2010年12月4日 琉球新報
基地外への演習が拡大 日米共同統合演習 パトリオット・ミサイル移動
3日から始まった日米共同統合演習で、米軍は2日深夜から3日未明にかけ、嘉手納基地に配備している地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)関連車両を普天間飛行場(宜野湾市)とキャンプ・コートニー(うるま市)に移動した。移動自体も「演習の一環」との見方もあり、基地外への演習拡大、ミサイル発射拠点が広がる懸念も強まっている。大型車両など約60台が深夜に国道58号などの公道を移動する光景には物々しさが漂った。嘉手納弾薬庫から国道を横切る程度の移動はあったが、今回のような「長距離移動」は初めてだ。
■経路示さず
米軍や自衛隊は当初から、演習内容の詳細は公表していなかったが、期日が近づき、米軍や沖縄防衛局などがうるま市や宜野湾市にPAC3部隊が普天間飛行場やキャンプ・コートニーに移動することを通知。しかし具体的な日時については明らかにせず、経路についても「軍事機密」を理由に明かさなかった。米軍は2日午後11時10分すぎ、北谷町の嘉手納基地第1ゲートから移動を開始、大型車両8台が列をつくって民間車両が多く通る国道58号を進んだ。別のゲートからの出発も含め同様の光景が計7陣続いた。
米軍を監視する市民団体リムピースの篠崎正人氏は「万が一の事故を考えたとき、一般人が自己防衛できる態勢を整えてあげることが必要。もっと周知を徹底すべきだ」と強調する。
■移動訓練も
自衛隊は、共同演習について3日から開始すると発表している。深夜・未明の軍車両の移動については、米軍の演習と位置付けられているかは不明だ。しかし、篠崎氏は「おそらく、陣地転換訓練の一環ではないか。キャンプ・コートニーが狙われているという想定で、パトリオットを移し、拠点防衛を想定しているのだろう」と指摘する。
同じリムピースの頼和太郎氏も「嘉手納弾薬庫に置いてあるPAC3を別の基地に移動させて攻撃の残存性を高める。そのための訓練であり、ミサイル発射基地が沖縄本島のあちこちに拡大することを意味する」と述べる。
キャンプ・コートニーでは3日午前、発射機用の車両2台が配置された。別の場所で米兵がアンテナを操作する様子が確認され、演習が始まっていることをうかがわせた。
統合幕僚監部によると、弾道ミサイル対処演習にパトリオット・ミサイル(PAC2)を運用する航空自衛隊の部隊も参加する。日米共同による沖縄での同演習実施は初めてだ。
南西諸島方面への自衛隊部隊の増員や、那覇基地への戦闘機増強が検討されていることが明らかになる中、中国漁船と巡視船の衝突事故で照らし出された尖閣諸島の領有権問題や、北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃を日米の同盟関係を強める好機として生かそうという思惑もうかがえる。
ホワイトビーチに3日、日米の20隻以上の艦船が集結した。演習を通し、沖縄の基地負担の上積みが浮かび上がっている。
米軍基地の運用に詳しい本間浩法政大名誉教授は「平時にもかかわらず、常に戦時体制に持ち込める仕組みがあるということに、大きな問題がある」と、日米地位協定の弊害を指摘する。
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