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2012/01/20

東日本大震災の本震1ヶ月前から「ゆっくり滑り(スロースリップ)」現象

震災1カ月前からゆっくり滑り 東大地震研が2回確認
2012年1月20日8時3分


 東日本大震災が発生する約1カ月前から、震源に向かって「ゆっくり滑り」と呼ばれる現象が2回起きていたことが、東京大地震研究所の解析でわかった。巨大地震の引き金になった可能性があるという。20日の米科学誌サイエンス電子版に論文が掲載される。

 地震研の加藤愛太郎助教らは、巨大地震発生に至る過程を明らかにしようと、宮城県と岩手県に設置された気象庁や東北大などの地震計14個の記録から、極めて小さな地震を含む1416の地震を調べた。

 解析によると、小さな地震が相次ぎ、発生場所が時間とともに南下して、巨大地震の震源に近づいていく現象が2回起きていた。1回目は2月中旬から2月末まで、2回目は3月9日にマグニチュード7.3の大きな前震が起きてから11日までの間だった。
http://www.asahi.com/science/update/0119/TKY201201190618.html




去年3月の巨大地震の前兆現象か
1月20日 6時8分
去年3月の巨大地震のおよそ1か月前、震源地の近くで岩盤と岩盤の境目がゆっくりとずれ動く現象が2度にわたって起きていたとみられることが東京大学の研究グループの解析で分かりました。巨大地震の発生を促していた可能性があるとして、分析を進めることにしています。

東京大学地震研究所の加藤愛太郎助教などの研究グループは、去年3月の巨大地震が起きる前に震源地周辺で発生した1000回以上に及ぶマグニチュード1以上の小さな地震を解析しました。

その結果、巨大地震の震源地の北側の南北30キロ、東西90キロのほどの地域で、2月中旬から2週間程度、小さな地震の活動が活発になっていたことが分かりました。



地震活動は北から南へと少しずつ移動し、巨大地震の震源地に近づいていったん収まりましたが、3月9日、その最も北側でマグニチュード7.3の大きな地震が発生したあとに再び、活発になって南へ移動し、2日後の11日、巨大地震が発生していました。



研究グループは、こうした地震活動の際、地下の岩盤と岩盤の境目がゆっくりとずれ動く「スロースリップ」という現象が起きていたとみていて、2度にわたる「スロースリップ」が巨大地震の発生を促し、いわば前兆だった可能性があると分析しています。

加藤助教は、「スロースリップのあとに必ず巨大地震が起きるわけではないので、今すぐ地震の予知や予測に結びつくわけではないが、巨大地震がどのように起きるかを解明する手がかりになると思う。スロースリップと地震との関係を明らかにしていきたい」と話しています。






本震前2度「ゆっくり滑り」=東日本大震災の発生促進か-東南海、南海も注意・東大
 東日本大震災の本震(マグニチュード=M9.0)が起きる前の約1カ月間に、岩手・宮城沖のプレート境界の震源域がゆっくり滑る現象が2回起きていたことが分かった。本震2日前の最大前震(M7.3)を挟んで発生しており、本震の発生を促す「最後の一押し」になった可能性があるという。東京大地震研究所の加藤愛太郎助教や小原一成教授らが19日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。
 東北地方の太平洋側沖合では、太平洋プレートが陸側プレートの下に年間10センチ弱のペースで沈み込んでおり、本震はプレート境界が一気に最大20メートル以上滑って発生した。震源域北側の青森沖や南側の茨城・千葉沖では今後、再び大地震が発生する恐れがあり、小原教授は「ゆっくり滑りが起きた場合、力が1カ所に集中するか注意する必要がある」と話している。

 ゆっくり滑りは東南海、南海地震の想定震源域より北方の紀伊半島東部や四国北部などの地下30~50キロでも観測されている。想定震源域に近い浅い場所で起きた場合、大地震につながる可能性があるという。

 研究チームは岩手・宮城両県沿岸14カ所にある地震計のデータから、本震前の約1カ月間に起きた約1400回の微小地震を調べた。その結果、震源域の長さ約90キロの領域で、1回目のゆっくり滑りが2月中旬から末、2回目が3月9日の最大前震から11日の本震にかけて起きていたことが判明。全体の滑り量は約20センチで、M7.1の地震に相当する。

 ゆっくり滑りは2回ともこの領域の北から南へ伝わっていた。発生地点の移動のペースは1回目が1日2~5キロだったのに対し、最大前震後の2回目は同約10キロと速かった。このため、領域の南端付近にプレート境界がずれようとする力が集中し、本震の破壊が始まった可能性が高いという。(2012/01/20-04:09)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201201/2012012000052&g=soc



[ゆっくり滑り] プレート(岩板)境界や地下の断層が地表に大きな揺れをもたらさないまま、ゆっくりずれ動く現象。「スロースリップ」「ぬるぬる地震」などとも呼ばれる。ずれた部分はひずみが減るが、周辺は逆にひずみがたまり、地震が起きやすくなると考えられている。数日間で起きる場合や数カ月から数年かかる例がある。房総半島沖や豊後水道周辺など各地で報告がある。2001~05年に東海地震の想定震源域付近でも観測されたが、東海地震には至らず終息した。