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2011/05/14

検察側は論告で、長女らを脱退させるためという西村被告の動機について「長女らは自分の価値判断で教団を選んでおり、元妻を殺害しても脱退するわけがない」と指摘、「短絡的で反省の弁もない」と主張した。

埼玉・八潮の元妻殺害:被告に懲役13年判決--さいたま地裁
 埼玉県八潮市で昨年11月、オウム真理教主流派アレフ信者の女性(当時63歳)を殺害したとして、殺人罪などに問われた元夫で元食品販売会社社長、西村三郎被告(71)の裁判員裁判で、さいたま地裁は13日、懲役13年(求刑・懲役15年)の判決を言い渡した。大熊一之裁判長は「子供たちとオウム真理教との関係を断絶させたいとの思いがあったと認められるが、重大かつ残忍な犯行に及んだことが正当化されるはずはない」と述べた。

 判決によると、西村被告は長女と次女を教団から脱退させるためには元妻を殺害するしかないと決意。昨年11月24日、八潮市内のショッピングセンター駐輪場で元妻の胸などを包丁で刺して殺害した。【田口雅士】

毎日新聞 2011年5月14日 東京朝刊


八潮の元妻殺害:子どもたびたび連れ戻す アレフ教団に被告出向き--初公判 /埼玉
 八潮市で昨年11月、オウム真理教主流派で構成する宗教団体「アレフ」信者の女性を殺害したとして元夫で住居不定、元食品販売会社社長、西村三郎被告(71)が殺人罪などに問われた裁判員裁判。さいたま地裁(大熊一之裁判長)で9日あった初公判で、さいたま地検は元妻とともに教団施設に入った子どもたちを西村被告がたびたび連れ戻してきた経緯を指摘した。

 検察側の冒頭陳述によると、殺害された元妻(当時63歳)は87~88年ごろオウム真理教に入信し、子ども5人と教団施設に入った。西村被告は教団に抗議して一度は5人を連れ帰ったが、うち2人は施設に戻った。

 西村被告は裁判所に人身保護請求をしたが敗訴。「法律ではなく実力行使で取り戻すしかない」と、91年には当時住んでいた福岡市から、札幌市の教団施設に出向いて子ども2人を連れ戻したという。

 検察側は包丁を事件の6日前から持ち歩いていた点や、抵抗する被害者を執拗(しつよう)に刺した点も指摘した。

 一方弁護側は、西村被告が70歳を前に大腸がんの手術をしたことを挙げ、「不安と焦りに追い詰められていた。教団から子どもを守ることが人生のすべてだった」と同被告の心情を強調した。「(長女らに)教団を抜けて普通の生活をしてほしいという親の愛情からの犯行だった」と主張した。【平川昌範】

毎日新聞 2011年5月10日 地方版





「アレフ」信者の元妻殺害 「宗教やめてくれれば…」  被告人質問
 オウム真理教主流派の団体「アレフ」の出家信者だった元妻(当時63歳)を殺害したとして、殺人罪と銃刀法違反に問われた住所不定、無職西村三郎被告(71)の裁判員裁判が10日、さいたま地裁(大熊一之裁判長)であり、証人尋問と被告人質問が行われた。

 検察側の証人として、入信する長女と次女が出廷。娘らのために元妻を殺害したと主張する西村被告について、長女は「信仰する前から母をたたいていた。入信してから暴力はひどくなった」と証言。次女は「子供の頃、教団から連れ戻される際、父に車内で鎖で監禁され、ショックだった」と話し、「母を殺して子供が傷つくとは思わなかったのか」と泣きながら訴えた。

 西村被告は被告人質問で、犯行動機について「自分が刑務所に入ってまで助けてくれたと思ってくれたら、2人の娘は脱会すると考えた」と述べた。元妻に対する思いを問われると、「宗教さえやめてくれれば、幸せな家庭を守れた」と話したが、事件を起こしたことは「やって良かったか悪かったか判断できない」と語った。

(2011年5月11日 読売新聞)






八潮の元妻殺害:懲役15年を求刑 弁護側は5年 /埼玉
 八潮市で昨年11月、オウム真理教主流派で構成する宗教団体「アレフ」信者の女性(当時63歳)を殺害したとして殺人罪などに問われた元夫で住所不定、元食品販売会社社長、西村三郎被告(71)の裁判員裁判が11日、さいたま地裁(大熊一之裁判長)であった。検察側は「家庭問題から元妻を憎んだ末の残虐な犯行」と懲役15年を求刑。弁護側は「元妻の宗教活動が背景」と懲役5年を求めた。判決は13日。

 検察側は論告で、長女らを脱退させるためという西村被告の動機について「長女らは自分の価値判断で教団を選んでおり、元妻を殺害しても脱退するわけがない」と指摘、「短絡的で反省の弁もない」と主張した。

 一方弁護側は「被告は事態を打開しようと裁判で争うなどしてきた。70歳を前にがんになり追い詰められた不幸な事件」と情状酌量を求めた。【平川昌範】

毎日新聞 2011年5月12日 地方版





アレフ信者刺殺、元夫に有罪=裁判員「宗教は影響せず」-さいたま地裁
 オウム真理教(現アレフ)の出家信者の女性=当時(63)=を刺殺したとして、殺人罪などに問われた元夫の無職西村三郎被告(71)の裁判員裁判で、さいたま地裁(大熊一之裁判長)は13日、懲役13年(求刑懲役15年)を言い渡した。

 判決は「長く鋭利な包丁で14カ所もの傷を負わせた凄惨(せいさん)な事件で、責任は重い」と指摘。「被害者への謝罪や真摯(しんし)な反省を伴っていない以上、長期の刑に服させ、自身の行為に正面から向き合わせる必要がある」とした。

 弁護側は「犯行には元妻の宗教活動が影響している」と刑の減軽を求めていたが、判決は同被告の娘2人も出家信者であることに触れ、「子どもとオウム真理教との関係を断絶させたいとの思いがあったとしても、残忍な犯行が正当化されるはずはない」と退けた。

 裁判員を務めた30代男性は、判決後の会見で「本件は直接的にはアレフと関係のない話だったので、アレフだからどうだということは影響していない」と話した。

 判決によると、西村被告は昨年11月24日午前、埼玉県八潮市のショッピングモール駐輪場で、元妻の胸などを柳刃包丁で刺して殺害した。(2011/05/13-18:30)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011051300883





オウム真理教の信者だった元妻殺害事件 71歳男に懲役13年の実刑判決 さいたま地裁
オウム真理教の信者だった元妻を殺害した事件で、さいたま地裁は、西村三郎被告(71)に懲役13年の実刑判決を言い渡した。

殺人などの罪で懲役13年の実刑判決が言い渡された瞬間、西村被告は左手を震わせながら裁判長を見つめていた。

この事件は2010年11月、埼玉・八潮市にあるショッピングセンターの駐輪場で、西村被告は元妻である美智子さん(当時63)の胸や腹などを、柳刃包丁で何回も刺した。
美智子さんは、目撃者と目が合うと、「助けて」と何回も叫んでいたという。
証言によると、目撃者が「やめろ!」と制止すると、西村被告は「この女はだめなんだ。10年も20年もだめなんだよ」と言ったという。
西村被告が手を放した瞬間、美智子さんは仰向けに倒れた。
ほぼ即死状態だったという。

今回の裁判で、西村被告は「8回以上、元妻を刺したのは知らなかった。オウム教を刺しているという気持ちで、本人を刺していたわけではない」と供述した。
西村被告は、犯行に及ぶ1カ月前、FNNに取材をしてほしいと連絡。
その際、「オウム真理教から名前を変えたアレフの施設にいる2人の娘を脱会させたい」と訴えていた。

2人は、1977年に結婚し、夫婦二人三脚で食品製造会社を立ち上げ、5人の子どもにも恵まれた。
しかし、会社の経営が悪化するにともない、美智子さんは、西村被告が知らぬ間にオウム真理教に入信していた。
そのころからけんかが絶えなくなり、美智子さんに対する暴力も止まらなかったという。

そして1989年、美智子さんは子ども5人を連れて家出し、オウムの施設へと入った。
西村被告は、子どもたちを取り戻そうと、拉致まがいの行為もしていたという。

長男と二男と三女は出たものの、美智子さんと長女と二女は教団の施設に残ったままだった。
今回の裁判で、長女と二女は、検察側の証人として出廷した。
ついたてが置かれた証言席で、長女は終始泣きながら、「中学生だったころ母に対する父の暴力が恐怖だった。もっと母に優しく接してくれれば、わたしたちが出て行くことはなかった」と訴えた。
また二女は、父への言葉として、「あんなひどい殺し方をして、子どもが傷つくと思わなかったのですか」と語った。

一方、長男は「父のやり方は正しくない」としつつ、ただ「自分がもし同じ立場だったらどうすればいいのだろうか」と複雑な思いを語り、「父の刑は軽くしてほしい」と訴えた。
また三女は、調書で「オウムから守ってくれたのは父。父がかわいそう。刑を軽くしてほしい」と訴えた。

公判中、西村被告は美智子さんの死を悲しむ様子や、反省の言葉はなかった。
西村被告は、「元妻に対して、今の気持ちは?」という弁護人の質問に対し、「宗教さえやめれば、孫たちにも囲まれて、幸せに暮らせたはずなのに。かわいそうな女だ」と語った。

また、検察側の「逮捕直後、後悔してないと言っていたが、今は?」という質問に、西村被告は、「いいこともあったし、悪いこともあった。よかったことは、三女、長男の家族、次男を守れたこと。悪かったことは、子どもにショックを与えたこと。人に迷惑をかけたこと。やってよかったか悪かったかは判断できません」と答えた。

そして13日、「(被害者への謝罪や)真摯(しんし)な反省をともなっていない」などの理由で、懲役13年の実刑判決が言い渡された。
それに対し、西村被告は「控訴します」とはっきり述べた。
(05/13 18:06)