ページ

2011/01/13

【目黒老夫婦殺傷事件】 元社長の竹上八郎さん(88)は「まじめで決して恨みを買うような人ではない。当時の業績は右肩上がりで社内に大きな不満もなく、狙われる理由が全く理解できない」と話した

「尊敬できる友人」 60年来の友人が語る被害者の横顔
2011.1.12 00:11




 「尊敬できる友人。60年来の付き合いだった…」。大原道夫さん夫妻が殺傷された事件から一夜明け、現場には大原さんのかつての勤務先の同僚らが訪れ、人柄をしのんだ。

 報道で事件を知り、現場に駆けつけた大久保喜平さん(86)=川崎市=は大原さんと同期入社。大原さんを「職場では黙々と仕事に取り組んでいた」と振り返った。「社宅も一緒で子供も同学年。家族ぐるみの付き合いだった」

 会社関係者らによると、大原さんは東京大学を卒業後、昭和26年に大手製紙会社に入社。53年に流通部門を扱う関連会社に出向してから役員などを歴任し、61年に退職した。一貫して人事畑を歩んだという。

 大久保さんが大原さんと最後に会ったのは昨年のことだ。中目黒ですしを食べ、世間話を楽しんだ。「読書が趣味の勉強家。人に恨まれるような人間じゃない。今日は1人でお参りに来た」。大久保さんは悲しげに現場を見つめた。

 引退後は庭木の手入れに精を出し、妻と静かに暮らしていた大原さん。近所の住民は「気さくで明るい人。突然、ひどいやり方で襲った犯人を絶対に許せない」と声を震わせた。






目黒夫婦殺傷:断たれた静かな余生 会社OBら冥福祈る
 東京都目黒区上目黒3の無職、大原道夫さん(87)夫妻が自宅で男に襲われた事件。亡くなった大原さんは約40年間のサラリーマン人生を実直に勤め上げ、軽傷を負った妻瑠璃子(るりこ)さん(81)を気遣いながら静かな余生を送っていた。12日に千代田区で開かれた元勤務先の製紙会社のOB会には同僚約30人が集まり、突然人生を途切れさせられた大原さんの冥福を祈った。

 大原さんは1951年に東京大を卒業し、製紙会社に入社。関連会社の支店長や役員を務めて86年に退任した。

 OB会に参加した元社長の竹上八郎さん(88)は「まじめで決して恨みを買うような人ではない。当時の業績は右肩上がりで社内に大きな不満もなく、狙われる理由が全く理解できない」と話した。大原さんの部下だった内山康司さん(75)も「3年前に一緒に趣味のゴルフをした時の笑顔が忘れられない」としのんだ。

 OB会には参加しなかったが、事件翌日に大原さん方を訪れた同期入社の川崎市高津区、大久保喜平さん(86)は「人事畑が長く、おとなしい人柄に自然と部下が付いていくタイプだった」と振り返る。

 近所でも、夫妻は温厚な性格で知られていたという。約40年前に2階建ての自宅を建て、長女(55)と医師の長男(51)が自立した後は夫婦2人で生活していた。生い茂る庭木は、大原さんがいつも剪定(せんてい)道具を使って丁寧に手入れしている姿を多くの人が見ていた。事件では、自宅にあった鎌を犯人が使った可能性もある。

 近くに住む自営業の女性(69)によると、瑠璃子さんは数年前から体調を崩していたといい、「奥さんの代わりにスーパーで買い物をしたり、家事をこなす優しい人だった」と話す。事件当日の10日朝も、大原さんが台所で料理する姿をガラス越しに近所の男性が見ていたという。【山本太一、内橋寿明、小泉大士】

毎日新聞 2011年1月13日 11時12分(最終更新 1月13日 12時24分)