春日電機特別背任:研究費90万円のみ 5億5000万円の大半流用
経営破綻した元東証2部上場の産業用機械メーカー「春日電機」(旧本社・東京都三鷹市)を巡る特別背任事件で、同社の資金5億5000万円は「太陽電池の研究開発」を名目にマーケティング会社「アインテスラ」に貸し付けられたが、実際に研究開発に使われたのは90万円に過ぎないことが捜査関係者への取材で分かった。警視庁捜査2課は融資の大半は元春日電機社長、篠原猛容疑者(53)らが流用したとみている。
春日電機の発表資料によると、篠原容疑者が実質経営していたアインテスラは、新潟大学と共同で太陽電池を低コストで製造できる装置の研究開発を進めていた。篠原容疑者が春日電機を買収した08年6月には、同社も共同開発に加わることになったという。
捜査関係者によると、篠原容疑者は春日電機社内で「共同研究のために資金が必要」と説明。逮捕容疑となった5億5000万円の貸し付けを実行させた。このうち研究費に投じられたのは約90万円だった。貸付金の大半は株取引の損失の穴埋めや不動産の取得代金に流用されたとみられる。さらに一部は篠原容疑者ら役員の個人口座に振り込まれ、公共料金の支払いに充てられた形跡もあった。捜査2課は篠原容疑者が当初から春日電機の資金を狙って買収を仕掛けたとみている。【川崎桂吾、前谷宏】
毎日新聞 2011年1月15日 東京朝刊