2011.6.16 02:00
東日本大震災の巨大地震では、過去数百年にわたってプレート(岩板)境界に蓄積されたひずみエネルギーが放出されたことを、国土地理院の研究チームがGPS(衛星利用測位システム)による地殻変動データの解析で示し、16日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。
研究チームは、マグニチュード(M)9.0の本震とその後の余震による地面の変動を、GPSの観測データをもとに解析。その結果、本震でプレート境界が大きくすべった範囲(震源域)は、日本海溝寄りの領域を中心に南北400キロに及び、すべり量は最大で27メートルだった。
東北地方の太平洋沖では、太平洋プレートが北米プレートの下に年間7.3~7.8センチの割合で沈み込んでいる。この領域では数十年から100年程度の周期でM7~8クラスの地震が発生するが、これらを足し合わせても沈み込みで蓄積されるエネルギーの10~20%しか放出されないことが知られていた。
研究チームの今給黎(いまきいれ)哲郎・地理地殻活動総括研究官は「残りの80~90%は、プレート境界が常時すべることで解放されているという考えが、大震災前は主流だった。実際には日本海溝寄りにエネルギーをため込む領域が存在し、今回の大震災では数百年分が一気に解放された」と説明。また、海底のGPS観測網を充実させれば、他の海溝系でも巨大地震の発生可能性などの評価に役立つとしている。
東日本大震災、エネルギー解放は最大700年分 国土地理院推定
2011/6/16 2:00
国土地理院の小沢慎三郎主任研究官らは、東日本大震災の本震と、その後に揺れを伴わずにゆっくりと断層がずれ続ける「余効すべり」によって解放されたエネルギーの総量が、周辺のプレート(岩板)境界面で蓄えられたエネルギー量の最大700年分に相当するとの研究結果をまとめた。16日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載される。
国土地理院が東北、関東の各地に設置した全地球測位システム(GPS)の観測データから計算した。
プレート境界では海側のプレートが陸側のプレートの下に潜り込み、ひずみが年々たまっていく。余効すべりで解放されるエネルギー量を、地震の規模を示すマグニチュード(M)9.0の本震の30~100%と仮定して計算したところ、350~700年かけて蓄積されたひずみに相当するエネルギー量が解放されたと推定された。
また、この余効すべりは、プレート境界面が斜めに0.2メートル以上ずれ、岩手県沖約100キロメートルの地下を中心に、岩手、宮城、福島県の沿岸部や東北沖の地下で起きていた。中心部は本震で断層が4メートル以上ずれた領域の中心部よりも約100キロメートル北西よりの場所だった。
ずれが起こる場所の東側では陸側のプレートがせり上がって海底や地面が隆起し、西側では沈降することが多い。仙台平野や牡鹿半島は大震災の本震では、ずれの西側にあり沈降したが、余効すべりは仙台平野などを含む広範囲で起き、石巻市で本震により最大で沈降した分の13%、牡鹿半島で同8%が逆に隆起したと分析した。
国土地理院の別のチームは13日、地盤沈下した東北沿岸部で、宮城県以南では地震後から隆起が始まっていたとする観測結果を公表していた。