靖国参拝「米政府は失望」
12月26日 16時44分安倍総理大臣が靖国神社に参拝したことについて東京のアメリカ大使館は声明を発表し、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を高めるような行動をとったことにアメリカ政府は失望している」として、深い懸念を表明しました。
そのうえで「日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を達成するため協力を推進することを希望する」として、日本と近隣諸国が関係改善に向けて取り組むことを求めました。
アメリカ政府としては、歴史認識を巡る対立が原因で同盟国の日本と近隣諸国との間の緊張が高まることは望まず、アメリカの国益にならないという立場です。
ことし10月に日米の外務・防衛の閣僚協議が東京で行われた際には、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官がそろって、千鳥ヶ淵の戦没者墓苑を訪れ、花をささげました。
アメリカで、戦没者を埋葬するアーリントン国立墓地に当たる日本の施設は、千鳥ヶ淵の戦没者墓苑だと位置づけることで、安倍総理大臣に靖国神社への参拝を自粛するよう求めるメッセージを送るねらいがあったものとみられます。
特にアメリカとしては、中国が、東シナ海の広い範囲に防空識別圏を設定し、一段と強硬な姿勢を示したり、チャン・ソンテク前国防委員会副委員長が粛清されたあと、北朝鮮が軍事的な挑発行為に出るのではないかという懸念が高まったりするなか、アメリカと同盟国の日本、韓国の3か国の関係強化が急務だとしています。
アメリカ政府はこれまでも、関係の改善を双方に促してきただけに、安倍総理大臣がこの時期に靖国神社に参拝したことを深く憂慮しており、中韓両国の反応を注視しています。
アメリカ大使館 声明文
Statement on Prime Minister Abe's December 26 Visit to Yasukuni Shrine
December 26, 2013
Japan is a valued ally and friend. Nevertheless, the United States is disappointed that Japan's leadership has taken an action that will exacerbate tensions with Japan's neighbors.
The United States hopes that both Japan and its neighbors will find constructive ways to deal with sensitive issues from the past, to improve their relations, and to promote cooperation in advancing our shared goals of regional peace and stability.
We take note of the Prime Minister’s expression of remorse for the past and his reaffirmation of Japan's commitment to peace.
安倍首相の靖国神社参拝(12月26日)についての声明
*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
2013年12月26日
日本は大切な同盟国であり、友好国である。しかしながら、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。
米国は、日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する。
米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する。
FNN
安倍首相靖国参拝 アメリカ側は事前に「日米関係害する」と反対
安倍首相は、政権発足から1年を迎えた26日、東京・九段北の靖国神社を参拝する。11月、衛藤首相補佐官が、協議のためにアメリカを訪問した際に、参拝すれば「日米関係を害するだろう」などと、強く反対されていたことが、FNNの取材で明らかになった。
衛藤首相補佐官は、靖国参拝をめぐる意見交換のため、11月中旬に訪米し、ラッセル国務次官補など、アメリカの要人らと面会した。
この際、アメリカ側から、「オバマ大統領が理解を示すことはない」、「日本の評判を落とし、日本のアジアにおける影響力低下を招く」などと、厳しく反対されたという。
また、日韓関係のさらなる悪化への懸念のほか、中国に対しては、日本側が緊張をあおっていると主張するための口実を与えることになるため、結果的に、中国の立場を有利にするといった声も上がった。
TPP(環太平洋経済連携協定)や日米ガイドラインの見直しなど、重要課題を抱える日本が、アメリカの反対を押し切った形で参拝したことで、日米関係への影響が懸念される。
(12/26 12:00)
テレ朝
米に“参拝”事前通知せず 「失望」批判は想定外か(12/26 17:39)
今回の安倍総理大臣の靖国参拝について、アメリカ政府は「失望している」と厳しいコメントを表明していますが、この反応について官邸サイドはどう受け止めているのでしょうか。
(政治部・足立直紀記者報告)
アメリカ政府は、「disappointed」=「失望した」と、日本に対して、これまで使ったことのないような厳しい表現で安倍総理を批判しています。安倍総理は参拝にあたって、談話の英語バージョンまで用意して、「参拝は戦犯を崇拝するものではない」などとアピールしました。しかし、その一方で、中国・韓国だけでなく、アメリカにさえも参拝の事前連絡をしていませんでした。参拝直前、ある外務省幹部は、「日米関係には影響ないだろう。総理談話を説明すれば理解されると思う」と語り、アメリカの批判を甘く見ていた節があります。オバマ大統領もケネディ大使も離れていきかねない状況に、安倍総理も「誤解を解きたい」と懸命です。
安倍総理大臣:「この機にしっかり説明していく。しっかりと説明していくことによって誤解を解いていきたい」
(Q.靖国参拝について、与党内の反応は?)
公明党の山口代表に安倍総理は、参拝に出発する直前にようやく電話で参拝することを伝えました。「自分の決断として参拝する」と語る安倍総理に、山口代表は「賛同できない」と反対したものの、振り切って参拝する形となりました。山口代表は、「参拝で引き起こす問題は総理自身が修復する責任がある」と、珍しく怒り交じりに感想を語りました。安倍総理は、年明けには集団的自衛権の行使容認というさらなる「安倍カラー」政策を打ち出す考えです。それを前に、中国・韓国との溝が一層、広がったばかりでなく、アメリカとの距離感も広がり、さらには与党内の懸念までもが広がっています。
※参拝の事前連絡について
産経新聞は「日本政府は米国に対し事前に外交ルートを通じて首相の参拝を連絡した。中国へも知らせたが、韓国には伝えなかった。」と報じた。
安倍晋三首相は政権発足から1年となる26日、東京・九段北の靖国神社に参拝した。首相による靖国参拝は平成18年8月15日の小泉純一郎首相以来、7年4カ月ぶり。首相は第1次政権時代の不参拝について、かねて「痛恨の極み」と表明しており、再登板後は国際情勢などを慎重に見極めながら参拝のタイミングを探っていた。日本政府は米国に対し事前に外交ルートを通じて首相の参拝を連絡した。中国へも知らせたが、韓国には伝えなかった。