これは私たちが入手した原発危機をめぐるある内部文書です。文書のあて先は菅直人総理。文書を作ったのは元内閣官房参与だった小佐古敏荘氏。小佐古氏は今年4月、自ら参与を辞任しました。文書はこのとき書かれたもので、初動ミスから住民が余分な被ばくを受けたなどと指摘しています。
一部地域で放射線量が高いとされる福島県伊達市。伊達市は当初定められた避難地域から外れ、計画的避難区域にも入っていません。しかし、それでも線量が高い地域があります。
「避難なんて言われたら大変なことになる」(伊達市民)
避難に関する基準づくりで後手にまわる行政ですが、こうした状況を予言するかのような文書がありました。
「制限値を超えているものにはケアと説明が必要であり、その方策を決めるべき」
1か月半も前に総理に出された報告書。作ったのは・・・。
「私は受け入れることができません」(元内閣官房参与 小佐古敏荘【東京大学教授】、4月29日)
元内閣官房参与・小佐古敏荘氏です。「国が定めた放射線量の基準は甘すぎる」。このとき抗議の辞任をした小佐古氏。90ページに及ぶ報告書は、職を辞する小佐古教授が総理に残した、いわば遺言です。そこで予言されていたことは・・・。
東京大学・小佐古敏荘教授。放射線防護の第一人者です。事故発生の直後、内閣参与に任命され、政府内の専門家らとともに「助言チーム」をつくり、事故処理や住民避難などに提言を行ってきました。
「総理から(力を貸してほしいと)電話をいただいた。助言チームを(作り)官邸の了解の下のチームとして、いろんなサポートをしていこうじゃないかと」(民主党・空本誠喜 衆院議員)
助言チームの座長を務めた空本衆院議員。チームができた背景には、総理官邸と原子力安全委員会の不協和音があったといいます。
「(本来なら)原子力安全委員会自らが率先して官邸を動かすと、官邸に指示していくことが必要。しかし、後手後手の対策・対応。機能していなかったことの現れ」(民主党・空本誠喜 衆院議員)
助言チームには、近藤駿介原子力委員長、尾本彰原子力委員など、国の原子力行政を支えるメンバーもいたといいます。小佐古教授が残した報告書にはこんな件があります。
「文部科学省、原子力委員会の不適切な初動により、SPEEDIの活用が十分にされず、余分な被ばくを住民に与えるなどの事態を招いている」
放射能拡散予測・SPEEDI。この予測が生かされなかったことで、住民が余分な被ばくをしたと報告書は訴えます。小佐古氏の指摘について、私たちは13日、枝野官房長官に聞きました。
「より早い段階で活用する余地があったのに、それができなかったことについては今後の反省点として大事な問題点。 (ただ)健康に被害を及ぼす量の被ばくを受けている方はいないのではないか」(枝野幸男 官房長官)
一方で報告書は、政府の対応を厳しく批判します。
「原子力災害においては官邸の強いリーダーシップと適切な判断が必要であるが、残念なことにこれがなされてこなかった」
助言チームの提言は生かされたのでしょうか。検証が求められています。(13日23:08)
初動ミスで「住民が余分な被ばく」 投稿者 samthavasa