3月28日 21時30分
福島第一原子力発電所から5キロ余り離れた福島県大熊町で27日、警察が男性の遺体を発見しましたが、除染が必要な量の放射性物質が測定されたため、収容を断念していたことが分かりました。警察庁は、今後も同じようなケースが起きる可能性があることから、専門家の意見を聞いて対応を検討したいとしています。
警察庁によりますと、遺体が見つかったのは、福島第一原子力発電所から5キロ余り離れた大熊町の作業場の敷地で「男性の遺体がある」という通報を受けて、27日、福島県警察本部の機動隊員など15人が防護服で現場に入り、遺体を確認しました。
しかし、遺体からは除染が必要な量の放射性物質が測定されたため、機動隊員らの安全を考慮して、遺体を近くに安置したうえで収容を断念したということです。
福島第一原子力発電所から半径10キロ以内では、警察は原則として遺体の捜索などの活動は行っていませんが、警察庁は「今回のように具体的な情報がある場合は、安全を確保したうえで、10キロ圏内に入ることもある」としています。
警察庁は、原発の周辺では、今後も同じようなケースが起きる可能性があることから、安全性の確保などについて、放射線の専門家の意見を聞いて対応を検討したいとしています。
原発から5キロの作業写真公開 放射線量高い遺体を扱う警察官
2011.3.30 22:33
福島県警は、福島第1原発から約5キロの同県大熊町で27日に見つかった遺体を管理する模様を撮った写真を30日、報道陣に公開した。遺体の放射線量が高く、被曝(ひばく)する危険があったため、防護服に身を包んだ警察官が収容を断念、白い遺体袋に入れて付近に安置する瞬間をとらえている。
警察庁によると、遺体があるとの通報を受け、県警機動隊員や検視官、放射線計測班ら15人が駆けつけ遺体を発見。持参した測量計で遺体の表面を測定したところ、除染が必要な基準を上回ったとしている。
遺体は地震や津波発生直後から、原発事故による放射線を浴び続けていたとみられる。
遺体から高い放射線量、収容は難航
福島第一原発の退避圏内では、警察による行方不明者の懸命の捜索活動が続いています。周辺で行方不明の方はおよそ1500人に上りますが、高い放射線量を浴びている可能性のある遺体の収容に、警察は難しい対応を迫られています。
福島第一原発から20~30キロ圏内にあたる福島県南相馬市。白い防護服に身を包んだ警察官が津波で流されたがれきのわずかな隙間をのぞき込み、行方不明者の捜索を続けています。
捜索が難航する中、3月27日、5キロ圏内の大熊町で見つかった男性の遺体からは、計測器が振り切れるほどの高い放射線量が計測されました。男性の死因は病死で、死亡した後に被ばくしたとみられますが、安置所などで二次被ばくの可能性があるとして、警察は遺体の収容を断念しました。
被ばくした遺体の収容は容易ではない、と専門家は指摘します。
「表面の汚染したところだけ洋服を脱がせるだけでも除染できる。一番まずいのは汚染を広げること。作業する人の被ばくにつながるのがまずい」(国際医療福祉大学 久保敦司教授)
さらに、遺体を火葬することで、放射性物質が拡散するおそれもあるといいます。
「火葬したものから煙や灰に放射性物質が残る。そういう物が環境を汚染するおそれがある」(国際医療福祉大学 久保敦司教授)
退避圏内にあたる双葉町などでこれまでに収容された遺体は13人。福島第一原発から10キロ圏内では警察官の立ち入りも制限されていて、実態はわからないままですが、行方不明者の数から推測すると、数百から1000人にのぼる遺体が残されている可能性もあるといいます。残された遺体をどのように捜し、どのように収容するのか・・・。警察は難しい対応を迫られています。(31日16:52)