東電の工程表は4月に発表され、今回の改訂は、先月17日に続くもの。
この2か月で、高濃度汚染水の処理システムが本格稼働にこぎつけ、1か月後のステップ1完了に向けて前進したほか、使用済み核燃料一時貯蔵プールを安定的に冷やす循環冷却装置は2号機で前倒しで稼働できた。一方で、水素爆発を防ぐための格納容器への窒素注入が2、3号機で着手できていないなど、進捗(しんちょく)状況は工程ごとにばらつきがある。
工程表には、新たな課題として、作業員の放射線被曝(ひばく)管理と医療体制の強化が盛り込まれた。原発敷地内に診療所を新設するほか、内部被曝量の検査装置「ホールボディーカウンター」を10月までに10台増設する。
また、汚染水の処理に伴って、高濃度の放射性物質を含むスラッジ(汚泥)の発生も新たな問題となってきた。工程表では、来月以降の「ステップ2」に、スラッジが周辺環境に拡散しないように安定的に保管・管理することなどを記載した。また、敷地外への地下水汚染の拡散を防ぐため、地下の遮蔽壁の設置について具体的な検討を始める。
(2011年6月18日01時25分 読売新聞)
汚泥や被ばく対策を追加 原発工程表、2度目の改訂
2011年6月18日 02時05分
福島第1原発の事故で政府と東京電力は17日、事故収束に向けた道筋をまとめた工程表の改訂版を発表した。4月の最初の発表から2カ月で2度目の改訂。汚染水の浄化で生じる高濃度汚泥の管理・処分や作業員の被ばく対策など新たに浮上した重要課題への対応を追加した。来年1月中旬までに原子炉が安定的に冷える「冷温停止」状態にする当初の目標は維持した。
東電はおおむね順調に事故処理作業が進んでいるとの見方。格納容器を水で満たして原子炉を冷やす「水棺」作業を断念した5月の改訂と比べ、見直しは小幅にとどまった。
原子炉の冷却では、今後1カ月で、浄化した汚染水を原子炉の冷却水として再利用する。使用済み燃料の冷却には、今後1カ月で、プールに熱交換器を取り付けるなど循環冷却により、全機で安定冷却を達成するめどがついたとしている。
項目としては、高濃度汚泥や被ばく対策が追加された。
汚泥は高濃度汚染水の浄化プラントを動かした際に2千立方メートルが生じる見込み。既存の地下タンクなどで仮保管するが、中長期の保管や最終処分の方法は未定。経済産業省原子力安全・保安院は技術開発とともに法的な安全規制を検討する方針を示した。
汚染水対策では、8月をめどに浄化プラントを増強するほか、浄化後の水を保管するタンクを当面、1カ月に2万トン分のペースで増設する。汚染水が地下水に漏れるのを防ぐ遮水壁の具体的な検討も前倒しで進める。
作業員の大量被ばくが発覚したり、熱中症で倒れる作業員が相次いだりしたことを受けて、その対策も加わった。
体内に取り込んだ放射性物質を検査する機器を増設するほか、原発内に診療所を新設し、医師も増員して被ばく管理や熱中症対策を充実させる。
<工程表> 福島第1原発事故の収束に向けた東京電力の計画。燃料の冷却や放射性物質の放出抑制などの対策を盛り込み4月17日に公表。その後の状況を踏まえ1カ月ごとに見直すとした。燃料冷却では10月~来年1月までに1~3号機の原子炉内部を安定的な冷温停止状態にすることを目指している。当初は燃料を原子炉圧力容器ごと冷やすことを計画していたが、原子炉からの水漏れが判明するなどして断念。5月の見直し時に、汚染水を浄化して冷却に再利用する「循環注水冷却」を盛り込んだ。
(中日新聞)
東京電力プレスリリース