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2011/06/20

「放射線量が基準以下でも、引き受けてくれる施設、地域がどの程度あるか分からない。新たに国直営の焼却場と最終処分場を建設しなければ、処理を進めるのは難しい」

東日本大震災:福島県内の汚染がれき、環境省が焼却容認 「高濃度灰」結論先送り
 環境省は19日、福島県内の放射性物質に汚染されたがれきの処理に関する安全性検討会を開き、排ガス用のフィルターと吸着装置がある既存施設で焼却を認めるなどの処理方針を正式に決めた。焼却灰については、汚染濃度が低い場合は一般廃棄物の最終処分場での埋め立て処分を認め、濃度が高い場合は放射線を遮蔽(しゃへい)して一時保管する。同省は高濃度汚染の焼却灰なども同県内での最終処分を目指す方針だが、地元の反発などを考慮し、この日は決定を先送りした。



 同省は汚染がれきを仮置き場から移動しないよう要請していたが、今回の決定で焼却などの処理再開が可能になる。同省は今後、地元自治体に方針を説明し、早ければ今月末にも処理を再開するよう要請する考えだ。

 汚染がれきは、下水処理場の汚染汚泥の処理方針を参考にした。周辺住民の被ばく線量を年10マイクロシーベルト以下に抑えることを念頭に、放射性セシウムが1キロあたり8000ベクレル以下の焼却灰は、防水対策を講じた一般廃棄物の管理型最終処分場での埋め立てを認める。ただし、跡地は居住地などへの利用は認めないとした。

 焼却時にフィルターなどに集められた灰(飛灰)や、8000ベクレルを超える焼却灰は、放射線を遮蔽できるドラム缶などで、10万ベクレルを超える灰はコンクリート壁などで遮蔽できる施設でそれぞれ一時保管する。焼却施設や焼却灰を一時保管する施設や最終処分場では、放射線量のモニタリングを徹底する。

 このほか、▽津波廃棄物(ヘドロ)やコンクリートがらなどの不燃物は一般廃棄物の最終処分場での埋め立て処分を認めたほか、金属スクラップなどのリサイクル可能な廃棄物は、原子炉等規制法で定められた「放射性物質として扱う必要がないもの(クリアランスレベル、年間0・01ミリシーベルト)」以下なら再生利用も可能などとした。

 原発事故で汚染された原発外の廃棄物の処分については、どの法律にも規定がない。このため、政府内で検討した結果、廃棄物処理法に基づいて処理することを決め、同省で方針を検討していた。同省は「最大限急いで結論を出した」と話し、今後は最終処分場の同県内への設置についても理解を求める方針だ。【江口一】

毎日新聞 2011年6月20日 東京朝刊







東日本大震災:福島県内の汚染がれき焼却容認 施設能力や地元の理解、進展に疑問の声
 東日本大震災から100日が経過して、やっと福島県沿岸部のがれきの焼却にゴーサインが出た。14日現在の県内のがれきは288万トン(環境省推計)。国の対応の遅さへの不満は根強く、焼却施設の受け入れ能力や地元の理解を得られるかなど、処理の進展に疑問の声も少なくない。

 「早く国の方針を出してほしい」。環境省幹部らが123万トンのがれきを抱えるいわき市の仮置き場などを視察した13日、市の担当者は強い口調で要望した。

 環境省は3月31日、福島県の廃棄物関連の会合で、汚染の可能性のあるがれき処理について、改めて指示すると表明。関係自治体は仮置き場への集積にとどめ、方針決定を待ったが、5月2日に同省から出た見解は「当面移動、処分を行わない」。県職員は「5月4日の市町村向けの説明会では『またしても、とりあえず止めておけというのか』と不満が相次いだ」と話す。

 佐藤雄平知事は最終処分場の県内建設を拒否しており、焼却が可能になっても課題は山積している。南相馬市の場合64万トン。同市内の施設だけでは焼却に7、8年かかる可能性もあるという。

 同市環境衛生課の担当者は「放射線量が基準以下でも、引き受けてくれる施設、地域がどの程度あるか分からない。新たに国直営の焼却場と最終処分場を建設しなければ、処理を進めるのは難しい」と頭を抱える。【大場あい】

毎日新聞 2011年6月20日 東京朝刊