【防空識別圏】JAL,ANAが中国当局への飛行計画提出を中止
日本の航空各社、中国防空識別圏設定で飛行計画の提出中止
2013年 11月 27日 04:50 JST
[東京 27日 ロイター] -中国が尖閣諸島(中国名・釣魚島)上空周辺を含む東シナ海に防空識別圏を設定した問題をめぐり、ANAホールディングス(9202.T: 株価, ニュース, レポート)と日本航空(JAL)(9201.T: 株価, ニュース, レポート)の航空大手2社は、中国当局への飛行計画提出を27日から取り止めると明らかにした。
日本政府は航空各社に飛行計画を提出しないよう求めており、政府の要請に応じた格好。
中国は航空各社に対し、飛行計画を提出しなければ軍用機の妨害を受ける恐れがあると迫ることで、防空識別圏における中国の支配権を事実上認識させることを狙っている。
民間機に影響なし=防空識別圏で中国
【北京時事】中国外務省の秦剛報道局長は25日の記者会見で、中国が東シナ海に設定した防空識別圏に関連し、「外国の民間航空機が識別圏内を飛行する自由はいかなる影響も受けない。識別圏は正常に飛行する国際民間航空を対象としたものではない」と主張した。
中国は今回の防空識別圏設定に当たり、国防省の指令に従わない航空機には武力で防御的な緊急措置を取ると警告している。(2013/11/25-20:24)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013112500815
中国への飛行計画提出で混乱 国交相がJAL・ANAに「待った」
2013/11/26 20:06
中国が沖縄県の尖閣諸島を含む空域を「防空識別圏(ADIZ)」に設定している問題で、日本の航空会社が振り回されている。
日本航空(JAL)と全日空(ANA)は国際的な慣例に従って、防空識別圏に含まれそうな路線の飛行計画(フライトプラン)を中国当局に提出を始めたが、国土交通省から「待った」がかかったのだ。
中国航空当局が「ノータム」で防空識別圏設定知らせてきた
両社が飛行計画の提出を始めた根拠として挙げるのが、各国の航空当局が出す「ノータム」(NOTAM、航空情報)だ。ノータムは軍事演習などで空域制限が設けられる時や、滑走路が閉鎖されて運航に影響が出る場合などに出される。最近の有名な事例では、東京電力福島第1原発周辺の飛行禁止措置が、このノータムを通じて出された。
中国の航空当局は2013年11月23日正午頃、防空識別圏の設定を知らせるノータムを出した。両社はこれに従う形で、飛行計画を中国当局に提出している。
日本と台湾、香港を結ぶ路線が新たな防空識別圏に含まれる可能性がある。天候によって飛行コースが変わるため一概には言えないものの、場合によっては東南アジア行きも含まれるという。ただ、両社とも「遅延、支障など安全運航にはまったく影響はない」と強調しており、ノータムに従って飛行計画を出すのが当然だとの立場だ。
「ノータムが発出された以上、それに従わざるをえないと考えている。防空識別圏に関しては各国が独自に設定しており、運航者としては、公示されればそれに従った運航とせざるを得ない。通常の各国のノータムと同様、運航者の判断で対応することとしている」(JAL広報部)
「各国の航空当局が出すノータムは、日本に限らず全世界の航空会社が対象で、それに従うのが国際的なルール」(ANA広報室)
だが、政府の立場は、両社と相容れない部分があるようだ。太田昭宏国交相は2013年11月26日朝の会見で、
「これまでのルール通りの運用を行っていく旨を中国政府に通告するとともに、本邦航空会社に対しては、我が国の方針を連絡・通知しているところ」
と、飛行計画の提出は必要ないとの見方を示し、菅義偉官房長官も記者会見で同様の答弁をした。
ただ、この時点では「政府の方針を伝えた」だけで、実際にどうするかは各社の判断に委ねられていた形だ。実際、両社はこの会見後も前出の対応方針は変えていなかった。
午前から一転、夕方には「飛行計画を中国当局に提出しないよう協力要請した」
ところが、同日16時の会見では一転。菅官房長官は、
「政府としては本件について官民一致して対応すべき。改めて国土交通省からそれぞれの航空会社に対して飛行計画を中国当局に提出しないよう、協力要請した」
「一致して対応する必要がある。政府方針を改めてそうした航空会社に対して伝えた」
と述べ、国交相が両社に対して行政指導したことを明かした。
記者からは、
「これで民間航空機が打ち落とされたら、誰が責任を取るのか」
という疑問の声もあがったが、
「中国側から、『今回の措置は民間航空機を含む飛行の自由をさまたげるものではない』という回答を得ている」
ことを根拠に、
「まったくそうしたことは考えていない」
と断言した。
この行政指導は、業界団体の「定期航空協会」を通じて行われ、18時時点では個別の航空会社には内容は伝わっていない模様だ。内容が伝わり次第、対応方針を決める考えだ。
また、菅官房長官は、
「ほとんどの国は提出していないようだ」
とも述べた。成田-台北(桃園)路線を運航している米デルタ航空も、そのひとつだ。同社では、その理由を、
「現行の正式な空域の設定をもとにプランしています」
と説明している。
防空識別圏問題 日本航空と全日空、中国への飛行計画書提出中止
中国の一方的な防空識別圏設定で、日本航空と全日空が、防空識別圏設定後から始めていた中国当局への飛行計画書の提出をやめることがわかった。
26日午前9時ごろ、中国中央テレビは「日本の2大航空会社である日本航空と全日空は25日、中国政府に東シナ防空識別圏を通過する飛行計画の提出を決定した」と報道していた。
中国は今回設定した空域を通過する航空会社に対し、飛行計画書の届け出を義務づけた。
これを受け、この空域を通過している全日空や日本航空は、週末から飛行計画を中国に提出していた。
中国が飛行計画書提出を要求する意味について、軍事評論家の岡部 いさく氏は「日本の民間機が日本の防空識別圏内を飛ぶのに、中国に飛行計画書を提出する。それだと、日本の防空識別圏内でも中国の施政権を認めることになってしまいますよね。つまり、中国がその空域を実効支配しているという証拠を差し出してしまうわけです。中国はそれをてこに、尖閣諸島の実効支配も主張できる、そんな危険性も出てきますよね」と述べた。
国土交通省によると、この空域を飛行する航空会社のうち、アメリカや韓国などの30社は、飛行計画の提出を無視した。
中国側に応じたのは、日本と台湾、中東のカタールのみだといい、台湾も今後は取りやめる方向だという。
菅官房長官は「政府としては、本件について、官民一致して対応すべく、あらためて国土交通省から、それぞれの航空会社に対し、飛行計画を中国当局に提出しないよう、協力要請をしたと」と述べた。
航空会社側はこれまで、乗客の安全や、航路変更で発生する経費増加などの問題から、飛行計画書の提出を行っていたが、26日夜、国交省に航空会社側から、今後、飛行計画書を中国当局に提出しないとの報告がなされたという。
日本側としては、官民を挙げ、中国の設定した防空識別圏は無効との対応を取る形となった。
一方、今回の空域の中には、アメリカ軍の航空機による訓練射撃、爆撃の場としている岩礁や、訓練空域3カ所が含まれる。
岡部氏は「アメリカ軍の戦闘機が、この射爆場を使えば、それに対して中国軍の戦闘機が緊急発進をしてくるという事態も、今の中国側の設定ではあり得ますよね。つまり、尖閣諸島周辺の上空で、米中の戦闘機同士が対峙(たいじ)するということにもなりかねないわけで、これだと、米中の軍用機同士の間で、危険な駆け引きが繰り広げられることにもなるんでしょうか」と述べた。
折しも中国では、26日から空母「遼寧」が、中国版のイージス艦など、最新鋭の戦闘艦艇を従え、これまでにない空母艦隊を形成して、中国・青島から出港した。
南シナ海での訓練を行うという。
(11/27 01:29)
中国が尖閣上空に「防空識別圏」ってどういう意味? 「領空」との違いは?
中国が尖閣諸島上空を含む空域に防空識別圏を設定したことで、日本との緊張関係が高まっています。防空識別圏の設定にはどのような意味があり、それはどの程度危険なことなのでしょうか?
【図解】「領海」と「接続水域」どう違う?
中国政府は11月23日、尖閣諸島上空を含む空域に、防空識別圏を設定したと発表しました。岸田外務大臣は「東シナ海の現状を一方的に変更しようというものであり、不測の事態を招きかねない非常に危険なものだ」と中国を厳しく批判しました。また米国政府も中国政府に対して外交ルートを通じて懸念を表明しています。
領空の周囲に設定する防空識別圏
防空識別圏は、国際法上の領空と混同されがちですが、両者は異なるものです。防空識別圏とは、戦闘機が緊急発進(スクランブル)する際の判断基準となる空域のことを指します。
領空は領海と異なり、無害通航権(敵対的でなければ自由に通航してもよいという権利)が認められていません。このため領空を航空機が勝手に侵犯すれば、場合によっては問答無用で撃ち落とされる可能性があります。航空機のスピードは非常に速いので、領空侵犯が起こってから対応していたのでは間に合いません。
そこで各国政府は、領空の周囲に防空識別圏というエリアを設定し、この範囲に外国の航空機が勝手に進入した場合には、戦闘機がスクランブルをかけるようになっています。この空域に航空機を進入させても、国際法上の領空侵犯にはなりませんが、敵対的行為であるとみなされても仕方ないわけです。
尖閣諸島は日本の領土ですが、中国が領有権を主張しています。しかし、現状において尖閣諸島を実行支配しているのは日本であり、国際社会もそれを認めています。このため、中国もその現状を受け入れ、尖閣諸島の上空に防空識別圏を設定することはしていませんでした。
領海侵入より敵対的
しかし中国は尖閣諸島が自国の領土であるとの主張を強めてきており、今回はそれに基づいて防空識別圏を設定したということになります。したがって中国の行為は岸田外相が述べているとおり、東シナ海の現状を一方的に変更しようとする行為であるといえます。
これまで中国は何度も尖閣諸島付近の領海に自国の船舶を進入させています。しかし領空に関するルールは領海よりもはるかに厳しく、勝手に防空識別圏を設定するという行為は、以前の行動と比べてかなり敵対的ということになります。日中関係は、従来とは異なる次元に突入してしまったと考えるべきでしょう。
(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)