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2011/03/30

燃料棒の損傷、格納容器の損傷、難航する汚染水除去

福島原発、専門家ら「3つの懸念」 燃料棒激しく損傷
2011/3/30 6:21







 東京電力が福島第1原子力発電所で1号機の炉心冷却を急ぐのは、燃料棒の損傷がもっとも激しいとみられるからだ。炉内の冷却水が減って燃料棒のかなりの部分が露出、一部溶けている可能性があるとの見方が多い。2号機も1号機に次いで不安定な状態が続く。水を入れると圧力容器内の圧力が上昇して危険なだけでなく汚染水が増える恐れもあり、注入量は慎重な調節が必要だ。


■1号機「空だきに近い状態」

 1号機は地震後、燃料棒の露出が最初に起こったとみられている。水の注入により水位はある程度回復したが、燃料棒の露出時間が長かったため損傷の割合が最も高いと考えられている。

 原子炉内の通常運転時の温度は約285度だが22日ごろから上昇し一時は400度に達した。水の注入増により200度まで下がったが29日午前2時には再び329度まで上昇した。東電は28日夜から注入量を2割前後増やし、29日午後には300度を下回った。

 東電のデータでは1号機の燃料棒は約4メートルの長さの約4割にあたる160~165センチ、水面から出ている。ただ精度には疑問も出ている。高橋実・東京工業大准教授は1号機の燃料棒は「大部分が露出して空だきに近い状態になっている可能性が高い」と指摘する。

 「炉内が4~5気圧の状態で水蒸気の温度がこれほど高くなることは普通はない」といい、燃料棒がほとんど冷えていないとみる。「津波で電源が喪失したとき、最初に動いた非常用システムでの冷却がうまくいかなかったのではないか」と原因を推測する。

 半面、1号機では圧力データなどから見て、圧力容器自体は比較的健全に保たれているとみられる。このため、放射性物質の外への漏れは今のところ少ないようだ。


■2号機、圧力容器もなお不安定

 1号機に次いで損傷の度合いが大きいとみられるのは2号機。二ノ方壽・東京工業大学原子炉工学研究所教授は「燃料棒は半分以上溶けている可能性も否定できない」と指摘。「溶けた燃料は水で冷やされて固化し、圧力容器の底にたまっている」と推測する。底の弱い部分、制御棒を出し入れするパイプなどから格納容器へと抜け周囲への高濃度の汚染につながっているもようだ。29日夕には圧力容器内の温度は約200度まで上がるなど不安定な状態が続く。

 1、2号機に比べて3号機の燃料の損傷度合いは低いとみられる。炉内の温度なども安定している。ただタービン建屋のたまり水表面の放射線量は毎時750ミリシーベルトと、2号機タービン建屋に次いで高い。容器の部分的な損傷なども想定される。


■3号機含め汚染水除去は難航

 東京電力は福島第1原子力発電所の原子炉を冷やすための注水と並行して、タービン建屋地下にたまった放射性物質を多量に含む水の除去を急いでいる。汚染水を抜かないとポンプや配線に作業員が近づけず本格的な冷却機能を回復できない。

 汚染水の排水は24日に1号機で着手した。汚染水をタービン建屋内にある、原子炉から送られてくる水蒸気を冷やして水にする復水器に移す作業をしている。3台のポンプを使うが、くみ上げられる水の量は毎時約20トンどまりだ。

 1号機の復水器の容量は1600トンで、まだ余裕がある。たまった汚染水が「減ったようだ」と指摘する作業員もいるというが、正確な量は把握できず、いつ作業が完了するかはっきりしない。

 2、3号機の復水器の容量は3000トンあるが、いずれも満杯。復水器に汚染水を入れるには、既に入っている水を別の場所に移さなければならない。こうした「玉突き作業」が3号機で28日に始まり、29日夕には2号機でも開始した。

 原子力安全委員会の代谷誠治委員は29日夜の記者会見で、「汚染水を人工池や使わなくなったタンカーで処理したり、米軍の力を借りたりすることもありうる」と述べた。貯蔵設備を作る際は汚染水が漏れないよう「しっかり対策すべきだ」とした。東電は「事業者としては現時点では(汚染水を)外に出すつもりはない」としている。

 経済産業省の原子力安全・保安院は29日、福島第1原発から16キロ南方の岩沢海岸で採取した海水中に含まれる放射性物質のヨウ素131の濃度を発表。28日午前8時45分に採取した水では国の基準値の58.8倍の濃度で、前日の7.3倍から上がっていた。

 27日には同原発の北側の海水からも高濃度のヨウ素131が検出されている。保安院は「沖合では北から南に海流が流れており拡散している」と分析している。