携帯電話向けのソーシャルゲームサイト「モバゲータウン(モバゲー)」を運営する「ディー・エヌ・エー」(DeNA、東京)が、モバゲーにゲームを提供する開発会社に圧力をかけ、ライバル会社の「グリー」(同)との取引を妨害したとして、公正取引委員会は9日、独占禁止法違反(不公正な取引方法)でDeNAに排除措置命令を出した。
公取委によると、DeNAは昨年7~8月にかけて、モバゲーに人気ゲームを提供する開発会社を本社に呼び出すなどして、グリーが運営するサイト「GREE」にゲームを提供しないよう迫った。要求に応じない場合、モバゲー内の「注目のゲーム」「イチオシゲーム」などのランキングからゲーム名を消し、ユーザーが見つけにくい設定に変えていた。この結果、開発会社は新規ユーザーを獲得することが事実上、不可能な状態に追い込まれた。
要求を受けたのは主に中小の約40社で、半数以上は従っていたという。なかには、妨害を受けた2、3日後に急きょグリーとの取引をやめた会社もあった。DeNAはユーザーを奪われるのを警戒したとみられる。
DeNAは「命令を真摯(しんし)に受け止め、コンプライアンス体制の充実・強化に努めます」とコメントした。
◆ソーシャルゲーム=インターネット上の「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」の中で提供されるゲームの総称で、ユーザー間で協力や競争をして楽しめるゲームが多い。通信料以外ゲーム代はかからないが、武器や道具などのアイテムを購入すると課金される。携帯電話での市場は約1000億円で、DeNAとグリーが大半を占める。
(2011年6月10日01時37分 読売新聞)
独禁法違反:「モバゲー」に排除命令 公取委「グリーへの提供妨害」
携帯電話向け交流サイト(SNS)「Mobage(モバゲー)」を運営するディー・エヌ・エー(デ社、東京都渋谷区)が、サイトにゲームを提供するソフト開発会社に対しライバル社のグリー(港区)にゲームを提供しないよう圧力をかけたとして、公正取引委員会は9日、独占禁止法違反(競争者に対する取引妨害)で再発防止を求める排除措置命令を出した。
公取委によると、デ社は昨年7~8月、人気ゲームを製作するソフト開発会社約40社に「グリーにゲームを出せば、モバゲーのサイトに掲載しているゲームのタイトルを削除する」などと圧力をかけ、グリーとの契約を不当に妨害したとされる。その後、グリーと契約したため、数社が実際にタイトルを削除されたという。
昨年8月はグリーが新たに契約したソフト開発会社のゲーム提供を開始した時期で、デ社の行為により契約を取りやめ提供できなくなったゲームもあったという。公取委は当初、デ社が有力会社の囲い込みを図ったとみていたが、内部資料などからグリーの取引を不当に妨害しようとした目的の方が強いと判断した。公取委の立ち入り検査があった昨年12月、デ社は削除したゲームのタイトルを復元している。命令に対し、デ社は「真摯(しんし)に受け止め、法令順守の充実・強化と一層の意識向上に努めたい」とコメントしている。
SNS向けゲーム業界は、デ社とグリーの2大大手。無料でゲームを始められ、利用者がアイテム(道具や武器など)を購入すると課金されて運営会社やソフト開発会社の収入になる。08年ごろから市場が急成長。サイト会員数は昨年9月時点でグリーが2246万人とデ社の2167万人を上回っていたが今年3月には逆転してデ社が2714万人とグリーの2506万人を上回った。
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■解説
◇成長市場、責任も大きく
公正取引委員会がディー・エヌ・エーに排除措置命令を出したのは、交流サイト(SNS)向けゲーム業界など急成長する市場で売り上げを伸ばし大手になった企業に、ベンチャー時代よりも一層厳しい法令順守を求めたからだ。
デ社が圧力をかけたソフト開発会社約40社は、提供ゲームによるデ社の売上高のうち10年7月は7~8割を占めていたという。その40社を独占できれば、ライバル社のグリーにとって大きな痛手となる。公取委の幹部は「もしグリーの経営が悪化するなど市場への影響が大きければ、デ社はより悪質として課徴金が科せられる違反行為に認定されていた可能性もあった」と指摘する。
企業関係者によると、デ社とグリーの経営陣の仲の悪さは業界内で有名という。グリーにもゲーム提供したためデ社にタイトルを削除された開発会社の幹部は「月3000万円の売り上げがなくなった。競争するなら正々堂々としてほしい。デ社は、自社の行為が与える社会的影響や、ソフト開発会社への影響をもっと考えるべきだ」と訴える。
SNS向けゲーム業界を巡っては、交流サイト機能が児童買春などのきっかけになっているとの指摘もある。法令順守も含め社会的責任をどう果たしていくのか。業界や企業が大きくなるのに比例して、さらに厳しい目が向けられることになるだろう。【桐野耕一】
毎日新聞 2011年6月10日 東京朝刊
2011/5/25 20:43
ディーエヌエ、南場智子社長「夫の看病で社長退任を決断」公開日時
交流サイト大手のディー・エヌ・エーは25日、創業者の南場智子社長が6月25日付で取締役に退き、守安功取締役が社長に昇格する人事を発表した。南場社長は記者会見で、「夫の看病で(社長業に)全力を出せなくなり、退くことを決めた」と社長退任の理由を説明した。今後は取締役としてディーエヌエの経営にかかわるとしている。南場社長と守安取締役の主なやり取りは以下の通り。
――なぜ社長を退任することになったのか。
南場社長「夫が病気になり、経過は順調ではあるが、私の生活スタイルを変えることが必要になった。私は社長業は全力投球が求められる職務と考えており、最終的に退任を決めた。社業を最優先できないのは社員にも申し訳ないと考えた」
「ベンチャー企業は創業社長と同一視されてみられがちだが、会社は私の人格と別個に成長してほしい。権限委譲や経営陣の育成はこれまでも進めており、私に依存する部分は限定的になっている。今後の経営の心配はない。守安取締役は当社の主な事業をこれまで技術面からつくってきた。意思決定がより速くなると期待している」
守安取締役「社長就任の打診があったのは1~2週間前。突然で非常に驚いた。一方で私は2006年に取締役になっており、そのころから次の社長は自分がやりたいとも思っていた。今まで以上に会社を発展させていきたい。スマートフォン(高機能携帯電話)へのシフトなど環境変化が進んでおり、非常にわくわくしている」
――10年末に(競合他社との取引をやめるようゲーム会社に圧力をかけた疑いがあるとして)公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を受けたことが、社長退任に影響を与えたのか。
南場社長「まったく今回の人事とは関係ない」
――筆頭株主である南場社長の保有株の状況に変化はあるか。
「特に変化はない」
――取締役として残るが、どの程度の頻度で出社するのか。今後は経営にどうかかわっていくのか。
「夫がまだ入院中。6月には退院見込みだが、どういうペースになるのかは状況次第でわからない部分が多い。週に何日か会社に来て仕事をすることになるだろう」
「重要な経営判断は、実態としては、これまでも守安取締役らと相談して決めてきた。今後の経営への関与は求められる範囲で精いっぱいやっていきたい。例えば、採用活動などはできる限りかかわっていきたい」
2010年12月15日 19時05分 更新
「法令に違反する事実があったとは思っていない」 DeNA南場社長、公取委の検査にコメント
「このような疑義が二度とかからないような運営を徹底する」――DeNAの南場社長は、公取委の立ち入り検査を受けたことについて、開発者向けイベントでこう述べた。
ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子社長は12月15日に開いた開発者向けイベント「モバゲーオープンプラットフォームForum」で、同社が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けたことについて、「法令に違反する事実があったとは思っていないが、このような疑義が二度とかからないような運営を徹底する」コメントした。
南場社長はイベントの冒頭に登壇し、モバゲーのプラットフォームの成長を説明した後、「これを申さずにステージを下りるわけにはいかない」と切り出し、「公取委の件に関してはたいへんお騒がせした。法令に違反する事実があったとは思っていないが、まずは調査に全面的に協力し、公取さんの判断を仰ぎたいと思っている」とコメント。
その上で、「みなさんにご心配、ご迷惑をおかけしたことを反省し、公取の判断を待つまでもなく率先して、このような疑義が二度とかからないような運営を徹底することをお約束する。すでに必要な措置を講じている」と話した。措置の具体的な内容は明らかにしなかった。