金沢市の主婦福田春奈さん(当時27歳)が昨年2月、殺害された事件で、強盗殺人と死体遺棄の罪に問われたNHK金沢放送局の元委託カメラマン若生康貴被告(36)の裁判員裁判の論告が23日、金沢地裁(神坂尚裁判長)であった。
検察側は「若生被告が福田さんを殺害した犯人であることは明らか」と述べ、無期懲役を求刑した。判決は3月2日。
起訴状によると、若生被告は昨年2月6日夜~7日未明、金沢市周辺に止めた乗用車内で、福田さんから預かった800万円の返済を免れようと、福田さんの左首を刺して殺害し、石川県内灘町の海岸砂浜に埋めたとされる。
(2012年2月23日14時11分 読売新聞)
金沢・主婦殺害:裁判員裁判 元妻、第三者を示唆 検察側は調書と食い違い指摘 /石川
金沢市の主婦、福田春奈さん(当時27歳)殺害事件で、強盗殺人罪などに問われた元NHK委託カメラマン、若生康貴被告(36)の裁判員裁判の第8回公判が21日、金沢地裁(神坂尚裁判長)であった。事件当時の若生被告の妻が証人尋問で「被告が逮捕前『誰かにはめられた』と話していた」と述べ、弁護側の主張する、事件への第三者関与に絡む証言をした。一方、検察側は捜査段階の聴取では元妻がそのような証言をしていなかったと指摘。信用性に疑問を投げかけた。
第三者の関与に絡む元妻の証言に対し、検察側は「昨年4月に被告の無罪につながる情報を教えてくれと聞いた際に『思い当たる事はない』と言ってませんか」と追及。元妻は無言で答えられなかった。また、検察官の調書で元妻は、若生被告から事件当夜の行動について「アリバイ工作」を依頼されたとされるが、14日の尋問で捜査官の脅しや誘導があったとして「アリバイ工作」説を否定していた。
一方、地裁はこの日、元妻の検察官調書の信用性を認めて証拠採用。裁判員らは、元妻の法廷での証言と、捜査段階に検察官が聴取した内容と、どちらが信用できるかを判断することになる。【宮本翔平】
毎日新聞 2012年2月22日 地方版
主婦強殺「すべて事実ではありません」 NHK元委託カメラマン、初公判で無罪主張
2012.2.10 08:03 [死体遺棄]
金沢市の主婦、福田春奈さん=当時(27)=が昨年2月に行方不明になり、石川県の海岸から遺体で見つかった事件で、強盗殺人と死体遺棄の罪に問われたNHK金沢放送局の元委託カメラマン、若生康貴被告(36)は9日、金沢地裁(神坂尚裁判長)の裁判員裁判初公判で「この事件はすべて事実ではありません。わたしは犯行を犯していません」と起訴内容を否認した。
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検察側は冒頭陳述で「被告は福田さんから投資名目で800万円を預かり、昨年2月までに約300万円を宝くじなどに使っていた」と指摘。若生被告の車内から福田さんの血痕や靴の跡が見つかったとし「金の返済を免れるために犯行に及んだ」と主張した。
弁護側は「2人は約4年前に知り合った。800万円は福田さんから受け取った金ではなく、300万円は自分のもので、残り500万円は福田さんから紹介された男から預かった。2月6日夜に福田さんとは会っておらず、その男らと会っていた。事件に巻き込まれただけで、被告は無罪だ」などと訴えた。
9日午後は、証人尋問などが行われ、検察側の証人として出廷した石川県警科学捜査研究所の職員は、「金沢放送局から押収したベストや、被告の車に付着した血痕が福田さんのDNA型と一致した」と証言した。
起訴状によると、若生被告は昨年2月6日夜~7日未明、福田さんから預かった金の返済を免れるため、乗用車内で刃物を福田さんの首に突き刺して殺害し、遺体を石川県内灘町の砂浜に埋めたとしている。
第三者「X」に脅されていた 金沢主婦殺害
知り合いの主婦を殺害したなどとして強盗殺人などの罪に問われている「NHK」金沢放送局の元委託カメラマン・若生康貴被告(36)の裁判員裁判で、金沢地裁で22日、被告人質問が行われた。若生被告は事件当日、第三者の「X」から脅されていたとして改めて関与を否定した。
起訴状によると、若生被告は去年2月、投資名目での預かり金の返済を免れるため、知り合いの主婦・福田春奈さん(当時27)を殺害し、遺体を捨てたとされている。しかし、弁護側は裁判になって、第三者の「X」が介在し、若生被告は事件に巻き込まれたとして無罪を主張している。
22日の被告人質問で、若生被告は「X」が福田さんの元交際相手と説明した上で、事件当日の夜は「X」らと会っていて、以前、預かっていた500万円を3倍にして返すよう脅されていたと述べた。また、捜査段階で話さなかったのは「揉め事が大きくなるのが怖く、弁護士からも黙秘するようアドバイスされた」などと説明した。しかし、「X」が実在するかどうかについては「証言できる人はいない」と話した。(02/22 18:05)
X、Y名前確認せず 金沢主婦殺害
2012年2月23日
「証人は思い違い」
被告、証言の矛盾弁明
X、Yはだれなのか。金沢市の主婦福田春奈さん=当時(27)=殺害事件の裁判員裁判で、弁護側が事件に関与していると主張する第三者の男たちについて、若生康貴被告(36)が二十二日、初めて自らの口で語った。検察側のストーリーとは全く異なる事件像を説いて無罪を訴える被告は、検察官らの質問に時に汗を額ににじませながら答えた。
第三者の存在
若生被告は弁護側質問に「福田さんの大阪の元カレ」と説明したXについて、「身長一七〇センチ台半ばのやせ形で三十歳すぎくらい」。内灘海岸で会ったYについて「一八〇センチ、四十歳くらい」と詳しく語った。しかし検察側の質問では曖昧な説明も目立った。
検察官 あなた以外にX、Yの存在を証言できる人は
被告 いません
裁判官 仕事を頼まれたというが、名前は確認しなかった
被告 名刺を次回くれると言っていたので
遺族代理人 初対面で五百万円くれるなんて怖くないですか
被告 僕に損はないと思った
検察側は、起訴前にX、Yの話をしなかった不自然さを追及した。
検察官 昨年四月に証拠開示し、Xの話が出たのが九月。こちらの手持ち証拠を見てストーリーを作ったと言われて、反論できる根拠はあるか
被告 ないです
なぜ早く話をしなかったか検察官が問うと「警察は信用できなかった」「話を大きくしたくなかった」と繰り返した。
事件の前後
事件当夜の昨年二月六日夜のことを、若生被告は「福田さんには会っておらず、ショッピングセンター駐車場にXに会うため行った」と説明した。「福田さんはすでにXに会った後かと思い、その場にいるという認識はなかった」とも補った。
検察官 車内の血を見て、春奈さんが死んでいるとは考えなかったのか
被告 考えなかった
翌日未明に自宅パソコンで「血の臭い 消す」「殺人 懲役」と検索した理由を、若生被告は「車の血がそのうち臭くなるだろうと思った。Xに『Yは殺人で懲役を食らっている』と説明された」などと語った。
検察官 「海岸 白骨」と検索したのは
被告 Xに「あんたが白骨で見つかったら家族が悲しむやろ」と言われた。(二月六日夜に)海に落とされると感じ、落ちたら白骨化するのかなと
検察官 恐喝事件に巻きこまれたと、あなたは言うが、「恐喝」とは一言も検索していない
被告 そうですね
食い違い
これまで出廷した証人の発言は、若生被告の語る内容と食い違う部分が多かった。
検察官や裁判官に何度もそこを指摘されると、若生被告は「(証人の)思い違いだ」「うそをついている」などと語った。
検察官 みんな思い違いだと
被告 まあそうだと思います
検察官 あなたを犯人にするためのでっち上げか
被告 そうは思いたくないです
昨年一月、被告の母親に新居の土地代九百万円の借金を断られた理由を、若生被告は「内灘の場所がダメだと言われた」と説明した。
裁判官が「(証人に立った母親は)大金で用意できなかったと証言した」と指摘すると、「母の思い違いと思う」と語った。
この借金の依頼について裁判員は「Xの要求は頭になかったのか」と質問し、被告は「Xの要求とは切り離して考えていた」と答えた。