東海・東南海・南海地震に備え、津波高を2倍に引き上げて浸水予測を進める兵庫県は23日、神戸市域について防潮堤の門扉(防潮扉)がすべて閉められた場合でも約20平方キロメートルが浸水するとのシミュレーション結果を発表した。浸水は約4万世帯に及び、繁華街や市営地下鉄海岸線に津波が押し寄せる。人工島のポートアイランドは進入口などが漬かって道路が途絶し、孤立状態になる可能性がある。
津波高は神戸市東灘区で最大4・2メートル、灘区3・2メートル、中央区4メートル、兵庫区4・2メートル、長田区4メートル、須磨区と垂水区が3・6メートルなどと予測。
防潮扉が閉められた場合、浸水面積は防潮堤が全く機能しなかった最悪のケース(約30平方キロメートル)の65%まで抑えられるが、東灘区では阪神電鉄本線付近、中央区ではJR神戸線付近、兵庫区や長田区は一部地域で国道2号付近まで津波が到達する。
神戸市は市内の自主防災組織「防災福祉コミュニティ」が主体となり、津波からの避難経路などを定めた「地域津波防災計画」の見直しを進めているが、ポートアイランドの孤立化対策などは今後の検討課題という。
市みなと総局は「地震でポートライナーが運行できず、道路が途絶されれば、数日間は行き来が難しくなる」と説明。国が今月末にも正式な想定津波高と震度分布を示すことから「内容を見て、ハード整備の是非も含めて対策を議論していきたい」としている。
県は東日本大震災と同規模のマグニチュード(M)9・0に備え、現行の2倍の高さの津波を想定して被害を予測。これまでに、防潮堤が壊れるなどして全く機能しなかった場合、瀬戸内海沿岸と淡路島の計15市町で約240平方キロメートル、約43万5千世帯が浸水するとの結果を公表している。(安藤文暁)
(2012/03/24 08:03)
神戸の津波浸水想定図が公表
兵庫県は、東海・東南海・南海地震が連動して起きた際の津波の高さを従来の想定の2倍にした場合、浸水が予想される区域を示した地図について、新たに神戸地域の分を公表し、中心市街地の沿岸部などおよそ20平方キロメートルの範囲で浸水する恐れがあることが分かりました。
兵庫県は、東日本大震災の津波被害をふまえて津波対策の見直しを進めていて、これまでに、阪神地域と淡路島、それに播磨地域について、津波の高さを従来の想定の2倍にした場合に浸水する区域を示した地図、「津波浸水想定区域図」を公表しています。
23日は、新たに神戸地域について地図が公表されました。
それによりますと、3つの地震が連動して起きた際に神戸市内を襲う津波の高さは、最大で4.2メートルと予想されていて、防潮扉がすべて閉まった場合でも、中心市街地の沿岸部などあわせて19点6平方キロメートルの範囲が浸水するとしています。
この区域には、1万9000棟あまりの建物があり、3万9000世帯、8万3000人あまりが住んでいます。
03月24日 11時48分
地震想定:兵庫で4万3000棟が浸水可能性
近い将来の発生が確実視される東海・東南海・南海地震が東日本大震災級だった場合、兵庫県内では防潮扉が全て閉まったとしても建物約4万3000棟が浸水し、約16万5000人が被災する可能性があることが23日、県の想定で分かった。神戸市営地下鉄海岸線は路線の大半が浸水するほか、同市中央区のハーバーランドや南京町なども浸水区域に含まれる。
県の想定は、過去最大規模とされる安政南海地震(1854年)のマグニチュード(M)8.4を前提とした津波の高さを暫定的に2倍にして試算。昨年から地域ごとに地形や建物の配置、防潮堤の高さなどを考慮し浸水する区域をシミュレーションしてきた。今回で神戸市内分の精査が終わり、県全体の概要が明らかになった。
精査の結果、神戸市内は防潮扉の開閉にかかわらず、被害の大きさがほぼ変わらないことが判明。防潮扉が全て閉まった場合でも神戸市で約8万3000人(約1万9000棟)、西宮市約4万7000人(約8000棟)、姫路市約4000人(約2000棟)が津波で被災する可能性があるとしている。
一方、防潮扉が全く機能しない場合の被害は、西宮市が約16万人(約3万棟)、尼崎市が約11万人(約4万棟)などと拡大。県が昨年10月に発表した警戒区域には約104万人が居住しているが、今回のシミュレーションで県全体での被害は最大約43万人(約12万棟)と推計した。
県は今月末の中央防災会議で新たな津波想定が示されれば精査し直す考えで、「暫定的な想定として防災意識を高める参考にしてほしい」としている。【石川貴教】
毎日新聞 2012年3月23日 22時30分(最終更新 3月23日 22時42分)
兵庫県津波被害警戒区域図(暫定)、兵庫県津波浸水想定区域図(暫定)