福島第一原発1号機で圧力容器や格納容器にほとんど水が溜まっていないことがJNNの取材で分かりました。燃料の大部分が溶け落ちた可能性が高く、冷却方法の抜本的な見直しは避けられない事態です。
「我々が思っている所よりも下の位置にしか水がない」(東電 福島事務所の会見)
福島第一原発で、また、「想定外」の事実が明らかになりました。毎日、大量の水を入れていた1号機の原子炉・圧力容器にほとんど水が溜まっていなかったのです。
11日、圧力容器の水位計を修理したところ、これまで示していた数値を大幅に下回り、水位は、通常、燃料の先端がある位置から5メートル以下と推定されるということです。燃料棒の長さはおよそ4メートル。つまり、本来、燃料棒がある位置に全く水がないということになります。
「あるべき場所に水がない」という事実。これは何を意味するのでしょうか。
「燃料棒が溶けて下に崩れる形で、そこに水がかかっている、あるいは蒸気で冷やされている状態」(東京電力の会見)
大部分の燃料が溶け落ちて圧力容器の底にたまっている可能性が高いというのです。ただ、温度は100度前後で安定していることから、わずかな水で冷やされていると説明しています。水がたまらない理由について専門家はこう指摘します。
「溶接部分などは厚さがないので、(溶けた燃料で)原子炉圧力容器に貫通部ができて、そこから水が漏れている可能性はある」(九州大学 工藤和彦 特任教授)
溶けた高温の燃料が圧力容器の底に穴を開けた可能性。水だけでなく燃料が漏れた可能性について原子力安全・保安院は・・・
「高温でさらされれば、(底が)抜ける可能性はある。穴から(燃料が)落ちることは無いとは言えないが、あることを示すデータもない」(原子力安全・保安院の会見)
いまだに、つかめない原子炉の状況。さらに、ある政府関係者はこう指摘しました。
「実は、格納容器にも思っていたほど水が溜まっていない」(政府関係者)
1号機では現在、安定的な冷却に向け、格納容器を水で満たす「冠水」を目指して連日大量の水を入れています。
しかし、その水も、ほとんど溜まっていないといいます。東京電力は「水位は分からない」としながらも、格納容器から漏れがある可能性が高いことを認めました。
「格納容器の水位も分からないとなると、『冠水』も見直しの検討が必要と考えている」(東京電力の会見)
進み出したばかりの「冠水」作業。その目標を見直すことになれば、すでに示された「工程表」にも大きな影響が出ることは避けられません。
「1号機の『冠水』については、すでに遅れが生じているし、簡単にスケジュール通り進むとは考えにくい」(九州大学 工藤和彦 特任教授)
(12日17:00)
2011/05/12
高温でさらされれば、(底が)抜ける可能性はある。穴から(燃料が)落ちることは無いとは言えないが、あることを示すデータもない
燃料の大半溶融か、冷却方法見直しへ