2010/12/04
韓国、交戦規則の見直し、戦力の再配備、、軍組織と危機管理体制の立て直し
韓国・新国防相、世論配慮で微妙なかじ取り 対北朝鮮「挑発には空爆」、戦闘拡大は否定的
2010/12/4付 4:00 日経
【ソウル=山口真典】韓国国防相に内定した金寛鎮(キム・グァンジン)氏(61)は3日、北朝鮮による延坪島(ヨンピョンド)砲撃をうけた対応について基本方針を明らかにした。追加挑発に「航空機で爆撃する」など断固反撃する姿勢を示す一方、戦闘拡大には否定的な見方を強調。北朝鮮に怒りを募らせつつも武力衝突の激化を懸念する国内世論をにらみ微妙なかじ取りに腐心する韓国政府の姿も浮き彫りにした。
金氏は延坪島砲撃などで引責辞任する金泰栄(キム・テヨン)国防相の後任に指名され、4日にも就任する見通しで、国会の人事聴聞会に出席して語った。就任前ではあるが、砲撃への対応に批判も出ていることを踏まえ、戦力の再配備や、軍組織と危機管理体制の立て直しへ事実上の「所信表明」をした形だ。
北朝鮮がなお攻撃態勢を緩めていない現状には「朝鮮戦争以来最も深刻な安全保障の危機的な状況」との認識を示した。そのうえで、北朝鮮がさらなる軍事的挑発に出た場合の対応は「敵の脅威を完全に断ち切るまで十分に反撃する」「戦闘機や艦艇など支援戦力も投入し追加打撃を加える」などと説明した。
韓国国防省は延坪島砲撃への反撃が不十分だったという批判を受け、交戦規則の見直しに着手。敵の攻撃と「同種同量」の兵器で対抗する従来の考え方から「民間被害が出た場合は相応以上の反撃」に出ることとする方向で調整している。金氏は同規則改正を早期に実現する意向を表明した。
だが、今後の北朝鮮の出方と事態の推移に関しては「北朝鮮も全面戦争に出るのは困難な状況で、戦闘は広がりにくい」と指摘した。「米韓は情報を共有しながら精密に全面戦争の兆候を監視しており、信頼できる抑制手段や方法を有する」とも力説し、再攻撃をけん制しつつ慎重に対応する姿勢を打ち出した。韓国軍の反撃が必ずしも戦闘拡大を意味しないとも主張した。
北朝鮮が全面戦争を避ける理由では「経済事情や権力継承問題など不安要素がある」と分析。具体的な挑発行為としては延坪島などへの再砲撃や韓国艦艇への攻撃、軍事境界線近くの反北朝鮮放送用拡声器の銃撃などを想定していると明かした。
金寛鎮(キム・グァンジン)氏 1971年陸軍士官学校卒。2004年合同参謀本部作戦本部長、05年3軍司令官、06~08年合同参謀本部議長。約40年間の軍生活では野戦部隊や戦略・政策部門が長い。全羅北道の全州(チョンジュ)生まれ。61歳。