【汚染水】 地下水に到達した?汚染水 「地下水バイパス」計画見直しも
「地下水バイパス計画」に影響の可能性
(06日11:05)
タンクから漏れた汚染水が地下水にまで達していた疑いが浮上したことで、汚染水対策の柱のひとつである「地下水バイパス計画」に影響する可能性が出てきました。
福島第一原発では、地下水が原子炉建屋に流れこむことで1日400トンずつ汚染水が増え続けているため、東京電力は、汚染される前の地下水をくみ上げて、海に放出する「地下水バイパス計画」を立て、準備を進めています。
くみ上げた地下水は、放射性物質の濃度が基準値以下であることを確認したうえで海に放出するとして、漁業関係者の理解を求めていました。
しかし、今回、汚染水が漏れたタンクは地下水をくみ上げる井戸の上流側にあり、その地下の水から放射性物質が検出されたことで、最悪の場合、汚染される前にくみ上げるという計画自体が破綻する可能性もあります。
東京電力は、引き続き監視を強めるとともに、汚染範囲の特定を急ぐ方針です。(06日11:05)
地下水に到達か 汚染水対策に影響も
9月6日 5時9分
東京電力福島第一原子力発電所でタンクの汚染水が漏れた問題で、漏れた場所の近くに掘った観測用の井戸の地下水から、ストロンチウムなどのベータ線という種類の放射線を出す放射性物質が高い値で検出されました。
漏れ出した汚染水が地下水に到達したおそれがあり、汚染が広がれば今後の汚染水対策の見直しを迫られる可能性があります。
福島第一原発では、先月、4号機の山側にあるタンクから、高濃度の放射性物質を含む汚染水300トン余りが漏れ、一部が海につながる側溝を通じて、原発の専用港の外の海に流出したおそれがあります。
東京電力で汚染の広がりを調べていますが、タンクから10メートル余り南側に新たに掘られた井戸で4日に採取された水から、ストロンチウムなどのベータ線という種類の放射線を出す放射性物質が、1リットル当たり650ベクレルという値で検出されました。
東京電力は、通常は検出されない高い値で、漏れ出した汚染水が地下水にまで到達したおそれがあるとみてさらに調べることにしています。
今回漏れた場所から100メートル余りの海側には、汚染水が増えないように、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」という対策に使う井戸があり、汚染が広がれば見直しを迫られる可能性があります。
地下水に詳しい産業技術総合研究所の丸井敦尚総括研究主幹は「現時点で地下水バイパスの井戸からは、今回の放射性物質は検出されていないとはいえ、その上流側の地下水の汚染は、今後、地下水バイパスの対策に影響を与えかねない。汚染水が漏れた周辺で土の回収を急ぐとともに、地下水の観測を強化し、ほかのタンクについても汚染水が漏れ出さないよう、何重にも対策する必要がある」と話しています。
規制庁「東京電力は漏えい原因特定を」
汚染水が漏れたタンクの周辺の井戸水から放射性物質が検出されたことについて、原子力規制庁は「漏れた汚染水が地下水に達しているのではないかと推測していたが、それが裏付けられた格好だ。東京電力には、周辺の地下水を調べて汚染の広がる範囲を把握し、漏えいの原因を特定するよう指示しているので、しっかり対応してほしい」と話しています。
汚染水、地下水到達か 第一原発 バイパス見直しも 危機的状況深刻さ増す
東京電力は5日、福島第一原発で約300トンの汚染水が漏れた地上タンク付近で、地下水からストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり650ベクレル検出されたと発表した。「汚染水が地下水に到達した可能性がある」としている。政府が汚染水対策の柱の一つとして挙げる「地下水バイパス」のくみ上げ井戸に近く、井戸の水が汚染されれば、地下水バイパス計画の見直しを迫られる可能性がある。汚染水対策の危機的状況がさらに深刻さを増している。
タンク漏えい問題で地下水の汚染が確認されたのは初めて。
東電によると、漏えいがあった「H4」エリアのタンクから、南に15メートル離れた場所に掘った井戸で、4日に深さ約7メートルを流れる水を採取した。タンク内にあった汚染水の放射性物質濃度より井戸で検出された値が低いことから、東電は雨水などで希釈されたとみている。
「地下水バイパス」は原子炉建屋地下などに流れ込む1日400トンの地下水を抑制するため、建屋より山側で地下水をくみ上げ海に放出する計画。今回、ベータ線が検出された井戸は地下水バイパスの井戸よりも上流の山側約100メートルにあり、地下水をくみ上げる前に汚染される可能性が高い。
3日に採取したバイパスの井戸水からベータ線は検出されていないが、東電は観測用の井戸を増やして調査する。トリチウムは最大830ベクレル検出。2月に採取した450ベクレルの約2倍になっている。
漏れたタンクは「フランジ型」と呼ばれ、部材の接ぎ目をボルトで締めて組み立てる構造。同型の別のタンク表面で高い放射線量が計測されるなど、漏えいの疑いが相次いでおり、東電は今後、安全性の高い溶接型タンクを増設して汚染水を移し替える計画を立てている。
■地下水への影響しっかり確認を 県、拡散防止策求める
県原子力安全対策課は「地下水への影響をしっかりと調べてほしい。汚染水の地下水流入が確認されれば、地下水の流れを止めるなど拡散防止対策が必要。溶接型タンクへの汚染水移送も加速化させるべき」としている。
地下水バイパスの運用が困難になった場合、くみ上げた地下水の地上タンクでの保管が想定される。溶接型タンクの増設が喫緊の課題となる中、さらなる受け入れ容量の確保が求められる可能性があり、タンク増設計画が逼迫(ひっぱく)する恐れがある。県幹部は「タンク増設にも国が前面に立たないと対応し切れないのではないか」と指摘する。
政府が3日に示した基本方針には、タンク増設への国費投入など国の直接的関与は盛り込まれなかった。
東電福島広報部は「地下水に汚染水が流れ込んだことを立証するにはデータが不十分。さらに観測を続けたい」と慎重な態度を見せている。
( 2013/09/06 08:20 カテゴリー:主要 )