2011年03月16日 12:26 発信地:香港
【3月16日 AFP】 東北地方太平洋沖地震に続く福島第1原発事故を受け、放射能による人体への悪影響を抑えるヨード剤の売れ行きが世界各地で急増しているが、専門家らはヨード剤の効果は限られているとし、焦って購入することに注意を呼び掛けている。
米国では製薬各社のヨード剤(ヨウ化カリウム)の在庫が完全に切れ、特に太平洋を挟んで日本の対岸にあたる西海岸の薬局には、処方箋なしで購入できる薬を求める人が殺到した。ヨウ化カリウムのインターネット販売業NukePills.comでは「日本の原発危機のせいで注文が殺到し、出荷には1週間以上の遅れが見込まれている」と言う。もうひとつの米ヨード剤製造販売会社アンベックス(Anbex)でも在庫を切らし、次の入荷は4月中旬までないと言う。
■WHO「ヨード剤は妊婦には危険」
インターネット競売のイーベイ(eBay)ではヨード剤14錠入り1パックが540ドル(約4万3000円)の高値をつけ、ツイッター(Twitter)などのオンライン・コミュニティでは放射能汚染に関する熱狂的な議論が行われる中、世界保健機関(World Health Organization、WHO)は冷静を呼び掛ける声明を発表した。
ヨウ化カリウムは塩類の一種。甲状腺を飽和状態にして、原子炉事故で漏れる放射能に含まれる強い発がん物質、放射性ヨードが甲状腺に取り込まれるのを阻止する効果がある。
しかし、WHOはツイッターで「ヨウ化カリウムは服用前に医師と相談すること。独断で服用してはならない」と警告を発した。WHOによると、ヨード剤は「放射能の解毒剤ではなく」、セシウムなどの放射性元素に対する防御効果もない。しかも、妊婦など特定の人にはかえって健康リスクとなると強調している。
また通常、病院か処方箋をもって薬局へ行かなければヨード錠剤を入手できないアジア各国では、代わりにヨード入り消毒剤の売れ行きがやはり急増しているが、WHOはヨード液の飲用や塗布にも警告を発している。
■チェーンメールで消毒液が在庫切れ
マレーシアの首都クアラルンプール( Kuala Lumpur)の薬剤師ポール・ホー(Paul Ho)氏は、「メールなどで、ヨード系の消毒液が放射能吸収を抑えるというメッセージが出回っている」と懸念する。そうした予防は全く効果がないが「ヨード系の消毒液も在庫が尽きている」と言う。
同様のメールやテキストメッセージは、中国や香港、フィリピンでも流布しており、英BBCが番組で「首の甲状腺の辺りをヨード系消毒液で拭くと良い」と取り上げたといったデマまで流れている。BBCはそのような内容は取り上げていないと否定。「この噂が特にフィリピンでパニックを引き起こしている」とウェブサイトで説明している。
マレーシアのリョウ・ティオンライ(Liow Tiong Lai)保健相も、「そうした消毒液を首の周りに塗る必要などない。国民はパニックになってはいけない。状況は保健省が非常に注意深く見守っている」と強調した。
フィリピンのエンリケ・オナ(Enrique Ona)保健相も、焦ってヨード剤を入手する必要は全くないとする声明を出し、「フィリピン政府は今、その必要があるとは考えていない。必要であれば、どこを通じて入手すればよいか分かっているが、今のところ注文するつもりもない」と明言した。
■「メルトダウンの場合はアジア全域に一定の影響」
中国の政府機関、香港天文台(Hong Kong Observatory)も中国領内の放射線レベルは「通常。香港にも放射能が影響するという噂には根拠がない」と強調している。
香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)の生物医学者スティーブン・ツィー(Stephen Tsui)氏は、日本国外の放射能汚染リスクは「低い」が、福島の原発が完全にメルトダウン(全炉心溶融)した場合には「アジアのすべての国に一定の影響はある」と述べている。(c)AFP/Amy Coopes
WHO、「ヨードカリウムは放射能汚染抑制剤ではない」
2011-03-16 15:22:28
WHO・世界保健機関は15日、「ヨードカリウムは放射能汚染の抑制剤ではなく、全ての人に適用するわけではない。つまり、公共衛生機関の明確な指導の下に服用できる」と強調しました。
WHOのサイトはこの日、巨大地震によって被災した日本の原子力発電所の事故をめぐる健康情報を発表し、その中で「ヨードカリウムは外部からの放射能汚染を防ぐことは出来ず、放射性ヨード以外の放射性物質による傷害を予防できない」としています。
関係者は「放射能を浴びる直前と直後にヨードカリウムを服用すると、それは甲状腺を飽和状態にし、放射性ヨード131の吸収を減らすことができるため、ガンにかかる可能性は小さくなるが、その服用に関しては慎重になる必要がある。たとえば、腎不全の場合、それを服用すれ病気になったりし、妊婦の場合は胎児の甲状腺機能などに傷害をもたらす。したがって必要な場合は、必ず公共衛生機関の指導に基づき服用すべきで、勝手に服用しないことだ」と紹介しています。(翻訳:董燕華)