2011年5月10日1時25分
東京電力福島第一原発では9日、1号機の原子炉建屋に作業員が入り、冷却システムの導入に向けた現場確認を進めた。炉内の水位計や圧力計を調整する作業に入るため、放射線を遮る板を一部で設置した。建屋内の線量は高く、長時間の作業ができない状況で、ほかの場所でも鉛のマットで放射線を遮るなどの対策を検討している。
1号機は、換気装置で空気を浄化したうえで、8日夜に原子炉建屋の二重扉を開放した。今後、原子炉を安定的に冷やすため配管を接続することから、放射線量を調査した。
特に高い毎時600~700ミリシーベルトを計測したのは、注水に使う予定の窒素注入用配管の取り出し口。別の作業予定場所でも毎時280ミリシーベルトのところがあり、ほかはおおむね毎時10~100ミリシーベルトを計測した。
建屋内は爆発でがれきが落ちていたが、建屋や機器に目立った損傷はなく、水漏れも確認されなかった。ちりは換気装置で除去したものの、がれきや床、機器が汚染されたり、配管が放射能を帯びたりして、放射線量が高くなっている可能性があるとみられる。
線量の目標は毎時1ミリシーベルトだった。今回計測した放射線量は作業員の上限250ミリシーベルトに対して高い。今後、発生源を調べ、鉛のマットや板で遮ったり、がれきを撤去し拭き取ったりする作業を検討する。東電は「現時点では工程表の遅れは考えていない」としているが、難航すれば配管の敷設場所や必要な作業員の人数の再検討を迫られる。 1号機の水位計や圧力計の調整は、10日から着手する予定。より正確な値を得られるようにする。
また、3、4号機の使用済み燃料プールでは、腐食防止のため、ヒドラジンという物質を混ぜて注水する作業が始まった。毒性が問題ない程度に薄め管理するという。4号機のプールは耐震性が心配されており、補強工事に向け、周囲のがれきの撤去も始まった。(佐々木英輔、杉本崇)
建屋内 最大700ミリシーベルト 1号機放射線量 「水棺」作業難航か
2011年5月9日 13時56分
福島第一原発の事故で、東京電力と経済産業省原子力安全・保安院は九日、二重扉を開放した1号機の原子炉建屋で作業員らによる放射線量の測定を実施した。一階では局所的に毎時七〇〇ミリシーベルト、二階でも同一〇〇~四〇ミリシーベルトを検出。原子炉格納容器を水で満たし、燃料棒を水没させる「水棺」へ向けた作業が続いているが、放射線量が高く今後の作業は難航が予想される。
建屋内の放射線量は場所により一〇~七〇〇ミリシーベルトと幅があり、保安院は「線量が二けたあると作業は難しい」と指摘した。七〇〇ミリシーベルトを計測したのは格納容器西側の計器類がある場所の上部。東電は「今後の作業に支障が出る場所ではない。ほかの高線量の場所も遮蔽(しゃへい)や時間を区切るなどで作業は可能」と説明した。
このため今後、数日間、建屋内の線量調査と現場の状況確認を継続。鉛の入ったマットで遮蔽したり、放射性物質に汚染されたがれき撤去に着手する。
東電は、水位計の調整や循環式の原子炉冷却装置搬入に向け、八日午後八時すぎに建屋の二重扉を開放。隣のタービン建屋から空気を八時間入れ、九日午前四時すぎから約三十分間、東電の作業員七人と保安院職員二人が原子炉建屋に入った。被ばく量は最大で一〇・五六ミリシーベルトだった。
タービン建屋側から空気が入ることで原子炉建屋内の放射性物質を含んだ空気が押し上げられ、水素爆発で破損した建屋上部から外部へ放出されたとみられる。直後の観測では原発敷地内の九カ所で放射線量は上昇しておらず、東電は「放出による環境への影響はない」という。
水棺作業では、燃料棒を冠水させ安定的に冷やすため、水位の把握や循環冷却が必要となる。
(東京新聞)
またも課題「最大毎時700ミリシーベルト」 冷却機能構築に困難も2011.5.9 12:16
東京電力は9日、二重扉を開放した福島第1原発1号機の原子炉建屋内に作業員ら9人が入り放射線量を測定した結果、最大で毎時600~700ミリシーベルトの高線量だったと発表した。今回の事故作業に伴う被ばく線量限度は250ミリシーベルトで、早ければ20分余りの作業で限度を超える。
東電は「現時点で工程表の見直しは考えていない」としたが、作業員の被ばく低減のために除染や遮蔽が必要で、場合によっては原子炉を安定的に冷却させるシステムの構築に困難が伴うことも予想される。
東電は、原子炉圧力容器や格納容器の水位を正確に測るための計器の取り付けや補正、原子炉内の水を循環させて冷やす熱交換器の設置など、原子炉を冷却させる作業を今後、本格化させたい意向。建屋内ではほかにも毎時280ミリシーベルトの高い値も測定されたが、計器に関する作業場所付近は毎時10~70ミリシーベルトで、遮蔽をすれば作業は可能だとみている。保安院も、作業時の遮蔽の必要性を指摘した。
8日夜には、周辺への健康影響が心配ないという予測結果を基に原子炉建屋とタービン建屋を結んでいた二重扉を開放する作業を実施した。
今後、1号機内では、原子炉水位計の校正(調整)と差圧指示計の取り付け、格納容器圧力計の校正作業が予定されている。「これによって、原子炉内の水位が燃料の上まで来ていることと、格納容器内の水位がベント配管の入口まで上がっていないことが正確に確認できるようになる」と東京電力は説明する。さらに原子炉建屋内に熱交換ユニットを設置、屋外に設置するポンプ、冷却塔と圧力容器内とを結んで冷却水を循環させる代替冷却設備の設置工事が予定されている。
1号機では水素爆発を防ぐため格納容器内に窒素を注入する作業も行われているが、代替冷却設備は現在窒素注入作業に使用している給気配管を利用するため、窒素注入接続配管の変更工事も必要になる。
東京電力は、これら一連の工事を5月中に完了するという工程表を原子力安全・保安院に示している。