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2011/03/24

「電子時計」、福島県大鷹鳥谷山の送信所が避難指示の対象区となり停波

東日本大震災:「電波時計」に誤差 避難対象で停波


 時刻合わせをしなくても正確な時を刻む「電波時計」が、東日本大震災の影響を受けて一部の地域で誤差が出ている。時計に時刻などの情報を届ける「標準電波」送信所が、東京電力福島第1原発事故の避難指示の対象区となり、無人化して運用できなくなっているからだ。

 電波時計は、日付や時刻などのデータを含む標準電波を1日に数回、自動的に受信して補正することで正確さを保っている。標準電波の時刻データは「10万年に1秒の誤差」という原子時計に基づき、福島県の大鷹鳥谷山(おおたかどややま)と、福岡・佐賀県境の羽金山(はがねやま)の2カ所から発信されている。約1000キロの範囲内ならば安定的に受信でき、二つの送信所で全国を網羅していた。

 運用する情報通信研究機構(東京)によると、このうち大鷹鳥谷山は福島第1原発から約17キロにあり、12日に起きた1号機の水素爆発後に20キロ圏内に出された避難指示で、職員全員が避難した。高電圧の設備もあり無人では運用できないため、同日午後8時前に停波した。

 標準電波を受信できない場合、電波時計はクオーツ時計として動く。平均で1カ月あたり15秒程度の誤差があり、停波後は数日に1秒ずつずれが生じている可能性がある。

 同機構や時計メーカー各社には、利用者から「時計が補正されない」などの問い合わせが毎日数件から数十件寄せられている。だが、同機構は「復旧の見込みは立っていない」としている。【瀬上順敬】

毎日新聞 2011年3月24日 11時23分(最終更新 3月24日 11時28分)









電波時計にズレ、福島の送信所停波で
関東より北は電波が弱い、古い機種だと電波がない
2011/4/1 7:00
 一部の電波時計が正確な時刻を表示しなくなっている。東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、日本の標準時刻を伝えるための施設「おおたかどや山標準電波送信所」が2011年3月12日に電波の送出を停止したためだ。

 図1は東京都内のビル窓際に置いた電波時計。電波を受信するために必要な時間を十分に置いたもの。左端と中央の時計は秒単位まで正確な時刻を表示しているが、右端の古い時計は50秒ほど進んだ時刻を表示している。


 国内で販売されている電波時計は、情報通信研究機構が運用・送信している「標準電波(JJY)」を受信して時刻を正確に合わせる仕組みになっている。


 国内の標準電波は2つあり、福島県の「おおたかどや山」から送信される40kHzの電波と、佐賀と福岡の県境付近にある「はがね山」から送信される60kHzの電波。現在入手できる電波時計のほとんどは、40kHz/60kHzの両波から受信しやすい方を自動的に選択して受信する(図2)。

 しかし、古い機種だと40kHzの電波しか受信できないものがある。


 それは、おおたかどや山(40kHz)の電波は1999年6月に送信を開始したのに対して、はがね山(60kHz)の電波は2年以上後の、2001年10月に送信を開始したためだ。しかも、標準電波が正式運用される前に、「実験局(JG2AS)」として運用されていた期間もあり、実験局時代から電波時計は市販されていた。


 そうした古い機種が対応しているのは、おおたかどや山(40kHz)の電波だけで、はがね山(60kHz)の電波は受信できない。受信できない状態ではクオーツ(水晶)時計の精度になり、どうしても遅れや進みが生じる。

 送信所の場所の問題もある。おおたかどや山の電波は、北海道から九州東部辺りまでカバーしていたのに対して、はがね山は沖縄から関東辺りまでが事実上のカバーエリアとなっている。おおたかどや山が停波したので、たとえ新しい機種であっても、東北地方や北海道では電波時計の時刻が合いにくくなっている。「はがね山の電波で時刻が合わせられる北限はおおむね福島県辺りまで」(電波時計を販売しているマルマンプロダクツ)という。情報通信研究機構も「電波自体は北海道でもはがね山から届いているが、電波時計が受信できるほど強くない」としている。

 電波時計の時刻が正確でなくなっている場合、その機種が40kHz/60kHzの両波対応ならば、「パソコン、エアコン、蛍光灯、テレビなど雑音(ノイズ)を発生するものからは遠ざけ、建物の窓際などに置くようにしてください。方向は、できるだけ九州へ向けてください」(情報通信研究機構)としている。おおたかどや山(40kHz)の電波しか受信できない機種の場合は「クオーツ(水晶)の精度で、動作いたします。時刻合わせは、取扱説明書等を参照願います」(同)としている。


 現在、停波しているおおたかどや山は事故のあった原子力発電所からの距離が約17kmと、避難指示を受けた20km圏内に位置するため、電波を止めて職員が避難している(図3)。原発事故の先行きが不透明なため、再開のめどは立っていない。「内部的には色々な対策や、おおたかどや山の代替案も検討してはいるが、公表できる状態ではない」(情報通信研究機構)としている。

(日経パソコン 森本篤徳)


[PC Online 2011年3月31日掲載]











福島県大鷹鳥谷山送信所