菅首相の伸子夫人、講演で大胆な意見を披露
常に着物を愛用し、穏やかに振る舞う姿とは裏腹に、菅伸子さんは言葉を慎重に選ぶ慎み深い女性とは程遠い存在である。特に、夫の菅直人首相に対しては率直に意見することで知られている。
伸子夫人は12日午後、日本外国特派員協会で講演し、菅首相を支えることに関して「本人は『国会も嫌だけど、あなたとけんかするよりはましかもしれない』と言って国会に出掛けるから、それがサポートかも」と語った。
伸子夫人(65)は歴代の首相夫人とは異なり、公的な場で率直に夫の批判をすることをいとわない。夫人は菅直人氏が昨年6月に首相に就任した1カ月後に、著書『あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの』を出版。夫の首相としての能力を問うことで一躍脚光を浴びた。
日本のメディアは当時、菅首相がその内容を恐れて未読、という報道をしている。伸子夫人はこの本の中で、夫の欠点を挙げるとともに、首相公邸に引っ越す際には夏物の服しか持参しなかったことを告白した。夫がどのくらい総理の座にいられるか分からなかったから、というのがその理由だそうだ。
ただ、伸子夫人の歯に衣着せぬ発言は今のところ、前首相夫人の鳩山幸さんの微笑ましい発言ほど関心を集めていない。幸さんは首相夫人当時、金星に行ったとか、前世でトム・クルーズに会ったなどいった発言をして話題になった。
深紫の着物に身を包んだ菅首相夫人は日本外国特派員協会の講演で、「私は叱咤(しった)激励ではなく『叱咤叱咤』が多くて、手加減もしないといけないのかなということはございますが……」と述べて、会場を沸かせた。
40年に及ぶ首相夫妻の結婚生活といえば、夫人が事あるごとに首相に対して厳しい叱責を浴びせたことで有名である。例えば、菅氏の不倫疑惑が1998年に発覚した際、夫人は「脇が甘い!」と夫を一喝した。
しかし、菅首相夫人が政界における夫の成功に貢献してきたのも事実だ。1996年当時、草の根運動の元活動家だった菅氏に対して厚生大臣になるよう説得したのは伸子夫人である。また、薬害エイズ事件における政府の役割について、厚生大臣の夫に調査をするよう促したのも伸子夫人である。同事件では、血友病患者に対して汚染血液製剤が投与された結果、多くのHIV感染者を生み出したことが明らかになった。この事件の解明によって、菅氏は国内で名声を高めることになる。
菅首相夫妻はいとこの関係にあり、夫人が東京の大学に通うために菅氏の実家に住むようになったのがきっかけで親しくなったという。夫妻の間には二人の息子がいる。
菅首相は現在、近年の前任者たちを辞任に追い込んだ厳しい状況――低迷する支持率や敵対する野党との国会運営――に直面しているが、伸子夫人は、批判だけで菅氏を辞任に追い込むことはできないと考えている。
夫人は、「混迷の時代から抜け出すためにできることをやって『玉砕』するのはいいが、いじめのような批判をされ、支持率が悪いから辞めるというのはあってほしくない」と語った。
夫人はまた、日本経済の低迷、財政赤字の拡大、労働力の縮小といった問題は必ずしも菅首相の責任ではないと指摘。会場に詰め掛けた参加者に対しては、今の日本を苦しめている問題は20年前から指摘されていたもので、日本はそれを解決することに失敗したのだとして、元与党の自由民主党を暗に非難した。
伸子夫人は、生まれ変わったら、再び首相と結婚したいかという質問に対して、「もう一回、同じことをしても面白くないから結婚はしない」と躊躇することなく答えた。