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2013/09/13

韓国 TPP、年内交渉終了なら交渉参加は困難

年内交渉妥結なら「TPP参加困難」 韓国高官が見通し

2013年9月13日 朝刊


 【ソウル=篠ケ瀬祐司】韓国・産業通商資源省の崔京林(チェギョンリム)次官補は十二日、ソウルの外信記者クラブでの記者会見で、韓国の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加について「交渉参加国が目指しているように、年内に交渉が終了すれば、韓国の交渉参加は難しいのではないか」との見通しを示した。 
 同時に崔氏は「交渉が難航している分野がいくつかある」と指摘。交渉が長引いた場合には、韓国が交渉に参加する可能性に含みを持たせた。 
 韓国がTPPの交渉に参加した場合、中国との自由貿易協定(FTA)をめぐる交渉への影響については「(TPPとFTAは)対決するものではなく、補完し合うものだ。中国に否定的な影響はない」と強調した。





韓国、TPP交渉参加検討 世論・時間 ハードル高く

2013年09月10日07時04分

 【藤田知也、ソウル=中野晃】韓国政府が環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を積極的に検討し始めた。韓国政府高官が明らかにした。韓国は2国間の自由貿易協定(FTA)を重視する通商政策を掲げてきたが、米国から誘いがあったのに加え、日本の交渉参加が転機になった模様だ。しかし、国内世論をまとめられるかなど、ハードルは高く、厳しい。

 そもそも、韓国政府は今年6月に発表した「新通商ロードマップ」で、TPP交渉に当面は参加しない方針を示したばかりだった。むしろ、最大の貿易相手国である中国とのFTA交渉を、最優先の課題に位置づけていた。

 しかし、その態度は、7月に日本がTPP交渉に正式参加したときから一変したという。韓国は米国や欧州連合(EU)などとFTAを締結済みで、日本に先行していたが、政府関係者の間に「日本は攻撃的なFTA推進策を進めている」との危機感が出始めた。

 ただ、韓国政府の交渉参加は円滑には進みそうにない。TPPで関税がなくなれば、日本製の素材や部品、オーストラリアやニュージーランドの乳製品などが大量に安く入ってきかねないからだ。国内のメーカーや酪農家などは大きな打撃を受けかねない。韓国の大手自動車メーカー現代自動車グループの関係者からは、「TPPは結局、韓日FTA。我々が得られる利益は何なのか」との声もあがっている。

 国内世論をまとめられたとしても、今度は交渉に参加する12カ国すべてから交渉入りの同意をもらわなければならない。日本は同意するとみられるが、残り11カ国のスタンスは現時点では不明だ。米国では、その同意に必要な議会承認の手続きが90日間もかかる。交渉参加国は年内の妥結を目指しており、韓国に残された時間はほとんどない。

 日本政府の交渉担当者は、「韓国がたとえ妥結前にギリギリで参加できたとしても、ほぼ合意内容はできあがっている。それを丸のみすることができるのか疑問だ」と指摘する。









韓国がTPP加盟に舵を切った背景とは?

投稿日: 2013年09月11日 12時02分

朝日新聞が伝える所では、韓国政府がTPPへの加盟を検討との話である。韓国は2,000年以降二国間協定であるFTAに注力し大きな成果を得ている。又、つい最近(6月)に「新通商ロードマップ」で、TPP交渉に当面は参加しない方針を示し、最大の貿易相手国である中国とのFTA交渉を、最優先の課題に位置づけていた。従って、多くの日本人が今回の韓国政府の方向転換を唐突に受け止めるのは至って当然の事と思う。しかしながら、これを余儀なくされている韓国に国内事情があるのも今一方の事実である。今回は、「韓国がTPP加盟に舵を切った背景」を、発表されたばかりの外務省資料、「韓国経済と日韓経済関係」を使って説明してみたい。


■韓国FTAの限界

韓国は,貿易総額の対GDP比率が90%に達し,経済の貿易依存度が日本などに比べて際立って高い。貿易の拡大こそが韓国経済成長の基本条件であり、2000年代に入り,急速にFTAを推進し、チリに始まりEU、アメリカと相次いで協定を発効させるなど順調に成果を上げている背景である。一方、日本とは2003年に交渉を開始するも話が纏まる可能性は低い。従って、韓国にとっての最大貿易相手国である中国とのFTAに活路を求めた訳である。しかしながら、中国は民主国家ではなく、中国共産党一党独裁の国であり、経済への裁量権を党が手放すとはとても思えない。これが対中FTAの進展しない理由と推測する。対中、対日FTAが実質手詰まりであれば、韓国のFTA戦略の今後に多くは望めない。


■対日依存を続ける韓国経済

韓国経済特徴の第一は、ドイツ同様貿易依存度が際立って高い事である。そして、今一つは、その韓国の貿易は対日関係によって成り立っているという事実である。韓国の資本の蓄積は充分ではなく、海外からの投資を必要とする。そして、日本は韓国への最大の投資国であり、全体の30%弱を昨年投資している。必要とするのは資金の供給だけではない。基本技術の蓄積や技術開発能力が未だに脆弱であり、その部分は相変わらず日本に頼るしかない。これが増え続ける対日特許料支払いの背景である。

韓国は今日でも独自技術が弱いため、輸出競争力を備えた製品を製造しようとすれば、日本から資材や中核部品を輸入し、更に日本から輸入した製造設備で組立て、製品を輸出するしかない。この構造こそが膨大な対日貿易赤字を続けざるを得ない韓国経済のアキレス腱である。とはいえ、韓国経済はがっちりと日本企業のサプライチェーンに組み込まれており、ここから抜け出すのは容易ではない。


■韓国と距離を置こうとする日本

現在の構造では韓国は輸出で稼いでも稼ぎの大半を日本に吸い上げられてしまう。現在、多少は改善をしたが、2010年の韓国貿易黒字約3兆3800億円に対して対日貿易赤字は約2兆8300億円で過去最大を記録している。とはいえ、日本からの投資、技術移転、中核部品や製造設備の輸入が途絶えた瞬間に韓国経済はショック死してしまう。日本は大嫌いだが、日本なしではやって行けないというのが韓国の実情なのである。

何故日韓関係は悪化するのか?で説明した通り、日本なしではやって行けない韓国が今最も懸念しているのは、日本が韓国に対する興味を急速に失いつつある事実である。この状況が進めば、TPP加盟を契機に日本企業はアジア・太平洋地域への投資や技術移転に舵を切る事になる。対韓投資は良くて先細り、最悪の場合は投資を引き揚げその分をアジア・太平洋地域に回すという事もあり得る。韓国に取っては正に悪夢といって良いだろう。

「日本の興味は日米同盟の深化とTPP加盟によって加速される、アジア・太平洋地域における投資、交易の加速である。韓国をパートナーにすることなど全く念頭にない。日本は軸足を厄介で面倒な隣国がいる北東アジアからアジア・太平洋地域に移行する訳である。従って、韓国が危惧しているのは日本に愛想を尽かされ、置いていかれる事に他ならない。この辺りが実は韓国の本音ではないか? と考えている。

重要なのは、決して日本のみが韓国との距離を置こうとしている訳ではないという事実である。外資系銀行の韓国市場徹撤退ラッシュは、結果、韓国金融市場が破綻するのではと韓国政府を震撼させている。撤退は金融分野に留まらない。製造業であるGMは労働問題を嫌気して韓国からの撤退を決定した。理由が理由だけに他の分野に波及する事は必至であろう。結果、韓国経済は空洞化を加速する事になる。」


■停滞する韓国経済

韓国政府は公式には「ウォン安政策」を否定しているが,これを額面通り受け取る訳にはいかない。一橋大学経済研究所准教授小黒一正氏が指摘する様に、ウォン安政策は存在し、実は韓国国民窮乏化政策であったと理解すべきであろう。更には、海外借入金とGDPがほぼ同じという対外債務依存体質や国内で稼いだ利益を海外へ再投資してしまう韓国の企業体質から判断して、韓国経済の低成長が続けば国民生活は破綻してしまうのでは? と危惧される。韓国経済は自転車操業であり、成長を続けるしか道はないのである。

しかしながら、韓国、聯合ニュースが伝える、韓国成長率後退のニュースは余りに無慈悲に視界不良の韓国経済の現状を報じている。国民生活破綻回避のためには韓国政府は何らかの実効性のある施策に舵を切らねばならないのは当然である。韓国政府は土俵際に追い詰められている。


■高まる通貨危機の可能性

韓国の経済成長率後退の背景にあるのは、韓国が現在直面する「低成長構造の固定化と潜在成長率の低下」という、韓国経済の体質に起因する根本問題である。これに対する抜本的な打開策を立案する事が出来ないと、先ず逃げ足の速い短期の投機資金は前途に期待の持てない韓国市場に見切りを付け引き上げを加速する事になる。日本企業などもそれに雁行して資金を引き揚げ、アジア・太平洋地域に投資対象を移す事になる。そういう展開となれば、韓国がリーマンショック後に経験した通貨危機の再来となる。


■TPP加盟は苦境にある韓国経済の特効薬となるか?

韓国経済が直面する問題とは? 要約すれば、輸出依存型経済であるにも拘わらず輸出が不振であり、輸出不振によって経済が低成長を余儀なくされ、経済低成長による国民の窮乏化が進み、そして、これらを嫌気して外国資本引き揚げによる通貨危機可能性が高まっているという事ではないだろうか? 仮にそうであれば輸出を増やす事が韓国経済の特効薬である事は間違いない。世界で今世紀、成長が期待出来る唯一の地域はアジア・太平洋である。従って、韓国が従来型の輸出を機関車役にした経済成長を望むのであれば、日本やアメリカに雁行し、その結果として、この地域の成長の果実の分け前にありつくというのは現実的な選択である。そして、TPPは、そのための理想的な「チャンス」という事になる。