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2012/03/14

室内の除染は想定せず=放射性物質汚染対処特別措置法

放射性物質:室内除染の想定なし 環境省ガイドライン
 今春から国が本格的に着手する東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の除染は、放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、福島県内の自治体が詳細な計画の立案を急いでいる。これまでの公共施設に加え、今回から約6万世帯が所有する住宅や店舗も対象となるが、同法には想定されていない問題も山積している。【日下部聡】


 同法に基づいて環境省が定めたガイドラインは室内の除染を想定していない。「特措法は『環境の汚染』を前提としている」(環境省)ためだ。

 だが、県内の公共施設の除染に携わる男性作業員は「室内の汚染は相当ある」と明かす。ロッカーの上やカーペットなど、ほこりがたまりやすい所を調べると、数万cpm(1分間当たりの放射線検出回数)が計測されることがあるという。国が定める人や物品の除染基準1万3000cpm(毎時0.1マイクロシーベルトに相当)を大きく上回る値だ。

 男性は「換気扇や窓の隙間(すきま)など、外気に通じる部分があれば必ず放射性物質は入っている。放置すれば内部被ばくの恐れがある。室内の除染も義務づけるべきだ」と話す。


 屋外の除染にも未解決の問題がある。

 1月、郡山市で開かれた原子力損害賠償紛争審査会で、遠藤雄幸・川内村長は「家屋周辺の樹木を取り除かないと効果は上がらないが、補償はどうするのか」と訴えた。財物に対する賠償の方針が定まっていないため、住宅に接する山林の伐採ができないと訴える住民は多い。

 山間部では沢の水を生活用水にしている住民も少なくない。同村の警戒区域内に自宅がある住民は「家の周りだけ除染されても水への不安が残る。山全体を除染できるのか」と疑問を投げかける。

 浪江町赤宇木塩浸(あこうぎしおびて)で雑貨店と農業を営んでいた石井啓輔さん(69)は自宅の除染をあきらめた。一時帰宅時の測定では室内で毎時3マイクロシーベルト、雨どいは同30マイクロシーベルトもあった。同地区はほとんどが「帰還困難区域」に指定される可能性が高い。線量が低く、除染対象となりそうな集落もあるが、30戸ほどに過ぎない。

 「そこだけ除染しても、周りに人がいないから生活できない。『除染はもういい』という人は多い」。帰還困難区域での土地買い取りも検討されているが、石井さんは借り上げを希望する。「売ってしまったら終わりだ。何十年先になるか分からないけど、子や孫のために残してやりたい」

毎日新聞 2012年3月14日 11時15分(最終更新 3月14日 14時42分)