2011.7.1 22:20
東京電力福島第1原発事故の発生から4カ月近くがたつが、事態収束の見通しは立っていない。土壌や農水産物からの放射性物質の検出が続き、多くの人が健康被害に対する漠然とした不安を抱える中、日本学術会議(会長代行=唐木英明東大名誉教授)は1日、「放射線を正しく恐れる」をテーマに、低線量の放射線被曝(ひばく)による健康への影響や国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告などの国際基準について緊急講演会を行った。
日本学術会議は昭和24年に設立された国の特別機関。約84万人の科学者を代表する会員210人が、政府に対する政策提言や世論啓発を行っている。
緊急講演会は、放射性物質に関する情報があふれ、多くの国民の不安を解消するために開かれた。特に100ミリシーベルト以下の低線量被曝をめぐっては、発がんなどのリスクを示す科学的なデータがなく、専門家の間でも意見が分かれている。
唐木氏は「放射線に対し、正しく恐れるのではなく、恐れすぎという風潮がかなりある。放射線のリスクはどの程度のものなのか、理解していただく必要がある」と話した。
この日、講演したのは大分県立看護科学大の甲斐倫明教授(放射線保健)や日本アイソトープ協会の佐々木康人常務理事ら4人。
会場からは「子供への(放射性物質の)影響はどの程度あるのか」といった質問が出され、講演者の一人は「10歳の場合、成人に比べ2~3倍のリスク」と回答。「ICRPの国際基準には子供や妊婦への影響も盛り込まれている」などと説明していた。