M9前後の巨大地震の後、数年以内に付近の火山が必ず噴火している
富士山噴火は近い?
過去にも巨大地震が周辺火山の活動刺激
2012/3/23 15:40
富士山噴火もありうる―こう警告するのは内閣府の火山防災対策検討会の座長を務める藤井敏嗣・東大名誉教授だ。21日(2012年3月)に開かれた火山防災対策の検討会でも論議されたのが、「過去M9クラスの巨大地震の後、それに誘発されたと考えられる噴火が必ず起きている」という事実。藤井教授は昨年の三陸沖巨大地震から「富士山の噴火も起こりうる」というのだ。
揺れで岩盤弱くなりマグマ上昇
過去の誘発噴火は、1960年5月23日のチリ地震(M9.5)の2日後にコルドン・カウジュ火山、7か月後にカルブコ火山が噴火。1964年3月28日にアラスカ湾地震(M9.2)の2か月後にトライデンナ火山、2年後にリダウト火山が大噴火した。04年12月26日のスマトラ沖地震(M9.1)の4か月後にはタラン火山、3年後にはケルート火山が噴火し、富士山も宝永地震(M8.6)の49日後に宝永大噴火があった。
活火山の地下20~30キロにはマグマだまりがあり、通常は固い岩盤で覆われ密閉状態にあるが、巨大地震でこの岩盤が刺激されて軟弱になり、中の炭酸ガスが放出されるとマグマが軽くなって上昇、噴火するのだと見られている。藤井教授は「かつては活発に噴火していた富士山が300年間噴火が止まっているのは異常で、マグマが溜まっているのは確か」という。
時季はずれの「農鳥」、止まらない湧水など異変続き
最近、富士山周辺ではさまざまな異変が続いていて、これも噴火の前兆なのか。山肌に残った雪が羽ばたいた鳥の姿に見える「農鳥」という現象が、いつもなら春なのに1月に見られたり、昨年9月から周辺でナゾの湧水が止まらない。7年ぶりに幻の「赤池」も出現した。
藤井教授は「前兆とは言えないが、今まで起きていないことが起きていることは頭に入れておく必要がある」と警告している。
“巨大地震で噴火誘発の可能性”
3月21日 18時45分
火山の防災対策について議論している国の検討会は、過去の例から、去年の巨大地震の影響で噴火が誘発される可能性があるとして、観測体制の強化や専門家の育成が必要だとする報告書の案をまとめました。
検討会の会合には、火山の専門家や自治体の担当者などが参加し、今後必要な火山の防災対策について話し合いました。
この中で、避難などの対策を検討するため、火山周辺の自治体で作る、「火山防災協議会」が、まだ全国25の火山にしか設置されていないと指摘したうえで、具体的な避難計画作りや、予想される被害の範囲を示した地図の作成や更新を進めるよう求めています。
また、複数の都道府県に被害が出る大規模な噴火に備えて、住民の生活や経済への影響をあらかじめ検討して、広域避難の方法など対策を講じておくことが必要だとしています。
さらに、インドネシアのスマトラ島沖の巨大地震のあと、付近の火山が次々噴火するなど、過去にはマグニチュード9前後の地震のあと、数年以内に火山が噴火していることを踏まえ、去年の巨大地震の影響で噴火が誘発される可能性があるとして、観測体制の一層の強化や、専門知識を持つ人材の育成に早急に取り組むよう求めています。
検討会では、今月中にも報告書をまとめることにしています。
検討会の座長を務める東京大学の藤井敏嗣名誉教授は、「過去の例では、巨大地震のあと数年以内に近くの火山が噴火しており、避難の方法など事前に検討する必要がある。また、噴火の前兆を確実につかむため、日頃から精度の高い観測体制も必要だ」と話しています。
巨大地震後の火山噴火の例は
20世紀以降、世界で起きたマグニチュード9以上の巨大地震は、東日本大震災を引き起こした去年3月の地震を含めて5回起きていますが、去年3月の巨大地震を除く4回では、地震の数日から数年あとに比較的近い地域で火山が噴火しています。
気象庁によりますと、マグニチュード9以上の巨大地震は、▽昭和27年にロシアのカムチャツカ半島で起きたマグニチュード9.0の地震や、▽昭和35年のマグニチュード9.5のチリ地震、それに▽平成16年のインドネシアのスマトラ島沖で起きたマグニチュード9.1の地震など、去年3月の巨大地震を含めて5回起きています。
スマトラ島沖の巨大地震では、地震のあと4か月から3年の間に、インドネシア国内にあるタラン火山やムラピ火山などが噴火するなど、去年3月の地震を除く4回は、地震の数日から数年あとに比較的近い地域で火山が噴火しています。
マグニチュード9を下回る場合でも噴火が起きた例もあり、おととしチリで起きたマグニチュード8.8の巨大地震の1年3か月後には、コルドンカウジェ火山が噴火して、およそ4000人が避難したほか、1400キロ離れた空港が一時火山灰の影響で閉鎖されました。
一方、日本ではおよそ300年前の江戸時代に、西日本と東日本で大きな被害が出た「宝永地震」と呼ばれるマグニチュード8.6の地震の1か月余りあとに、富士山で大規模な噴火が起きています。
火山噴火予知連絡会の会長の藤井敏嗣東京大学名誉教授は、「マグニチュード9前後の巨大地震が起きたあとには、多くの場合、火山が噴火している。去年3月の巨大地震の影響で活動が特に活発になった火山はないが、今から観測体制を整えておく必要がある」と話しています。
富士山噴火で交通まひ! 上下水道ストップ!
2012年3月24日 11:00
協議会の立ち上げを提案
内閣府の「火山防災対策の推進にかかわる検討会」は21日、富士山などの噴火を想定した協議会の立ち上げなどが必要、とする報告案をまとめた。東日本大震災を受け、富士山などの火山が噴火する可能性が高まったためという。
大地震後は高確率で噴火
マグニチュード9を超える地震は、20世紀以降、世界中で過去に5回発生している。
スマトラ島沖地震では、地震後4か月~3年に、タラン火山やムラピ火山など、インドネシア国内で複数の火山が噴火した。
その他の地震でも、近隣の火山が噴火しており、噴火につながっていないのは、東日本大震災だけとなっている。
被害額2.5兆円を想定
富士山は約300年前、宝永噴火と呼ばれる大きな噴火を起こしている。このときと同じ規模の噴火が発生した場合、首都圏を中心に、大きな被害が発生すると予想され、その被害額は2.5兆円と想定されている。
主な被害には、降り積もる火山灰による交通のまひや上下水道の停止などがあげられる。宝永噴火では、東京都内でも降灰が4cm程度積もったといわれる。
内閣府 防災情報 火山防災対策の推進に係る検討会
鉄道・運輸機構
大都市における火山灰災害の影響予測評価に関する研究