできていない」と話したことについて「原発の港湾内について言及したものだ」との認識を示した。