2011年5月11日15時0分
東京電力福島第一原発から海へ流出した高濃度の汚染水に含まれる放射性物質は、ほぼすべてが外洋に拡散してしまった可能性が高いとの見方を、経済産業省原子力安全・保安院の関係者が明らかにした。東電は流出を食い止めた5~8日後に、拡散を抑えるため海に仕切りを設置したが、すでに大部分が外洋に出た後だったとみられる。
2号機取水口付近では4月2日朝、コンクリートの裂け目から、放射性物質を高濃度に含む汚染水が海に勢いよく流れ出しているのが見つかった。止水剤を注入するなどした結果、流出は6日に止まった。
東電は発見前日の1日から止水した6日までに、計520トンが流出したと推計した。含まれる放射能量は約4700兆ベクレルで、国の基準で定められた年間放出量の2万倍に相当する。
東電は止水後の同月11~14日、「シルトフェンス」と呼ばれるカーテン状の仕切りを、1~4号機の取水口付近など計6カ所に設置した。付近の海にたまっている放射性物質を囲い込み、沖に広がるのを防ぐためだ。同月4日ごろから設置の検討を始め、実際の作業は悪天候で1日遅れた。
だが、保安院によると、シルトフェンス内に今もとどまる放射能量は流出全量のごく一部。海水の量や定期的に測定されている濃度から計算すると、最も多く見積もっても100兆ベクレル程度という。保安院関係者は「全体の流出量のほとんどが外洋へ拡散しきってしまったのだろう」と話す。
大半が流出してしまった原因について、保安院関係者は、フェンスの設置時期が遅すぎたためとみる。2号機取水口付近の海での放射能濃度の推移を見ると、例えばセシウム134と137の場合、止水直後の4月7日は1立方センチあたり1500ベクレル程度だったが、シルトフェンス設置終了の14日の時点で、濃度は数十分の1の50ベクレルほどに下がっていた。
シルトフェンスは、海上の浮きから海底近くまでをポリエステルの幕で仕切るもので、通常は、土木工事で発生する泥水の拡散を防ぐために使われる。東電は、海水の拡散を完全に遮断はできないが、「ある程度の効果は期待できる」などと説明してきた。
一部とはいえ、まだ放射性物質がシルトフェンス内に残っているため、東電は、海水を循環させながら放射性物質を濾過(ろか)するシステムを5月中に導入することにしている。(小宮山亮磨)