6月23日 6時16分
ウィーンで開かれているIAEA=国際原子力機関の閣僚会議の作業部会で、東京電力福島第一原子力発電所の事故直後に日本側からの情報提供が不十分だったという批判が相次ぎ、緊急時にはIAEAが外部に放出された放射性物質の種類や量といった重要な情報を素早く入手し、国際的に共有できる仕組みを作ることで、各国の認識が一致しました。
ウィーンで開かれているIAEAの閣僚会議は22日、福島第一原発の事故時の緊急対応について検証する作業部会が開かれ、非公開で意見が交わされました。
出席した日本の関係者によりますと、会合の中で、WMO=世界気象機関の専門家から、事故直後、日本側からの情報提供が不十分で、放射性物質がどのように拡散していくか予測が困難だったと指摘されたということです。
また、加盟国からも「事故直後、知りたい情報が得られず、国民に十分説明できなかった」などと日本の対応を批判する意見が相次いだということです。
こうした点を踏まえて、作業部会では、緊急時にIAEAが外部に放出された放射性物質の種類や量といった重要な情報を素早く入手し、国際的に共有できる仕組みを作ることで各国の認識が一致したということです。
作業部会のあと記者団の取材に応じた廣瀬研吉内閣府参与は、各国が日本側の報告について一定の評価をしてくれたとしたうえで、「情報を伝え続けることが重要であると改めて認識した」と述べました。
IAEA「事故情報の開示迅速化を」 '11/6/23
【ウィーン共同】ウィーンで開催中の国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合は22日、専門家による作業セッションを開き、事故直後から当事国と連携し、世界への情報提供を迅速化する必要があるとの認識でほぼ一致した。福島第1原発事故では海外から、情報提供が不十分だとの批判があった。
日本政府関係者によると、セッションではこうした問題を解決するため、事故を分析する専門家の育成や組織づくりなどの機能強化を求める意見が相次ぎ、国際的な原子力防災訓練を充実させるべきだとの声もあった。
セッションには世界気象機関(WMO)担当者も参加。どんな放射性物質がどの程度、放出されたかを把握するため、核実験探知を目的に包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)が監視している放射性物質のデータを、WMOが分析に利用するべきだとの提案もあった。
日本からは、原子力安全委員会担当の広瀬研吉ひろせ・けんきち内閣府参与が事故後の対応を説明。「なぜ放射性物質の情報が出なかったのか」との質問に対して、環境モニタリングの設備が被災して使えなかった経緯を説明した。
「日本の組織あまりに複雑」、調査団長
福島第1原発事故の原因解明のため、現地調査を行った国際原子力機関(IAEA)調査団のウェイトマン団長(英国)が21日、ウィーンで記者会見し、日本の原子力行政の組織体系について「あまりに複雑で(意思決定の)遅れを招きかねない」と述べ、日本側にあらためて注意を促した。
調査団は17日にまとめた報告書で、日本の政策決定の過程について「複雑な組織体系が緊急の意思決定の遅れ」を招くと指摘していた。
ウェイトマン氏は「日本社会では通用するのだろうが、住民の避難などが非常に入り組んだ組織体系の中で行われた」と述べた。
一方、同氏は調査団に対する日本側の対応について「情報のやりとりなど完全な協力体制を築けた」と強調した。(共同)
[2011年6月22日9時21分]
IAEA、募る日本不信 省庁たらい回しの壁
2011/6/23 9:20
「NRC(米原子力規制委員会)のようにNISA(原子力安全・保安院)に聞けば、原発事故のことが全てが分かると思ったのが間違いだった」。国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)の職員が振り返る。
3月11日の福島第1原発の事故発生後、IAEAは本部内に「緊急対応センター」を設置し、直ちに日本政府からの情報収集を開始した。ところが、緊急時にもかかわらず経済産業省、文部科学省、厚生労働省などをたらい回しに遭い、情報を迅速に収集することができなかったという。
加盟各国から「情報不足」に不満が出たため、事態の打開を狙って天野之弥事務局長が急きょ訪日し、菅直人首相に直談判。この結果、日本政府の対応も徐々に改善したそうだが、IAEA内の「日本不信」は残ったままだ。
「日本の複雑な体制や組織が緊急時の意思決定の遅れを招く可能性がある」。福島第1原発の事故原因を解明するために訪日したIAEAの調査団は6月20日「原子力安全に関する閣僚会議」で最終報告書を発表した。そこには日本の縦割り行政への不満を示唆するような一文が盛り込まれていた。
もっとも、日本人の天野之弥氏が事務局長を務めていることを差し引いても、世界第3位の「原発大国」の日本と、原子力の平和利用のために生まれたIAEAは切っても切り離せない関係だ。日本をあからさまに批判することは、原発の推進には明らかにマイナスだ。20日夜(日本時間21日未明)に採択された閣僚宣言に、日本を批判する文言はどこにもなかった。