東京電力福島第1原発の復旧作業に従事した作業員を対象に東電が進めている被ばく線量検査を巡り、厚生労働省は20日、3月中に従事した約3700人のうち30人前後の下請け作業員の身元が特定できていないと発表した。東電が線量計の貸し出し台帳に記載された作業員名を協力企業に照会したところ「そのような社員はいない」との回答だったという。厚労省は「管理がずさんで遺憾だ」として同日、作業員を特定して検査するよう東電を指導した。【井上英介】
◇3月に従事
厚労省労働基準局計画課などによると、3月中の緊急作業従事者は3639人で、このうち3514人の被ばく線量の暫定値が東電から20日までに報告された。残り125人は同日現在も内部被ばく線量の測定を受けておらず、このうち近く検査を受ける者や病気などで当面受けられない者を除く69人について、東電は協力会社を通じて検査を受けるよう呼びかけている。
厚労省によると、東電は震災発生時から4月半ばまで線量計貸し出しの紙台帳で作業員を管理。福島第1原発の免震重要棟など計2カ所で線量計を貸し出す際、線量計の番号と社名、氏名を作業員に手書きで記入させていた。だが、69人のうち30人前後は書かれた会社に氏名を問い合わせても該当者がおらず、残りは協力会社からの回答待ちという。
「該当者なし」の作業員からはいずれも線量計が返却され、外部被ばく線量も記入されており、限度(250ミリシーベルト)を超えた者はいないという。4月半ば以降はバーコードなどで管理されているが、それ以前に作業員を把握する手段は紙台帳以外になく、東電は複数の協力会社に問い合わせしたが身元が分からないままという。
労基局計画課は「該当者がいない理由は不明だが、台帳も線量計も東電の管理で、ずさんというほかない」と話している。
毎日新聞 2011年6月20日 20時52分(最終更新 6月20日 21時16分)
作業員被ばく、新たに1人限度超 未測定の69人連絡取れず
2011年6月21日 00時35分
福島第1原発の事故で東京電力は20日、今回の事故対応に限って定められた被ばく限度の250ミリシーベルトを超えた東電社員が新たに1人増え、計9人になったと発表した。3月に収束作業に当たった作業者のうち、まだ内部被ばくを測定していない作業者は125人に上り、うち69人は連絡も取れず、一部は個人の特定すらできないことも明らかになった。
新たに被ばくが分かったのは20代の男性社員。外部被ばくが34・87ミリシーベルト、内部被ばくの暫定値が300・5ミリシーベルトで、合わせて335・37ミリシーベルト。現時点で健康に問題はないという。
男性は事故発生の3月11日から同月末まで1、2号機の中央制御室で、非常用バッテリーを計器につなぐ作業などを担当。制御室は放射性物質に対応していない防じんマスクしかない上、着けたり外したりしていた。
東電はまた、3月中に作業に当たった東電社員と協力会社社員3639人のうち、内部被ばくを測定できていないのは125人に上り、このうち協力会社の69人が退職して連絡が取れていないと説明した。
厚生労働省は20日、東京電力が連絡を取れない69人のうち、半数は個人も特定できない状態になっていると発表した。
東電が作業員に線量計を貸し出す際に作成した名簿を基に、協力会社に問い合わせたが、協力会社は「該当者なし」と回答したという。
事故直後の混乱で、協力会社が作業員と雇用契約を結ぶ際、身元確認や個人情報の管理がずさんだった可能性がある。厚労省は東電に、連絡の取れない作業員向けにホームページで測定を呼び掛けるよう指導した。
(中日新聞)